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おふくろ
ふりがな文庫
“
阿母
(
おふくろ
)” の例文
まして現在の
阿母
(
おふくろ
)
様の身になったら、その不釣合も愈よ眼に立つことであろう。若いお内儀さんも可哀そうに思われることであろう。
黄八丈の小袖
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
私も、その頃
阿母
(
おふくろ
)
に別れました。今じゃ
父親
(
おやじ
)
も
居
(
お
)
らんのですが、しかしまあ、
墓所
(
はかしょ
)
を知っているだけでも、あなたより
増
(
まし
)
かも知れん。
縁結び
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「お前も亮三郎も、日本におらんけえ、送ってやることもできんかったのだ。こうして実は、
阿母
(
おふくろ
)
さまの形身分けも、取ってある……」
仁王門
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
阿母
(
おふくろ
)
なんかどうだつていいさ。おれにとつてはお前が
阿母
(
おふくろ
)
でもあれば、
親父
(
おやぢ
)
でもあり、この世の中にある限りの大事なものだもの。
ディカーニカ近郷夜話 後篇:02 降誕祭の前夜
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
そのぼんやりし過ぎた事を言つたのはタゴールの賢い
所以
(
ゆゑん
)
で、彼は日本の
阿父
(
おやぢ
)
や
阿母
(
おふくろ
)
が余り理想的で無い事をよく知つてゐるのだ。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
▼ もっと見る
「退院したらすぐ手紙
寄越
(
よこ
)
さうぞ、待つとるぞ、
阿母
(
おふくろ
)
にも上手に言うてな。忘れるな。」と注意を与へてから、残り惜しさうに
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
「家鴨馴知灘勢急、相喚相呼不離湾」
何処
(
どこ
)
ぞへ往ってしまいたいと
口癖
(
くちぐせ
)
の様に云う二番目息子の
稲公
(
いねこう
)
を、
阿母
(
おふくろ
)
が
懸念
(
けねん
)
するのも無理は無い。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
阿母
(
おふくろ
)
や女房に向つてはそんな口吻を洩してゐるさうですが、私に向つては、「
お父さん
(
ダツデヰー
)
」のやうになるよ——なんてからかふんですからな。
夏ちかきころ
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
そうした二つ目としての生活条件だけでもいい加減苦しいところへ、いまの圓朝は
阿母
(
おふくろ
)
一人かかえて食べさせていかなければならなかった。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
しかし、男にとって何が辛いと云って、
阿母
(
おふくろ
)
と細君とに
啀
(
いが
)
み合われるほど辛いことはないものだ。あれは鋸の歯の間で寝ているようなものだよ。
夜の靴:――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
「俺が酒に酔って帰って来ると、ツベコベいやがって
面倒
(
めんど
)
くさいから、蔵ン中へ
叩
(
たた
)
きこんで大戸を閉めちゃったら、
阿母
(
おふくろ
)
まで締めこんでしまって——」
旧聞日本橋:20 西川小りん
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
しかし、私と兵さんが
家
(
うち
)
へかえった時は、四郎次のおっ
母
(
かあ
)
が来ていた。そして背の低いけちんぼうの四郎次の
阿母
(
おふくろ
)
は、兵さんと私を見るとニヤリとした。
あまり者
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
親仁
(
おやじ
)
は郵便局の配達か何かで、大酒呑で、
阿母
(
おふくろ
)
はお
引摺
(
ひきずり
)
と来ているから、
常
(
いつ
)
も
鍵裂
(
かぎざき
)
だらけの着物を着て、
踵
(
かかと
)
の切れた
冷飯草履
(
ひやめしぞうり
)
を突掛け、片手に貧乏徳利を提げ
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
その
間
(
うち
)
に兵右衛門さまは御病死、後は金三郎様が矢張謡曲と手習の師匠、
阿母
(
おふくろ
)
様の鶴江様が琴曲の師匠。
備前天一坊
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
勿論僕は快く彼にそれを与えた上、さらに、恰度持ち合せていた
阿母
(
おふくろ
)
の片見の金側時計、古風な厚ぼったい唐草の浮彫のしてある両蓋の金側時計を副えて贈りました。
象牙の牌
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
今朝郷里の
阿母
(
おふくろ
)
から少年の処に『五円』小為替がついた。
阿母
(
おふくろ
)
が郷里の繩工場で手を冷めたくして稼いで送つてくれた金だ。それがいま懐中にない少年は走り出した。
小熊秀雄全集-15:小説
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
『だから、どうしたつて止す氣にやなれない。年によつては八百
法
(
フラン
)
取ることもあるし、千二百法取ることもあるが、漁から歸つて貰ふ金は、すつかり
阿母
(
おふくろ
)
に渡してしまふんです』
氷島の漁夫:01 氷島の漁夫
(旧字旧仮名)
/
ピエール・ロティ
(著)
これで行く度に
阿母
(
おふくろ
)
さんが出て来て、色々打ち
釈
(
と
)
けた話をしちゃ、御馳走をして帰す。
躯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
するとシュエスターが立って行って、頭をパタパタとたたいて向こうむきにすわらせる。そのうちに一人の子が、群集の中から
阿母
(
おふくろ
)
の顔を見つけて、急に恋しくなって泣き出した。
先生への通信
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
ま、
敗
(
はい
)
殘の人さな。俺の
阿母
(
おふくろ
)
も然うだツたが、
當
(
こ
)
家の
母娘
(
おやこ
)
だツて然うよ。昔は何うの此うのと蟲の好い熱を吹いてゐるうちに、文明の皮を被てゐる田舎者に
征服
(
せいふく
)
されて、體も心も腐らして了ふんだ。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
と私は聞きましたが、
阿母
(
おふくろ
)
は急には口もきけずに私の顔を上の空で眺めながら、何かまじまじと考え込んでいるのでございます。
蒲団
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
桑の実の
小母
(
おば
)
さん
許
(
とこ
)
へ、
※
(
ねえ
)
さんを連れて行ってお上げ、
坊
(
ぼう
)
やは知ってるね、と云って、
阿母
(
おふくろ
)
は横抱に、しっかり私を胸へ抱いて
縁結び
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
宵夜中
(
よいよなか
)
小使銭
(
こづかい
)
貸せの
破落戸漢
(
ならずもの
)
に踏み込まれたり、苦労に
齢
(
とし
)
よりも
老
(
ふ
)
けた岩公の
阿母
(
おふくろ
)
が、孫の赤坊を負って、草履をはいて小走りに送って来る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
と、いふのは、「
阿父
(
おやぢ
)
のやうにあれ」とか、「
阿母
(
おふくろ
)
のやうにあれ」とか、いふのとは違つて、少しぼんやりし過ぎてゐる。
独楽園
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
四つ少し前に林之助は帰ったが、
阿母
(
おふくろ
)
はそれまで帰って来なかった。今夜も林之助は幾らか包んで置いて帰った。
両国の秋
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
私は
怖
(
こわ
)
くて
家
(
うち
)
へ
這入
(
はい
)
れなかった。四郎次の
阿母
(
おふくろ
)
が帰って行くと同時に、私と兵さんとは、井戸端の柿の樹に、縛りつけられて、散々にひっぱたかれた。私はひいひい声を出して泣いた。
あまり者
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
親父と二人の
阿母
(
おふくろ
)
とに、地獄の呪いあれ!……私は堪え難い悲嘆にすっかりおしつぶされてしまって、あげくの果に、声をしのんで嗚咽するのであった、私は寧ろ死んでしまいたかった。
可哀相な姉
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
「それに私は、今夜は中野の
阿母
(
おふくろ
)
のところへ行つて泊りたいんですから……」
露路の友
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
萬朝はじめ弟子たちが湯へいってしまったあと、八つ下りの夕日の傾きそめたすみだ川の景色を父圓太郎の死後こっちへいっしょになっている
阿母
(
おふくろ
)
と二人、炬燵に入りながらのんきに眺めていた。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
旁々
(
かたがた
)
お邸を出るとなると、
力業
(
ちからわざ
)
は出来ず、そうかと云って、その時分はまだ達者だった、
阿母
(
おふくろ
)
を一人養わなければならないもんですから
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
せっかくのお望みでございますから、私の存じておりますことだけは申し上げましたが、どうぞ
阿母
(
おふくろ
)
のところはこの辺で御勘弁下さいまし。
蒲団
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
と言ふのは「
阿父
(
おやぢ
)
のやうにあれ」とか「
阿母
(
おふくろ
)
のやうにあれ」とか言ふのとは違つて、少しぼんやりし過ぎてゐる。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
その時までは
阿母
(
おふくろ
)
も別に変った様子もなかった。胸が少しせつないようだと言っていたが、やはりいつものように火鉢の前で
襤褸
(
ぼろ
)
とじくりなどをしていた。
両国の秋
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
下田の金さん
宅
(
とこ
)
では、去年は
兄貴
(
あにき
)
が抽籤で
免
(
のが
)
れたが、今年は稲公が
彼
(
あの
)
体格
(
たいかく
)
で、砲兵にとられることになった。当人は
勇
(
いさ
)
んで居るが、
阿母
(
おふくろ
)
が今から
萎
(
しお
)
れて居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
阿母
(
おふくろ
)
! といふと僕が何んにも云へなくなつてしまふというふことを、阿母自身が知つてゐるんだ。あの男は前には僕の親父に雇はれてゐたんだが、此頃は阿母を主人にしたものと見える。
村のストア派
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
母は
止
(
と
)
めていた。しかし父は
止
(
や
)
めなかった。私は泣きながら、これは四郎次の
阿母
(
おふくろ
)
が言い付けたから、家主の手前こんな
酷
(
ひど
)
いことを父がするのだと思った。私は心から四郎次と四郎次の母が憎かった。
あまり者
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
「
吝
(
けち
)
なことをお言いなさんな、お民さん、
阿母
(
おふくろ
)
は
行火
(
あんか
)
だというのに、押入には
葛籠
(
つづら
)
へ入って、まだ
蚊帳
(
かや
)
があるという騒ぎだ。」
女客
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
いつかのあの血だらけになった女の人の話を
阿母
(
おふくろ
)
にもう一度聞いてみようみようと思いながら、つい取り
紛
(
まぎ
)
れてそれなりだったのでございます。
蒲団
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
小児
(
こども
)
の時から人も通わぬ
此
(
こ
)
の窟を天地として、人間らしい(?)のは
阿母
(
おふくろ
)
一人で、昔物語に聞く
山姥
(
やまうば
)
と金太郎とを
其
(
そ
)
のままに、山𤢖や猿や鹿や
蝙蝠
(
かわほり
)
を友としつつ
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
何故といつて、彼にはイヴの
阿母
(
おふくろ
)
といふものが居て絶えず口うるさく世話を焼く心配が無かつたから。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「向方を見ろ!
阿母
(
おふくろ
)
と女房がやつて来る! 俺の様子を見に来るんだ!」
夏ちかきころ
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
先刻
(
さっき
)
もいう通り、私の死んでしまった方が
阿母
(
おふくろ
)
のために都合よく、人が世話をしようと思ったほどで、またそれに違いはなかったんですもの。
女客
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
、受け継ぐ時世でもなえし、
阿母
(
おふくろ
)
さまも、お亡なりなさったで……ちょうどお前は帰って来たし、ええ
機会
(
おり
)
じゃから、そういうたんだが。民法も、変っとるでなア
仁王門
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
おやじが死ぬと間もなく、
阿母
(
おふくろ
)
はどこへか行ってしまって、兄貴と自分とは
孤児
(
みなしご
)
同様に取り残されたのであると云った時には、いたずら小僧の声も少し沈んできこえた。
半七捕物帳:06 半鐘の怪
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「うむ……それは、ちつとも気がつかなかつたけれど、相変らず
阿母
(
おふくろ
)
との間が面白くなくつて——僕は、何時でも玄関には錠を降し放しにして置くんだよ。で、百合さんは、何時帰つて来たの?」
南風譜
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
阿母
(
おふくろ
)
が死んだあとで、段々馬場も寂れて、
一斉
(
いっとき
)
に二
頭
(
ひき
)
斃死
(
おち
)
た馬を売って、
自暴
(
やけ
)
酒を飲んだのが、もう飲仕舞で。米も買えなくなる、
粥
(
かゆ
)
も薄くなる。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
おみよは今年十八で、おちかという
阿母
(
おふくろ
)
と二人で、この裏長屋にしもたや暮しをしていた。
半七捕物帳:08 帯取りの池
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その方をどのくらい
阿母
(
おふくろ
)
さまも、お喜びなさるかわかんねえ。……そうせえ、そうせえ
仁王門
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「さうすると物干台見たいなところで親父が顔を剃つてゐるんだ。
阿母
(
おふくろ
)
は阿母で未だ机の前に坐つてゐるんだ、天井がない襖の蔭なんだね、どつちも斜めに見降せるんだ、恰度土佐絵のやうに。」
鶴がゐた家
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
その妹だね、可いかい、私の
阿母
(
おふくろ
)
が、振袖の年頃を、困る処へ附込んで、
小金
(
こがね
)
を溜めた按摩めが、ちとばかりの貸を
枷
(
かせ
)
に、妾にしよう、と追い廻わす。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“阿母”の意味
《名詞》
母親を敬い、親しみをこめていう語。
乳母。
(出典:Wiktionary)
阿
漢検準1級
部首:⾩
8画
母
常用漢字
小2
部首:⽏
5画
“阿母”で始まる語句
阿母様
阿母樣
阿母加奈志
阿母嘉那志