“おふくろ”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
母親46.6%
阿母33.8%
養母4.5%
3.0%
老母2.3%
母様2.3%
御袋1.5%
0.8%
母犬0.8%
祖母0.8%
継母0.8%
女親0.8%
慈母0.8%
未亡人0.8%
親母0.8%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
沈黙家むつつりやではあつたが、世間並に母親おふくろが一人あつた。この母親おふくろがある時芝居へくと、隣桟敷となりさじきかね知合しりあひなにがしといふ女が来合せてゐた。
私も、その頃阿母おふくろに別れました。今じゃ父親おやじらんのですが、しかしまあ、墓所はかしょを知っているだけでも、あなたよりましかも知れん。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし一方に養母おふくろが、芝居と、信心と、寝酒の道楽を初めて、死んだ金兵衛の伝でグングン臍繰へそくりをカスリ取る上に、良い縁談をみんな断ってしまうので
近眼芸妓と迷宮事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
紺飛白こんがすりで何処やらひんの好い昨年おふくろをなくした仁左衛門さんが相槌をうつ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「ふウム、一理あるナ、——所で近来素敵すてき別嬪べつぴんが居るぢやねエか、老母おふくろ付きか何かで」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
その悪戯にいた機嫌きげんそこねた形、あまり子供がはしゃぎ過ぎると、若い母様おふくろにはてある図じゃ。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今でも歴然と残っている。立派なうちだ。その番頭が甚兵衛と云ってね。いつでも御袋おふくろが三日前にくなりましたと云うような顔をして帳場の所へひかえている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
だつて、その時以来、おふくろはどうにもそれが気になつて気になつてなんねえでがしてな。それに日が暮れると死人が迷つて来るつてんでがすよ。
腹のいてゐたおふくろは心のなかで、⦅ほんとに、その団子が咽喉につまつて、おつ死んでしまへば好いのに!⦆と思つただね。するとどうでがせう。
俺の母犬おふくろは俺を生むと間もなく暗黒やみの晩に道路わうらいで寝惚けた巡行巡査に足を踏まれたので、喫驚びつくりしてワンと吠えたら狂犬だと云つて殺されて了つたさうだ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
乳も碌に飲まない中に母犬おふくろには別れ、宿なしの親なしで随分苦労もしたが、今の旦那には勿躰ないほどお世話になつて、とんと応挙の描いた狗児ちんころのやうだと仰しやつて大変可愛がられたもんだ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
どっちかになっておけばよかったのを、祖母おふくろが、商人あきんどがいいといって丁銀ちょうぎんという大問屋へ小僧にやられた。
「丁銀のおばあさんも八釜やかましやで、きゅうが大好きだから、祖母おふくろの気が合ってたんでやられたのだ。」
『なるべくはうちにいた方がよかろう、そうしないとなおの事継母おふくろとの間がむずかしくなるからッて、留めてやった、かあいそうに泣いていたよ。』
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
今度の継母おふくろに娘があってそれが海軍少将とかに奉公している、そいつを幸ちゃんの嫁にしたいと思っているらしい、幸ちゃんはそれがいやでたまらない、それを継母おふくろが感づいてつらく当たるらしい
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
まさ前刻さっきの仔に違いない。…様子が、土からわずか二尺ばかり。これより上へは立てないので、ここまで連れて来た女親おふくろが、わりのう預けて行ったものらしい……あえて預けて行ったと言いたい。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「がし叔母が慈母おふくろのようにおれの心を噛分かみわけてくれたら、若し叔母が心をやわらげて共に困厄こんやくに安んずる事が出来たら、おれほど世に幸福な者は有るまいに」ト思ッて文三屡々しばしば嘆息した。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
存生ぞんじょうのみぎり何かとたよりて来し大抵のやからはおのずから足を遠くし、その上親戚しんせきも少なく、知己とても多からず、未亡人おふくろは人好きのせぬ方なる上に
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)