づか)” の例文
純粋に精神的であるにせよ(そんな表面的な区別は私には本当は通用しないが、仮りにある人々の主張するような言葉づかいにならって)
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
夫人はようやく持前の言葉づかいと特色とを、発揮し出した。津田は挨拶あいさつに困った。黙って少し様子を見るよりほかに仕方がないと思った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「礼儀もわきまえぬ山家者の子といわれたが、どうして、おもとのことばづかいも、この若者のつらだましいも、世のつねの土民とは見うけられぬ」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
辛抱してむだづかいをつつしむというのは悪い事ですか? 田舎女は田舎女らしく、音楽会や映画にも行かずうちの中で黙って針仕事をしている事は
春の枯葉 (新字新仮名) / 太宰治(著)
銀子はちょっと逢ったところでは、ウェーブをかけた髪や顔の化粧が、芸者らしくなく、態度や言葉づかいもお上品らしく、いくらかねこかぶっていた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
とお島は客を款待顔もてなしがおに言った。この若い細君は森彦の周旋でかたづいて来た人で、言葉づかいは都会の女と変らなかった。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
つがず歩行續けし事なれば友次郎は夜前の始末しまつを話すべきひまなかりしが最早惡者の追ひ來るべき心づかひなしとてお花は友次郎に打向うちむかひ昨日大野とやら云建場たてば
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
友達としてはかたくるしい、ほんの少し身分のちがう男女間の言葉づかいに復一は不知不識しらずしらず自分を馴らしていた。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
とてかなわぬ禁酒の発心ほっしん、一箇月の大馬鹿をして酒と烟草タバコと両刀づかいに成り果て、六十余歳の今年に至るまで、酒は自然に禁じたれども烟草はみそうにもせず
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
また普通に甘党あまとうといえばいわゆる下戸げこを指し、酒を好まぬことを意味するのであるが、実際社会においては両刀づかいする人もあり、甘党であると同時にまた酒を呑む
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
こんな世界では恐ろしく丁寧なその言葉づかいもさしてわざとらしくは聞えず、自然であった。
(新字新仮名) / 島木健作(著)
永「何うだい、お前方は何うも山の中にいる人とは違い、また言葉づかいも分るから屹度きっと苦労人のはてじゃろう、万事に宜く届くと云うて噂をして居ることだが、生れは何処どこだね」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
行儀作法や言葉づかいという事に最も重きを置いて上品に優美に育て上げなければならん。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
衣服みなりの粗末なるにはやあなどかろしめた言葉づかい、十兵衛さらに気にもとめず、野生わたくしは大工の十兵衛と申すもの、上人様の御眼にかかりお願いをいたしたいことのあってまいりました
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一番末の子は母上を苦しめ過ぎるだろうという祖父母たちの心づかいから連れて来られなかった——母上を見送りに出て来ていた。
小さき者へ (新字新仮名) / 有島武郎(著)
しかし彼女の言葉づかいだけはそれほど変らなかった。怒りのうちに微笑さえ見せた彼女は、不意に兄を捨てて、輝やいた眼をお延の上に注いだ。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
万々、この方にはお心づかいなく、どうかこの大事の時をお乗りこえ遊ばしますように、それのみを、御老母さまも念じ上げていらっしゃいます。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同じ信州の中でも、ここは一寸上方かみがたへでも行ったような気が起る。言葉づかいからして高原の地方とは違う。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
言葉づかいもぞんざいで、それがまたお母さまのお気に召しているらしく、その日は御診察など、そっちのけで何かとお二人で打ち解けた世間話に興じていらっしゃった。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
この知人は耶蘇やそ教信者たることを思うて、僕は、この批評が一部あたれることを考えた。一部あたれるというは、この知人は言葉づかいと言い、行動と言い、まことに柔和なところがあるゆえである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
押鎭おししづめ誰かと思へば大家おほやさん大層たいそう御機嫌で御座りますねヘイヤ澤山たんともやらねど今其所そこ一寸ちよつと一杯やつたばかりさ夫はさうとお光さん今日新版しんぱんの本が出來できて未だ封切ふうきりもしないのが澤山あるが日がくれたらせめだけも見にお出そして今夜は母親おふくろは大師河原の親類へ泊りがけにと行て留守うちには吾儕わたし一人限ひとりぎりゆゑ必ずお出の色目づかひお光はうらみ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
けれども他人の前、ことにお秀の前では、そうした不自然な言葉づかいを、一種の意味から余儀なくされるようにも思った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
部将らしい者はそういったが、草心尼のことばづかいや、尼ながら品位のある容姿が、彼らの疑惑を深くしたらしかった。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
聖人や英雄の真似まねをするのは——も少し聞こえのいい言葉づかいをすれば——聖人や英雄の言行を学ぶのは、やがて聖人でもあり英雄でもある素地を造る第一歩をなすものだ。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
言葉づかいなぞも、妙に丁寧に成ったり、書生流儀に成ったりした。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それで芸術がどうだの、文芸がどうだのと、しきりに弁ずるけれども、あまり要領を得た事は云わなかった。言葉づかいさえ少しへべれけであった。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
貧乏平氏とあざけろうが、かれのみは、武家の家憲を守りとおし、主従の礼儀、ことばづかい、いやしくも、折り目切れ目を、くずしたことのない家人けにんだった。
自分にはわからないから、仕方なしにさういふ言葉づかひを遠慮した。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
彼の言葉づかいはこういう職人にしてはむしろ丁寧ていねいな方であった。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)