“迎(むかえ)” の例文
(我慢なさい。こんな事をしていちゃ、生命(いのち)にも障りましょう。血の池でも針の山でも構わず駈出(かけだ)して行って支度して迎(むかえ)に来ます。)
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして土曜日には母を連れて浦和へ帰り、日曜日に車で送り還(かえ)した。土曜日に自身で来られぬときは、迎(むかえ)の車をおこすのであった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
しかし今日は昨夕(ゆうべ)の事が何となく気にかかるので、御米の迎(むかえ)に来ないうち宗助は床を離れた。そうして直(すぐ)崖下の雨戸を繰った。
門 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
奉迎奉送の人達であると知りながら、又(また)昨日中房(なかぶさ)温泉から殿下のお迎(むかえ)に下って来た私等でありながら、忘れてはふと何事が起ったのかと怪しむのであった。
身体(からだ)は汚れて居るし、髪はクシャ/\になって居る、何は扨置(さてお)き一番先に月代(さかいき)をして夫(そ)れから風呂に這入ろうと思うて、小舟(こぶね)に乗(のっ)て陸(おか)に着くと、木村のお迎(むかえ)が数十日前から浦賀に詰掛(つめか)けて居て
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
是(これ)にて判事は猶(な)お警察長に向い先刻死骸検査の為(た)め迎(むかえ)に遣(や)りたる医官等も最早(もは)や来(きた)るに間も有るまじければ夫(それ)まで茲(こゝ)に留(とゞま)られよと頼み置き其身は書記及び報告に来し件(くだん)の巡査と共に此家より引上げたり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
丁寧にお迎(むかえ)申させようと、主人(あるじ)を尋ねに参って、9145
今こそ帝国意匠会社などいふ仰山(ぎょうさん)なものも出来たれ、凝つた好(このみ)といへばこの中屋に極はまれり、二番息子の清二郎へ朝倉より雨を衝(つ)いての迎(むかえ)に
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
あらかじめ通知をしてないので停車場(ステーション)には誰も迎(むかえ)に来ていなかったが、車を雇うとき某(なにがし)さんの別荘と注意したら、車夫はすぐ心得て引き出した。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
本来なら今朝の雪では、遊女(おんな)も化粧を朝直しと来て、青柳か湯豆府とあろう処を、大戸を潜(くぐ)って、迎(むかえ)も待たず、……それ、女中が来ると、祝儀が危い……。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
中村君と私の乗った上野駅発明石(あかし)行の列車は、七月二十七日の午前八時半に泊駅に着いた、長次郎と竹次郎が約の如く迎(むかえ)に来ていた。例年ならば此(この)頃は快晴な登山日和の続く季節である。
黒部川を遡る (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
お客を、義務として鄭重にお迎(むかえ)申すことが
あるいは石段を下(くだ)るや否(いな)や迎(むかえ)のものに擁(よう)せられて、あまりの不意撃(ふいうち)に挨拶さえも忘れて誰彼の容赦なく握手の礼を施こしている。出征中に満洲で覚えたのであろう。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
やがて父親(てておや)が迎(むかえ)にござった、因果(いんが)と断念(あきら)めて、別に不足はいわなんだが、何分小児(こども)が娘の手を放れようといわぬので、医者も幸(さいわい)、言訳(いいわけ)かたがた、親兄(おやあに)の心をなだめるため
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おおかたこの天気だから見合わしているのだろうと云うのが、みんなの意見なので、僕らがそろそろ歩いて行く間に、吾一が馳足(かけあし)で迎(むかえ)に行って連れて来る事にした。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
其処(そこ)で、御簾中(ごれんちゅう)が、奥へ御入(おんい)りある資治卿を迎(むかえ)のため、南御殿(みなみごてん)の入口までお立出(たちいで)に成る。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
帰りには元(もと)来た路を同じ舟で揚場まで漕ぎ戻す。無要心(ぶようじん)だからと云って、下男がまた提灯(ちょうちん)を点(つ)けて迎(むかえ)に行く。宅(うち)へ着くのは今の時計で十二時くらいにはなるのだろう。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
車外には御寮を迎(むかえ)の人数(にんず)が満ちて、汽車は高崎に留まろうとしたのであるから……
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
浩さんは塹壕(ざんごう)へ飛び込んだきり上(あが)って来ない。誰も浩さんを迎(むかえ)に出たものはない。天下に浩さんの事を思っているものはこの御母さんとこの御嬢さんばかりであろう。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
坐睡(いねむり)をひやかす時に(それ、ねむの浜からお迎(むかえ)が。)と言います。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その隣りの博奕打(ばくちうち)が、大勢同類を寄せて、互に血眼(ちまなこ)を擦(こす)り合っている最中に、ねんね子で赤ん坊を負(おぶ)ったかみさんが、勝負で夢中になっている亭主を迎(むかえ)に来る事がある。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「さぞまた蒼沼から、迎(むかえ)に来たと言うだろうなあ。」
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と怒鳴(どなり)つけるように呼んだが、まだ何とも返事がないので、三人ばかり窓を離れてとうとう迎(むかえ)に出掛けた。被(かぶ)ってる布団(ふとん)を手荒にめくると、細帯をした人間が見えた。同時に
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その日は東京から杉本さんが診察に来る手筈(てはず)になっていた。雪鳥君が大仁(おおひと)まで迎(むかえ)に出たのは何時頃か覚えていないが、山の中を照らす日がまだ山の下に隠れない午過(ひるすぎ)であったと思う。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いくら野広(のびろ)いところだって、橋本以外にも灯が見える事もあるだろうと尋ねても、やっぱりあれだと云う。はたしてそうであった。灯は夕方宿から迎(むかえ)に出した支那人の持って行った提灯(ちょうちん)である。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
新橋へは迎(むかえ)に来てくれた。車を傭(やと)って宿へ案内してくれた。のみならず、忙がしいうちを無理に算段して、蝸牛(かたつむり)親子して寝る庵(いおり)を借りてくれた。小野さんは昔の通り親切である。父も左様(さよう)に云う。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「小野は新橋まで迎(むかえ)にくるだろうね」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)