花嫁はなよめ)” の例文
もう真夜中をすぎていました。母親たちは花婿はなむこ花嫁はなよめにキスをしました。わたしは、花婿花嫁がふたりだけになったのを見ました。
たいへんこわい顔になって、「坂本さんのお宅は、お行儀がうるさいから、ちゃんとしたなりで、お前が行かないと、花嫁はなよめさんにはなれないよ」
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
幾月いくつきたないで、正月をその場末のカフェーでむかえると、また、私は三度目の花嫁はなよめとなっていまの与一と連れ添い
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
このことは自動車じどうしゃうえっている花嫁はなよめらなければ、ただかみさまよりほかにはだれもらなかったことです。
おけらになった話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それをおくるこゝろはと父親も主もばあやも顏見合すればかねは堪かねて涙はら/\こぼしつゝ外にも一品花嫁はなよめには幸に見られねど盃受く靜夫はわな/\と、打ふるひぬ
うづみ火 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
けれども、このおいわいのしきには、白雪姫のまま母である女王さまもまねかれることになりました。女王さまは、わかい花嫁はなよめが白雪姫だとは知りませんでした。
それなればこそ子供を三人も生んだのであろう。そして初々ういういしい少女の花嫁はなよめは、夫の家に引き取られて旧家の主婦たるにふさわしいさまざまなしつけを受けたであろう。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そんな風評うわさみみにするわたくしとしては、これまでの修行場しゅぎょうば引越ひっこしとはちがって、なんとなくがかり……幾分いくぶん輿入こしいまえ花嫁はなよめさんの気持きもち、とったようなところがあるのでした。
江戸というような大きな都会では、連尺ではこばせるような大せつな荷物がいろいろあったが、そういう中でも最もめずらしいのは、花嫁はなよめさんをこれで運んでいたことである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
角隠つのかくしをつけた花嫁はなよめが一人、何人かの人々と一しょに格子戸を出、静かに前の人力車に乗る。人力車は三台とも人を乗せると、花嫁を先に走って行く。そのあとから少年の後ろ姿。
浅草公園:或シナリオ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
なしつて、なか/\べてもいゝとはひませんでした。そして、そのなしおほきくなつて、いろのつく時分じぶんには、丁度ちやうど御祝言ごしふげんばん花嫁はなよめさんのやうに、しろ紙袋かみぶくろをかぶつてしまひました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
康頼 わしはまだ童子であったとき、兄の花嫁はなよめ輿こしを迎えに行ったことがあった。国境くにざかいでわしたちは長く待った。輿は数百の燈火ともしびに守られて列をつくってやって来た。あれでもない、これでもない。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
あの組の七人の女の子の中で、ミサ子ひとりは苦労をしていなかった。ミドリ学園から東京の花嫁はなよめ学校にはいり、在学中に養子をむかえてすぐ子どもをうんだ。苦労の多い時代に、これは別格である。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
左側にはハツカネズミの紳士しんしたちが立ちならんでいて、前足でひげをなでていました。部屋のまんなかに、花嫁はなよめ花婿はなむこの姿が見えました。
ちょうど、このとき、うつくしい花嫁はなよめせた自動車じどうしゃとおりました。花嫁はなよめは、金銀きんぎん宝石ほうせきで、あたまや、むねかざっていました。そして、はなやかな空想くうそうにふけっていました。
おけらになった話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのときわたくし良人おっともおにかかりましたが、あとで、『あんな美人びじんつま男子だんしはどんなに仕合しあわせなことであろう……。』などともうしたくらいに、それはそれはうつくしい花嫁はなよめ姿すがたでございました。
舞踏会ぶとうかい衣裳いしょうをつけた若いむすめや、宴会服えんかいふくを着て楽しそうにしている公爵こうしゃくの若い花嫁はなよめを見たこともあります。
かれは、毎日まいにち毎日まいにち晩方ばんがたになると、徳利とくりをさげて、さけいにゆきました。しかし、三ごく一の花嫁はなよめは、いえ奥深おくふかくはいっているとみえて、一も、そのかおることができなかった。
赤いガラスの宮殿 (新字新仮名) / 小川未明(著)
この男は美しい若い妻のことでも考えていたのでしょうか? 毛皮と高価な肩掛かたかけでかざられたラクダが、この男の妻を、美しい花嫁はなよめを乗せて、町の城壁じょうへきのまわりを歩いたのは