いたっ)” の例文
其不在中は全く独立自営を主とし、官馬を返納して一家計を細く立て、其及ぶ限を取らんと决したるも、ココにいたっては官馬は斃るるも
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
第七 茶粥ちゃかゆ と申すのはいたって淡泊なもので、これは最初によくほうじた番茶を袋に入れて水と一緒いっしょによく煎出にだして一旦いったんその袋をげます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
二十間ばかり東に離れて山腹を切り取った一坪位の平にならされた所に、栂の枝で造ったいたって無造作な猟師の鳥屋とやのようなものが立っていた。
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
先生の親友しんゆう高橋順益たかはしじゅんえきという医師いしあり。いたっ莫逆ばくげきにして管鮑かんぽうただならず。いつも二人あいともないて予が家に来り、たがいあい調謔ちょうぎゃくして旁人ぼうじんを笑わしめたり。
喜憂栄辱は常に心事にしたがって変化するものにして、そのおおいに変ずるにいたっては、昨日のえいとして喜びしものも、今日はじょくとしてこれをうれうることあり。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
自分なぞはいわゆる茶の湯者流の儀礼などはちりばかりも知らぬ者であるけれども、利休がわがくにの趣味の世界に与えた恩沢は今にいたってなお存して
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかしながら神の心にいたっては、天然も歴史も我らに教うる所がない。神の心に関する知識に至ては、我らは全然神の啓示に待たなければならない。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
われに計略はかりごとあり、及ばぬまでも試み給はずや、およきつねたぬきたぐいは、その性質さがいたっ狡猾わるがしこく、猜疑うたがい深き獣なれば、なまじいにたくみたりとも、容易たやすく捕へ得つべうもあらねど。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
元禄時代に雅語、俗語相半せし俳句も、享保きょうほ以後無学無識の徒に翫弄がんろうせらるるにいたって雅語漸く消滅し俗語ますます用ゐられ、意匠の野卑と相待て純然たる俗俳句となりをはれり。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
冬の事で、四隣あたりいたって静かなのに、かねが淋しくきこえる、私は平時いつも、店で書籍が積んであるかたわらに、寝るのが例なので、その晩も、用をしまって、最早もう遅いから、例の如く一人でとこに入った。
子供の霊 (新字新仮名) / 岡崎雪声(著)
甲州路はいたって平板単調であるが、秩父道は新旧両道ともそれぞれ別様の趣があって面白い。然し頂上附近では、秩父側は少しも眺望がきかぬ。
秩父の奥山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
依て六七貫目以上の重量にいたっては、強て耐忍する時は両肩は其重さによりされて、其いたみにたゆる事能わざるを以て、其重さに困る事を知るも
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
一体塾生の乱暴と云うものはれまで申した通りであるが、その塾生同士相互あいたがい間柄あいだがらと云うものはいたって仲のいもので、決してあらそいなどをしたことはない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
飾って実用の装飾というからは天下何者か実用ならざらん。君はここにいたって我党の主義に降参したかね
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
ヨブの苦闘が進んでパウロの救主発見にいたって、苦痛は苦痛でなくなるのである。キリストが心に宿るに至って、人の慰藉を待たずして苦痛に堪え得るに至るのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
夫人わるるよう、この頃用便ようべんいたって近くなりまして、いつもあの通りでこまりますと。
そのヤマトフにあって見たいと思うけれどもなか/\われない。到頭とうとう逗留中出てない。出て来ないがその接待中の模様にいたってはややもすると日本風の事がある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そして十九章にいたっては遂に贖い主の実在を確信するに至り、それが神にして他日地の上に立つことを予知するに至る。「われ知る」といいてその確信の言たるを言い表わしたのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
この日、先生すこぶこころげに喜色きしょく眉宇びうあふれ、言語もいたっ明晰めいせきにして爽快そうかいなりき。
紳士の床の間は尽くこれ偽物の展覧会さ。心ある者に見せたらばかえってその主人の粗忽そこつにして不風流なるを笑われる位だ。西洋の油画にはマサカこんな事はない。その代り名画はいたって少い。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
尾根は白檜の森林が時折東からも西からも延び上って、中央の部分で結び付いていることもあれど、概して東側に草地が続いて、尾根上の平な所には多くは小池が存在する。歩行もいたって楽である。
利根川水源地の山々 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
是等の事実を見ても、井伊大老は真実間違いもない徳川家の譜代、豪勇無二の忠臣ではあるが、開鎖の議論にいたっては、真闇まっくらな攘実家とうよりほかに評論はない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ここにいたって客の小山笑い出し「アハハ君の攻撃も随分皮肉だね。それでは家庭教育論が文学論になってしまう」中川「イヤさ、これが家庭教育に大関係あり。文明の進歩した清潔なる家庭に果して猥褻わいせつなる小説や淫靡いんびなる文学を ...
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
特にその勉強するところのものは算筆にありて、この技芸にいたっては上等のくわだて及ぶところに非ず。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)