トップ
>
老耄
>
おいぼれ
ふりがな文庫
“
老耄
(
おいぼれ
)” の例文
病みあがりの
蟷螂
(
かまきり
)
のやうなあの痩せこけた
老耄
(
おいぼれ
)
親父にうまうま
騙
(
かた
)
られてしまつたぞと、親友を侮辱したのも偽りのない事実であつた。
吹雪物語:――夢と知性――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
黙れ黙れえい
老耄
(
おいぼれ
)
! 場所もあろうに
他人
(
ひと
)
の前、吾を大盗と
吐
(
ぬ
)
かしたな! 虎狼の心を抱いた姿と吾に
雑言
(
ぞうごん
)
したからには虎狼の姿を
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ひょっと筋の違った意趣ででもしたわけなら、相手の十兵衛様にまずこの婆が一生懸命で謝罪り、婆はたといどうされても惜しくない
老耄
(
おいぼれ
)
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
……はたで見ます唯今の、美女でもって
夜叉
(
やしゃ
)
羅刹
(
らせつ
)
のような奥方様のお姿は、
老耄
(
おいぼれ
)
の目には天人、女神をそのままに、尊く美しく拝まれました。
山吹
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
控え室においても、接待員はみな
老耄
(
おいぼれ
)
だった。まったく過去のものとなっているそれらの人物には、やはり同じ種類の召し使いが仕えていた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
▼ もっと見る
ある種の逸話になると眼に涙まで浮かべた。その気弱さに気づくときには、ばかな
老耄
(
おいぼれ
)
だとみずから叫んで笑いこけた。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
われわれの年寄るというは精力の枯れるの
謂
(
いい
)
である。よし身体が弱り果てるも、心ばかりは
老耄
(
おいぼれ
)
たくない。よし
老耄
(
おいぼれ
)
ても、
愚痴
(
ぐち
)
だけはいいたくない。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
酷
(
ひど
)
く痩せていて、尻がべっこりと凹んでいるよぼよぼの、廃馬も同様の
老耄
(
おいぼれ
)
馬であった。それでもしかし、父親や母親を驚かすのには、それで十分だった。
馬
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
『黙れ、
老耄
(
おいぼれ
)
、拾った
奴
(
やつ
)
が一人いて、
返
(
もど
)
した奴が別に一人いたのよ。それで世間の者はみんなばかなのさ。』
糸くず
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
老耄
(
おいぼれ
)
た無能な醜い悪魔を見るような心地がして、私はいつもそれが通りすぎた線路の上にかっと
唾
(
つばき
)
をした。
微笑
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
この
老耄
(
おいぼれ
)
が一人でお引き受けいたしていたのでございますが、六時頃に夕飯をおすましになりますと、旦那様は、御書斎から何か書類の束をお持ち出しになって
幽霊妻
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
ははあ、よそのものはみても、
私
(
わたし
)
をばみられないとおっしゃるのだな。どうせ、この
老耄
(
おいぼれ
)
はくたばるのだからいいけれど、そうした
道理
(
どうり
)
というものはないはずじゃ。
三月の空の下
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
老耄
(
おいぼれ
)
の冬でも、毎日のように吹く風でも来い、へこたれはしないぞというくらいな元気は出るものだ。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
私見たいに
老耄
(
おいぼれ
)
ちゃもうお仕舞いですよ、ほんとうに、皺苦茶苦茶で人間だか猿だか分りゃあしない。と云い云い二人の娘を見た眼には明かに憤怒の色が漂って居た。
お久美さんと其の周囲
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
ナニ其髪の毛なら手前より
己様
(
おれさま
)
の方が先に見附たのだ実は四本握って居たのをソッと三本だけ取て置た、夫を知らずに残りの一本を取て好い気に成て居やがる
老耄
(
おいぼれ
)
め
無惨
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
あの図太い
老耄
(
おいぼれ
)
奴
(
め
)
、鼠の輸入なんてどうも可笑しいと思っていたがなんのこと真珠の密輸をカムフラージュするためだったのか、よし今日こそ、のっぴきならぬ証拠を抑えて
軍用鼠
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「おお、大儀。大儀。それで予の腹も
一先
(
ひとまず
)
癒えたと申すものじゃ。が、とてもの事に、その方どもは、予が車を警護
旁
(
かたがた
)
、そこな
老耄
(
おいぼれ
)
を引き立て、堀川の
屋形
(
やかた
)
まで参ってくれい。」
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ふりかぶった強刀を
老耄
(
おいぼれ
)
微塵になれッとばかり斬り下げて来た——その疾風迅雷の早技に間髪を入れる隙もなかったので、あわや作左衛門も血煙りの下になったかと見えた一刹那
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
さて「俺はな、お前に養って呉れとは云わない。ただ、この
老耄
(
おいぼれ
)
の
脛噛
(
すねかじ
)
りをして、ゴロゴロしていることだけは、頼むから
止
(
や
)
めてくれ、どうだ分ったか。分ったのか分らないのか」
夢遊病者の死
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
……それだのに、こんなにまで信頼を受けてはトテモ僕はたまらないのです……こんな、
老耄
(
おいぼれ
)
のヘボ探偵を、どうして君がそんなにまで信頼してくれるのか、僕は殆んど了解に……
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そして、自分を
老耄
(
おいぼれ
)
のように思っている署長や司法主任の鼻を明かしてやろう。
五階の窓:03 合作の三
(新字新仮名)
/
森下雨村
(著)
「律義にも程があるぞ。だってあんな
老耄
(
おいぼれ
)
の警官に、何がわかるもんか!」
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
伊留満喜三郎 何と、
老耄
(
おいぼれ
)
、正気に帰つたか。
南蛮寺門前
(新字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
「この
老耄
(
おいぼれ
)
め」
薬
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
老耄
(
おいぼれ
)
た頑固者が
飢えたる百姓達
(新字新仮名)
/
今野大力
(著)
莫迦莫迦莫迦! 婆あなんぞが知るものか! 死に損ひの
老耄
(
おいぼれ
)
めえ! 口惜しい口惜しい口惜しいッ! うえんうえんうえんうえん……
竹藪の家
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
今ばかな様子をしていますが、それは
老耄
(
おいぼれ
)
たからでしょう。徒刑場では
狡猾
(
こうかつ
)
な奴でした。私は確かにこの男を覚えています。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
ああ、しばらく、一旦の御見、
路傍
(
みちばた
)
の
老耄
(
おいぼれ
)
です。
令嬢
(
おあねえさま
)
、お見忘れは
道理
(
もっとも
)
じゃ。もし、これ、この夏、八月の下旬、彼これ八ツ下り四時頃と覚えます。
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「大音を上げろ! 人を呼べ! 汝が呼ばねば俺が呼ぶ! 汝のような
老耄
(
おいぼれ
)
の声より、俺の声が大きいぞ!」
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
若
(
も
)
しこの婆さんの笑いが毒々しい笑いで、
面付
(
つらつき
)
が
獰悪
(
どうあく
)
であったら私はこの時、
憤怒
(
ふんど
)
して
擲
(
なぐ
)
り
飛
(
とば
)
したかも知れない。いくら怖しいといったって、たかが
老耄
(
おいぼれ
)
た
婆
(
ばばあ
)
でないか。
老婆
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
伝平は、
老耄
(
おいぼれ
)
の
痩馬
(
やせうま
)
を、前の柿の木に
繋
(
つな
)
いで置いて、すぐ馬小屋をつくりにかかった。
馬
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「えいッ、
老耄
(
おいぼれ
)
め。汝の子の罪悪を、口賢くも、この羅門に塗りつけようとするか」
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
よくできたお方でした……こう申しては、なんですが、二年前にこの
老耄
(
おいぼれ
)
が、学校の方の小使を
馘
(
くび
)
になりました時に、お邸の方の下男にお引き立てくださったのも、後で女中から聞いたことですが
幽霊妻
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
エヽ
喧擾
(
やかま
)
しいわ、
老耄
(
おいぼれ
)
、何にして食おうがおれの勝手、殊更内金二十両まで取って使って
仕舞
(
しま
)
った、
変改
(
へんがい
)
はとても出来ぬ大きに御世話、御茶でもあがれとあくまで
罵
(
ののし
)
り
小兎
(
こうさぎ
)
攫
(
つか
)
む
鷲
(
わし
)
の
眼
(
まな
)
ざし恐ろしく
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
探偵が道楽で退校された己様だ無学の
老耄
(
おいぼれ
)
に負て堪る者か
無惨
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
彼は運命にひどく苦しめられ弱らされており、すり切れたあわれな
老耄
(
おいぼれ
)
の魂とはなっていたけれども、まだやはりきびきびした自発的な人間であった。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
人界に
堕
(
おと
)
されし
血吸
(
けっきゅう
)
童子! わが法術を破らんものはこの人界にはよもあるまじ! 笑止笑止、
老耄
(
おいぼれ
)
めが
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
……よくよくの名僧智識か、豪傑な
御仁
(
ごじん
)
でないと、聞いてさえ下さりませぬ。——この
老耄
(
おいぼれ
)
が生れまして、六十九年、この
願望
(
がんもう
)
を起しましてから、四十一年目の今月今日。
山吹
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「気をつけやがれ!
老耄
(
おいぼれ
)
め! なんて真似をして歩きやがるんだ?」
黒い地帯
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
大丈夫曲つた事はよもやいたすまいと思ふて居りまするが若い者の事、ひよつと筋の違つた意趣でゞも為た訳なら、相手の十兵衞様に先此婆が一生懸命で謝罪り、婆は仮令如何されても惜くない
老耄
(
おいぼれ
)
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
なんて物好きな、わけの分らない
老耄
(
おいぼれ
)
なんだ、あいつは!
麓
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
「この
老耄
(
おいぼれ
)
めがッ——」
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
母親はその子供を再び見ることもなく、子供は自分の母親をほとんど知りもしないで終わる。そしてそれもみな、
林檎
(
りんご
)
を盗んだあの
老耄
(
おいぼれ
)
のためというのか。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
……早い処が、はい、この八ツ目
鰻
(
うなぎ
)
の
生干
(
なまぼし
)
を見たような、ぬらりと黒い、
乾
(
ひ
)
からびた
老耄
(
おいぼれ
)
も、若い時が一度ござりまして、その頃に、はい、
大
(
えか
)
い罪障を造ったでござります。
山吹
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
渡せ! さあさあ、二品を渡せ! いやか、
老耄
(
おいぼれ
)
、いやというなら斬るぞ! ……これ、俺様はな、強い男だ! その上途方もなく
敏捷
(
すばし
)
っこい男だ! 皆さまも大変怖がってくださる。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
夜なども、馬のことが気になってろくろく眠れないというような具合で、伝平は、母親がその病児を養うようにして馬の
面倒
(
めんどう
)
を見ているのだった。そして、
老耄
(
おいぼれ
)
の痩馬は、次第に肥り出して来た。
馬
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「おのれッ、
老耄
(
おいぼれ
)
」
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
暗夜のうちから一条の光で切り取られた「
老耄
(
おいぼれ
)
」そのものの面かと思われた。少年はそれをじろじろながめた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
分別の尽き、工夫に
詰
(
つま
)
って、
情
(
なさけ
)
なくも
教
(
おしえ
)
を頂く師には先立たれましたる
老耄
(
おいぼれ
)
。
他
(
ほか
)
に
縋
(
すが
)
ろうようがない。ただ、
偏
(
ひとえ
)
に、
令嬢様
(
おあねえさま
)
と
思詰
(
おもいつ
)
めて、とぼとぼと夢見たように参りました。
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「あの
老耄
(
おいぼれ
)
、フ、フ、何を……が、澄江には恩をかけた。……この手で……」
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
“老耄”の意味
《名詞》
老耄(ろうもう)
老いぼれること。また、そのような人。
(出典:Wiktionary)
老
常用漢字
小4
部首:⽼
6画
耄
漢検1級
部首:⽼
10画
“老耄”で始まる語句
老耄奴
老耄婆