箆棒べらぼう)” の例文
先日こなひだも前大統領タフト氏が田舎に旅行して、途中で道連れになつた農夫ひやくしやうを相手に、近頃農産物の値段が箆棒べらぼうに高くなつた事を話して
箆棒べらぼう、そんなことされつかえ、をどりなんざああと幾日いくかだつてあらあ、今夜こんやらつからかねえつたつてえゝから、他人ひとはれつとはあ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
丹三ががらりと態度を変えた、「おめえさんは臆病風にとっかれているんだ、男の性根を無くしているんだ、なんだ箆棒べらぼうめ」
無頼は討たず (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
仕方がないから、まあ西洋料理ぐらいでごまかしておこうと思って、とうとう宝亭へ連れ込んだんです。——実に田口という男は箆棒べらぼうだね。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ウアッ! 畜生! なんて又俺はだらしがなさすぎたんだ! 箆棒べらぼうめ! いくら取りみだしたとはいつたところで、こんな大事な友達のことを
これは六一爺さんがわたしの母とわたしに食べさせるために贈ってくれたもので、彼は母親に向って、わたしのことを箆棒べらぼうにほめていたそうだ。
村芝居 (新字新仮名) / 魯迅(著)
見物「なん箆棒べらぼうめ、糞の掛けられ損か、それ打込むぞ、やア御新造あぶねえ/\、此方こっちへお出でなせえ、やアれ危えッてば」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
した事は生れて初めてだ。荷物の重いばかりでなく、箆棒べらぼう前途さきばかり急いで、途中ろくろく休む事も出来ねえ。どこまでも付従くっついて行ったら生命いのち
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
「寒いッたッて、箆棒べらぼうに寒い晩だ。酒はめてしまッたし、これじゃアしようがない。もうなかッたかしら」と、徳利を振ッて見て、「だめだ、だめだ」と
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
夫れァ貴官あなた無理ですぜ、火事を見付けて、時計を見てから怒鳴るなんて、其様箆棒べらぼうな話ァありゃしません。働いてから、紙屋さんの時計を見たら九時過でしたヨ。
越後獅子 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
箆棒べらぼうに速い航空機に、テレヴィジョン送影装置そうえいそうちを積んで月の周囲を盛んに飛行させ、月の表面の様子を地球の上のテレヴィジョン受影機にうつして、地理を研究する。
遊星植民説 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「うむ、ひょっとするとこれやア姉妹きょうだいかも知れねえ。——だが、あいつの肌に、まともにさわもねえうちに、箆棒べらぼうな、あんな野郎が、あすこへ現れるなんて。——」
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
有難がる奴の方が餘つ程の箆棒べらぼうで、あつしには賽錢さいせん泥棒くらゐに踏んで相手にもしませんでしたよ
ぶるぶる胴振いが止まない、室に帰ると、やま達がしゃべってるしゃべってる、何しろ箆棒べらぼうな胴間声で、初めのうちはユンクフラウと喧嘩でもしているのかと思った、が
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
あまりおかしいので憎っ気もなくなり、箆棒べらぼうめと云い捨てに別れましたが。
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「とても箆棒べらぼうな俗説ですな。一体富士から此処までは何里ありますか?」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
願掛がんかけがあって、大山の石尊様せきそんさまへお詣りに行ってきたんですからね、冗談じゃありませんや、神詣りに行った留守にまる焼けになっちまうなんて、そんな箆棒べらぼうなチョボイチがあるもんじゃねえ。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
箆棒べらぼうな爺だ、何を云やあがる、村方の厄介になりながら、詰まらねえ事ばかり云やあがる。不吉も糸瓜へちまもあるものか、こんな結構な事はねえ。第一人出入りが多くなり、村へ沢山金が落ちらあ」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「なんでまたそんな箆棒べらぼうな金を金蔵へなんぞ入れておいたんだ」
箆棒べらぼう家賃やちんでもとゞこほつたにや、辨償まよはなくつちやりやすめえし、それこさあらが身上しんしやうなんざつぶれてもにやえやしねえ、だにもなんにも
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かるい空を見て、しょぼしょぼした眼を、二三度ぱちつかせたが、箆棒べらぼうめ、こうえたって人間でえと云った。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この大いなる矛盾のおかげで、この箆棒べらぼうな儚なさのおかげで、兎も角も豚でなく、蟻でなく、幸ひにして人である、と言ふやうなものである、人間といふものは。
FARCE に就て (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
金一両の四分一、つまり銀十二匁が一分に当たる換算で、十四匁だせば米が一石も買えたという箆棒べらぼうな世の中だから、五千両がどのくらいの値打か御想像が願いたい。
なぜみんなは殊の外彼を尊敬するようになったか? これは箆棒べらぼうな話だが、よく考えてみると、阿Qは趙太爺の本家だと言って打たれたのだから、ひょっとしてそれが本当だったら
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
この仕掛けは、あのように箆棒べらぼうに寒い暁近くでもなければ、普通の日の昼間はもちろん夜見ても、二つの接点が離れているからそれだけでは鳥渡ちょっとなんのことやら、怪しまれずに済む筈なんです。
ネオン横丁殺人事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
箆棒べらぼうめ、弟子が大勢居たって、宗次の刀なんぞ、鈍刀番附なまくらばんづけの横綱だ』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「野暮でも箆棒べらぼうでも構わねえが、その眼の三つある華魁おいらんはどうした」
余り可笑いので憎気にくつけも無くなり、箆棒べらぼうめと云ひ捨てに別れましたが。
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「何を云いやがるんでえ、箆棒べらぼうめ、誰のための苦労だと思う」
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そこへ行くと箆棒べらぼうには違ないが感心なところがあります。つまりやりかたは悪辣あくらつでも、結末には妙にあたたかいなさけこもった人間らしい点を見せて来るんです。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
箆棒べらぼう、おつめんなもんぢやねえ、それだらぜにせよぜに、なあ、ぜにさねえつもりすんのが泥棒どろぼうよりふてえんだな、西にしのおとつゝあ躊躇逡巡しつゝくむつゝくだから、かたで
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
この大いなる矛盾のおかげで、この箆棒べらぼうな儚なさのおかげで、兎も角も豚でなく、ありでなく、幸いにして人である、と言うようなものである、人間というものは。
FARCE に就て (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
それには箆棒べらぼうに凝った筆法で、いかめしく左のような文章が記述してあったのである。
長屋天一坊 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「野暮でも箆棒べらぼうでも構はねえが、その眼の三つある華魁おいらんはどうした」
わかった! 箆棒べらぼう! 何のことだ!」
柳営秘録かつえ蔵 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しきりにパチつかせていたが「本当にさ、幽霊だの亡者もうじゃだのって、そりゃ御前、むかしの事だあな。電気灯のつく今日こんにちそんな箆棒べらぼうな話しがある訳がねえからな」
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その意味に於て尊公の心に萌し出でた本能の芽は聖なる鉢顛闍梨パタンヂャリの三昧に比していささかもゆずるところを見出しがたいのぢやよ。オームオーム、(箆棒べらぼうめ)といつたものぢやよ。
「大きい聲ぢや言へねえが、そいつは箆棒べらぼうな話だね」
「ブッ、箆棒べらぼう、笑っているくせに」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「それが十二万四千石松平伊賀様の御落胤だって、そんな箆棒べらぼうなすっ頓狂な、ううう、そのへちゃむくれた話があるもんか、ぺてんにひっ掛ったにちげえねえ、それだけははばかりながらこの銀太が証人だ、いまにざまあ見やがれだ、なあ金太」
長屋天一坊 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「それでも田口が箆棒べらぼうをやってくれたため、君はかえって仕合しあわせをしたようなものですね」
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「えい箆棒べらぼう、気を付けろい!」
戯作者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「大箆棒べらぼうで」
仕方がないから何だか分らない、この次教えてやると急いで引きげたら、生徒がわあとはやした。その中に出来ん出来んと云う声がきこえる。箆棒べらぼうめ、先生だって、出来ないのは当り前だ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「何を、箆棒べらぼう、怖いものか」
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
き出しをするから、そう云う名をつけたものかも知れない。自分はその飯場の意味をある坑夫に尋ねて、箆棒べらぼうめ、飯場たあ飯場でえ、何を云ってるんでえ、とひどく剣突けんつくくらった事がある。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
箆棒べらぼうめ、うちなんかいくら大きくたって腹のしになるもんか」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
飛び込みながら「箆棒べらぼうるいや」と云った。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
箆棒べらぼうめ、腕が鈍いって……」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)