立止たちど)” の例文
その怒りあらだつさまはさながら立止たちどまりてうちつけに物乞ふ乞食かたゐにむかひて群犬むらいぬはせいづる時の如く 六七—六九
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
と不意を喰ったゆき子が立止たちどまるよりはやく、その男はさっと踏みこんだと思うと、持っていた黒い布をいきなりゆき子の頭へ冠せ、恐ろしい力で抱きすくめた。
劇団「笑う妖魔」 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
老翁じいや、このへんかい。」と、市郎は立止たちどまってみかえると、七兵衛は水涕みずばなすすりながら進み出た。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
しよ、ことわつてお仕舞しまひなとへば、こまつたねとおきやう立止たちどまつて、それでもきつちやんわたしあらはりきがて、もうおめかけでもなんでもい、うで此樣こんつまらないづくめだから
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あふれる水にれた御手洗みたらしの石がひるがへる奉納ほうなふ手拭てぬぐひのかげにもうなんとなくつめたいやうに思はれた。れにもかゝはらず朝参あさまゐりの男女は本堂の階段をのぼる前にいづれも手を洗ふめにと立止たちどまる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
二人ふたりさくらをかのぼりていま櫻雲臺をううんだい傍近そばちかときむかふより五六りようくるまかけこゑいさましくしてるを、諸人しよにん立止たちどまりてあれ/\とふ、れば何處いづこ華族樣くわぞくさまなるべき、わかひたるぜに
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
町子まちこにはかにもののおそろしく、たちあがつて二あしあし母屋おもやかたかへらんとたりしが、引止ひきとめられるやうに立止たちどまつて、此度このたび狛犬こまいぬ臺石だいいしよりかゝり、もれ坐敷ざしきわさぎをはるかにいて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
正太しようたはあつともはず立止たちどまりしまゝいつもごとくはだききつきもせで打守うちまもるに、彼方こなた正太しようたさんかとてはしり、おつまどんおまへものらば此處こゝでおわかれにしましよ、わたし此人このひとと一しよかへります
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)