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稀代
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きだい
ふりがな文庫
“
稀代
(
きだい
)” の例文
田原町の
經師屋
(
きやうじや
)
東作、四十年輩の氣のきいた男ですが、これが描き
菊石
(
あばた
)
の東作といはれた、
稀代
(
きだい
)
の兇賊と知る者は滅多にありません。
銭形平次捕物控:075 巾着切の娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
一朝手裏剣をとっては
稀代
(
きだい
)
の名手である点、なるほど「
山椒
(
さんしょう
)
は小粒でもピリッとからい」に
背
(
そむ
)
かないとうなずかせるものがある。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
あわれ
稀代
(
きだい
)
の殺人魔「人間豹」も、もはやのがれるすべはなかった。ロクロの
廻転
(
かいてん
)
につれて風船の綱はみるみる縮まって行く。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
印度の国はガンジス河の河岸で生れました
稀代
(
きだい
)
の槍使いはこれでござい、ごらんの通り、身の丈わずか四尺一寸なれども、槍を使うては神妙不可思議
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
この少納言は、
伽陵
(
がりょう
)
と云う名高い笙と、
大食調入食調
(
だいじきちょうにゅうじきちょう
)
の譜とを、代々御家に御伝えになっていらっしゃる、その道でも
稀代
(
きだい
)
の名人だったのでございます。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
いいですか、いまその
稀代
(
きだい
)
のペンギン鳥が、あの水槽から現われて諸君の目の前で、奇想天外の曲芸を演じます。
ノンシャラン道中記:08 燕尾服の自殺 ――ブルゴオニュの葡萄祭り――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
照すこと
宛然
(
さながら
)
照魔鏡
(
せうまきやう
)
の如くなる實に
稀代
(
きだい
)
の人なりしが此頃音羽七丁目の浪人大藤武左衞門父子奉行所へ
駈込
(
かけこん
)
で娘お光こと
云々
(
しか/″\
)
個樣
(
かやう
)
の譯ありて家主庄兵衞を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
前にちょっとふれたように、光明皇后は不比等と橘三千代とのあいだにお生れになったのだが、この橘三千代は天平の背後に躍った
稀代
(
きだい
)
の
辣腕
(
らつわん
)
家であった。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
私達は彼女の好みで鼻の
尖
(
とが
)
ったランチャを選んだ。三週間の契約だった。それはスポウツ・カアのように背の低い、真っ黄いろに装った
稀代
(
きだい
)
の伊達者だった。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
まんまと首尾よく私を欺し
了
(
おお
)
せる一方に、事情を知っている鮮人朴を射殺しながら、情夫の樫尾と共にどこへか姿を
晦
(
くら
)
ました
稀代
(
きだい
)
の毒婦であった……という事実が
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
戌年
(
いぬどし
)
生
(
うま
)
れの、将軍綱吉が、隆光や、桂昌院の献言をいれて、世の人間たちへ発令した、
畜生保護令
(
ちくしょうほごれい
)
——いわゆる“
生類
(
しょうるい
)
おんあわれみ”と称する
稀代
(
きだい
)
な法律の厳行である。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
稀代
(
きだい
)
の
怪魔
(
かいま
)
「蠅男」の
暴逆
(
ぼうぎゃく
)
のあとを追うて苦闘また苦闘、神のような智謀をかたむけて、しかも勇猛果敢な探偵ぶりを見せた青年探偵帆村荘六も、いま一歩というところで
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「俊夫君どうも有り難う。この中には、警視庁で数年来行方を捜していた、
稀代
(
きだい
)
の貴金属盗賊がいるよ。いずれゆっくりお礼にゆく。君たちは、あそこの自動車で帰ってくれたまえ」
暗夜の格闘
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
一メリコフの
行方
(
ゆくえ
)
など
捜
(
さが
)
しもしなかったろうが、突然消え
失
(
う
)
せた理由だけは、後日処刑された
稀代
(
きだい
)
の女スパイ、フォン・リンデン伯爵夫人ことマタ・アリの告白によって判明したのだった。
戦雲を駆る女怪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
もと南蛮寺におりました
入留満
(
いるまん
)
が、九条の
片
(
かた
)
ほとりに隠れておることを、愚僧は
仔細
(
しさい
)
あってよう存じております、この入留満は、邪法を使う
稀代
(
きだい
)
の悪僧で、時ならぬに枯木に花を咲かせ、ある時は
切支丹転び
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「朝月は
稀代
(
きだい
)
の名馬だ。よくぞ働いてくれた」
三両清兵衛と名馬朝月
(新字新仮名)
/
安藤盛
(著)
遺言
(
ゆいごん
)
によって、ベートーヴェンの墓の
側
(
かたわら
)
に葬られたが、それが三十一歳で
夭折
(
ようせつ
)
した、
稀代
(
きだい
)
の天才のせめてもの満足であったことであろう。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
かくして、名探偵明智小五郎と小林少年は、またしても、
稀代
(
きだい
)
の怪盗二十面相とのたたかいに、みごと勝利をおさめました。
黄金豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「そのほか、
慈眼大師
(
じげんだいし
)
の
銅製
(
どうせい
)
誕生仏
(
たんじょうぶつ
)
、
釈尊
(
しゃくそん
)
苦行
(
くぎょう
)
のお
木像
(
もくぞう
)
、同じく
入涅槃像
(
にゅうねはんぞう
)
、いずれも、
稀代
(
きだい
)
の名作にござりまする」
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
(そのまた玄関に比べてみても、どのくらい僕らは小さかったのでしょう!)しばらくこの建築よりもむしろ途方もない怪物に近い
稀代
(
きだい
)
の大寺院を見上げていました。
河童
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
稀代
(
きだい
)
の乱暴かなと思いました。よし、それが刃でなくて尺八であったとは言いながら、これ抜打ちの辻斬とあいえらばぬ仕方です。この上もなき無礼、この上もなき狼藉です。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
不幸にも私の夫がそうした男で、更に不幸なことには、その夫の家に偶然
稀代
(
きだい
)
の名作人形が保存されていたのでございます。
人でなしの恋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
赤い振袖を着た
稀代
(
きだい
)
の美男が、
復讐
(
ふくしう
)
の快感に浸つて、キラキラと眼を輝やかす樣は、言ひやうもなく物凄まじい觀物です。
銭形平次捕物控:002 振袖源太
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
銘を
天福輪
(
てんぷくりん
)
と切った
稀代
(
きだい
)
の剛刀——ぐいと、
背後
(
うしろ
)
ざまに落とし差した下谷の小鬼、伴大次郎、黒七子の裾を端折ると一拍子、ひょいと切戸を潜って
戸外
(
そと
)
へ出た。
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
一寸法師
(
いっすんぼうし
)
の話に出てくる鬼も一身の危険を顧みず、
物詣
(
ものもう
)
での姫君に見とれていたらしい。なるほど
大江山
(
おおえやま
)
の
酒顛童子
(
しゅてんどうじ
)
や
羅生門
(
らしょうもん
)
の
茨木童子
(
いばらぎどうじ
)
は
稀代
(
きだい
)
の悪人のように思われている。
桃太郎
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
こうして、あたり前の百姓家におさまって、雨降り仕事に草鞋をこしらえているところを見れば、だれが見ても、あたり前の百姓で、これを
稀代
(
きだい
)
な盗賊と見るものはありません。
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その傷の中に、春日野ゆかりの帯揚の中に入って居たろうと思う、あの
稀代
(
きだい
)
の宝石を隠して居ないと、誰が保証するんだ
呪の金剛石
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
大きな帆前船を持ち、何十人という子分を養い、数年の間、
巧
(
たくみ
)
に支那日本の官憲の目をくらまして、莫大な金銀をかすめ取った、
稀代
(
きだい
)
の海賊であった。
白髪鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ですから翁は蒐集家としても、この
稀代
(
きだい
)
の
黄一峯
(
こういっぽう
)
が欲しくてたまらなくなったのです。
秋山図
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そこに鹿の角の刀
架
(
か
)
けに二口の豪刀、大迫玄蕃が自慢の
差料
(
さしりょう
)
で、
相州
(
そうしゅう
)
お
猿畠
(
さるばたけ
)
の住人、お猿畠の佐平太兼政が火と水を取ったという、新刀中での
稀代
(
きだい
)
の
業物
(
わざもの
)
の据えられてある——のはいいが
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「それもよろしゅうござる、お留めは致さぬが、しかし兵馬どの、拙者の見受け申すところでは、その机竜之助とやらは
稀代
(
きだい
)
の
遣
(
つか
)
い
手
(
て
)
である、ほとんど今の世に幾人とない遣い手である様子じゃ」
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
死んだ禰惣は
稀代
(
きだい
)
の惡黨と知れた上、彦太郎の主家を思ふ衷情が知れて、昔のお裁きの極端な
融通性
(
ゆうづうせい
)
を發揮し、形ばかりの遠島で二年目には江戸に還れました。
銭形平次捕物控:127 彌惣の死
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
博士は今、この
稀代
(
きだい
)
の大悪人、絶好の敵手を見出して、武者震いを禁じ得ない
体
(
てい
)
であった。鋭い両眼は、まだ見ぬ大敵への闘志に、
爛々
(
らんらん
)
と輝き
初
(
はじ
)
めたかと見えた。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その代り(再び笑う)——その代りわたしは一夜の内に、
稀代
(
きだい
)
の
大賊
(
たいぞく
)
になれるのです。
報恩記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
関
(
せき
)
の
孫六
(
まごろく
)
の作に、大小
二口
(
ふたふり
)
の
稀代
(
きだい
)
の
業物
(
わざもの
)
がある。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
死んだ弥惣は
稀代
(
きだい
)
の悪党と知れた上、彦太郎の主家を思う衷情が知れて、昔のお裁きの極端な融通性を発揮し、形ばかりの遠島で二年目には江戸に還れました。
銭形平次捕物控:127 弥惣の死
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そして、この
稀代
(
きだい
)
の殺人鬼と名探偵とは、電話口に声を
揃
(
そろ
)
えて、さも面白そうに笑い合うのであった。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
神谷青年は、まったく
度胆
(
どぎも
)
を抜かれてしまった。明智が
稀代
(
きだい
)
の名探偵であることは聞いていた。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
熊井熊五郎といふ
稀代
(
きだい
)
の兇賊を相手にしては、十年間の經驗でも自分一人だけでは
覺束
(
おぼつか
)
なく、矢張り錢形平次の智惠と力を借りる外は無いことはあまりにもよく解つて居るのでした。
銭形平次捕物控:157 娘の役目
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
しかし、いくら信じがたいにせよ、
稀代
(
きだい
)
の殺人鬼が、刑事たちの包囲を受けているとあっては、捨てておくわけにはいかぬ。北森氏は直ちに一郎の部屋を出て現場にかけつけた。
暗黒星
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
反対に、波越警部がポケットのピストルを取出して、
稀代
(
きだい
)
の兇賊に狙いを定めた。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
だが、その実は、この女こそ、
稀代
(
きだい
)
の女賊「黒トカゲ」の変装姿であった。
黒蜥蜴
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
宝石王玉村家の令嬢と持て
囃
(
はや
)
され、女王の様にふるまっていた妙子が、又、
稀代
(
きだい
)
の
毒婦
(
どくふ
)
として、世間を、警察を、思うがままに飜弄していた彼女が、この服罪は余りと云えばみじめであった。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
稀代
(
きだい
)
の強敵を向こうに廻して、彼の闘争心は燃え上がったのだ。
黒蜥蜴
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
わしのネクタイ・ピンについている
稀代
(
きだい
)
の大真珠だ。
白髪鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
稀代
(
きだい
)
の宝玉
黄金豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
“稀代”の意味
《名詞》
稀代(きたい、きだい、「希代」に「同音の漢字による書きかえ」がなされる)
世にも稀なこと。
不思議なこと。
(出典:Wiktionary)
稀
漢検準1級
部首:⽲
12画
代
常用漢字
小3
部首:⼈
5画
“稀”で始まる語句
稀
稀有
稀薄
稀世
稀〻
稀々
稀覯
稀覯書
稀品
稀人