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こわば
ふりがな文庫
“
硬張
(
こわば
)” の例文
石川孫三郎の顔は
硬張
(
こわば
)
りました。何と言おうと、どう
誤魔化
(
ごまか
)
そうと、この
悪戯
(
いたずら
)
は、屋敷内に住んでいる者の仕業でなければなりません。
銭形平次捕物控:098 紅筆願文
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
始めから
頭
(
あたま
)
の中に
硬張
(
こわば
)
つた道徳を据ゑ付けて、其道徳から逆に社会的事実を発展させ様とする程、本末を誤つた話はないと信じてゐた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
疳癪の強そうな縁の
爛
(
ただ
)
れ気味な赤い目をぱちぱち
屡瞬
(
しばたた
)
きながら、獣の皮のように
硬張
(
こわば
)
った手で時々目
脂
(
やに
)
を拭いて、茶の間の端に坐っていた。
躯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
達二はどこまでも
夢中
(
むちゅう
)
で追いかけました。そのうちに、足が何だか
硬張
(
こわば
)
ってきて、自分で走っているのかどうか
判
(
わか
)
らなくなってしまいました。
種山ヶ原
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
地雪のおもてが氷のように
硬張
(
こわば
)
って、しかも、いつそれが「
醜い姉妹
(
アグリイ・シスタア
)
」と呼ばれる次ぎの種類に急変しないとも限らない。
踊る地平線:11 白い謝肉祭
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
▼ もっと見る
それにもかかわらず、私の口から出て来るものは妙に気持が
硬張
(
こわば
)
って、まるで喧嘩口調の詰問です。これでは兄の怒るのも、無理はありません。
仁王門
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
知らず
識
(
し
)
らず手に汗を握り、
固唾
(
かたず
)
を
呑
(
の
)
み、体じゅうを
硬張
(
こわば
)
らせつゝ異様にかゞやきを増して来る彼の
瞳
(
ひとみ
)
の中へ吸い込まれたようになっていると
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そして、血の気の失せた顔を
硬張
(
こわば
)
らせて、しばらく黙念に
耽
(
ふけ
)
っていたが、やがて立ち上ると、悲壮な決意を
泛
(
うか
)
べて云った。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
からだ中の
血潮
(
ちしお
)
が、ドキドキと
逆流
(
ぎゃくりゅう
)
するようだ。とてもジッとしていられない。が、さりとて、妙に体が
硬張
(
こわば
)
って、声を立てることも、動くことも出来ない。
香水紳士
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
ぼんやり
中腰
(
ちゅうごし
)
になってお由の白い顔を眺めていた土岐健助は、初めて
愕然
(
がくぜん
)
と声をあげた。そして、おずおずとお由の
硬張
(
こわば
)
った腕を持ったが、
勿論
(
もちろん
)
脈
(
みゃく
)
は切れていた。
白蛇の死
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彦兵衛もいつの間にか乗り出して、細い身体を
硬張
(
こわば
)
らせて
凝視
(
みつ
)
めていた。まったく、力業師として、ちょっとこの右に出る者はあるまいと思われる大石武右衛門だった。
釘抜藤吉捕物覚書:11 影人形
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
這入って来るなり寝台の上の兄の死体の方に目を馳せたが、その顔は恐怖のあまりひどく
硬張
(
こわば
)
っていた。私はなぜか、二郎の姿を見ると急に
動悸
(
どうき
)
がはげしくなって来た。
火縄銃
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
しかし、それだけで正勝はなにかしらひどく
硬張
(
こわば
)
って、あとを続けることができなかった。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
松岡は始めてそう謝まるような声音で独り言をしたが、からだが
硬張
(
こわば
)
って動かれなかった。
三階の家
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
そして思想の
断
(
き
)
れ目毎に見える彼はもとのように静かで動かない。彼女はそのうちに異常な侮辱を感じて来た。そして
硬張
(
こわば
)
った神経の疲労のために泥のように寝入ってしまったのである。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
これをむずかしく言いますと、定義を下せばその定義のために定義を下されたものがピタリと
糊細工
(
のりざいく
)
のように
硬張
(
こわば
)
ってしまう。
現代日本の開化
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「御心配をかけて、どうも済みません」お島はそう言ってお
叩頭
(
じぎ
)
をしようとしたが、筋肉が
硬張
(
こわば
)
ったようで首も下らなかった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
恐ろしい失望とも屈辱ともつかぬ感情が、三人の顔を
硬張
(
こわば
)
らせます。定吉にうまうまと担がれた馬鹿馬鹿しさを、つくづく感じ入ったのでしょう。
銭形平次捕物控:037 人形の誘惑
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
云い終ると、伸子の全身を
硬張
(
こわば
)
らせていた
靱帯
(
じんたい
)
が急に
弛緩
(
しかん
)
したように見え、その顔にグッタリとした疲労の色が現われた。そこへ、法水は和やかな声で訊ねた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
毒薬でも
呻
(
あお
)
るような恰好で、そのくせ喉を鳴らして舌
舐
(
な
)
めずりしながら流し込んだ強烈なアルコオルの一、二杯がこの男の
硬張
(
こわば
)
っていた舌を滑らかにさせたのであろうか
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
折り目から切れて行きそうな地のしっかりした八反の
袷
(
あわせ
)
のうえに、これも相当に
硬張
(
こわば
)
ったものらしく
袈裟
(
けさ
)
のようにざくざくする帯を、云われないうちに締め直しにかかっていたお久は
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
草加屋伊兵衛は胸に一本の折矢を立てて、板のように
硬張
(
こわば
)
って死んでいた。
釘抜藤吉捕物覚書:08 無明の夜
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
始めから頭の中に
硬張
(
こわば
)
った道徳を据え付けて、その道徳から逆に社会的事実を発展させようとする程、本末を誤った話はないと信じていた。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
いつも気のそわそわしているお今は、今朝は筋肉などの
硬張
(
こわば
)
った顔に、活き活きした表情の影さえ見られず、お増などに対する口も重かった。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
平次はいろいろ手を尽して問い試みました、娘のお絹も見るに見兼ねて口を添えますが、一色道庵の顔は困惑に
硬張
(
こわば
)
るだけで何の役にも立ちません。
銭形平次捕物控:025 兵糧丸秘聞
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
二人はお春の
硬張
(
こわば
)
った顔つきを見るなり、黙って応接間へ引き入れて聞いた。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
みしりと音がするほど、関節が窮屈に
硬張
(
こわば
)
って、動きたがらない。じっとして、布団の中に
膝頭
(
ひざがしら
)
を横たえていると、
倦怠
(
だるい
)
のを通り越して重い。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
振り上げた権次の顔は、妙に突き詰めた真剣さに
硬張
(
こわば
)
って稀代の
醜怪
(
グロティスク
)
な
潮吹
(
ひょっとこ
)
も、もう笑える人相ではありません。
黄金を浴びる女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
庸三はまだ全くは眠りから
覚
(
さ
)
めないような気分で、顔の
腫
(
は
)
れぼったさと、顔面神経の
硬張
(
こわば
)
りとを感じながら、とにかく居住いを正して
煙草
(
たばこ
)
を
喫
(
ふ
)
かしていた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
舌
硬張
(
こわば
)
って動けしませんし、眼エあくことすら
出来
(
でけ
)
しませんので、エエ、腹立つ、どないしてやろ思てる間アにまたいつやらうとうとしてしもて、……そいでも話声まだ長いこと聞えてて
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
月の光のせいか、可愛らしい顔が妙に
硬張
(
こわば
)
って、表情にも、調子にも、少年らしさなどはもう微塵もありません。
大江戸黄金狂
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「
差
(
さ
)
しで一年どうですね。」などと、お婆さんはお増の顔を見ると、筋肉の
硬張
(
こわば
)
ったような顔をして言った。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
自然の
児
(
じ
)
になろうか、又意志の人になろうかと代助は迷った。彼は彼の主義として、弾力性のない
硬張
(
こわば
)
った方針の下に、寒暑にさえすぐ反応を呈する自己を、器械の様に束縛するの愚を
忌
(
い
)
んだ。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
有馬屋へ行ってみると、店中の空気はなんとなく
硬張
(
こわば
)
って、奉公人達の顔も、恐ろしく取澄ましております。
銭形平次捕物控:086 縁結び
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
やがてドクトルは
糊
(
のり
)
に
硬張
(
こわば
)
った診察着でやって来て、ベッドの傍に
膝
(
ひざ
)
をついて聴診器をつかいはじめた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
自然の児にならうか、又意志の
人
(
ひと
)
にならうかと代助は
迷
(
まよ
)
つた。
彼
(
かれ
)
は
彼
(
かれ
)
の主義として、弾力性のない
硬張
(
こわば
)
つた方針の
下
(
もと
)
に、寒暑にさへすぐ反応を呈する自己を、器械の様に
束縛
(
そくばく
)
するの愚を忌んだ。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
平次は砕けた調子でそう言って、ひどく
硬張
(
こわば
)
っている相手の女の表情をほぐしてやろうとするのでした。
銭形平次捕物控:020 朱塗の筐
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
レコオドをかけたり、瑠美子を踊らせたり、いつも
賑
(
にぎ
)
やかな談笑に花が咲いていた。そう聞くと、庸三も自分に対するひところの彼女の
硬張
(
こわば
)
った気持もわかるのであった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
恐怖と疑惑に打ちひしがれたお勢は、美しい顔を
硬張
(
こわば
)
らせてこう言うより外にはなかったのです。
銭形平次捕物控:017 赤い紐
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
一里半ばかり、鼻のもげるような
吹曝
(
ふきさら
)
しの寒い
田圃道
(
たんぼみち
)
を、
腕車
(
くるま
)
でノロノロやって来たので、
梶棒
(
かじぼう
)
と一緒に
店頭
(
みせさき
)
へ降されたとき、ちょっとは歩けないくらい足が
硬張
(
こわば
)
っていた。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
平次の調子が改まったので、主人峰右衛門も思わず引入れられるように、
硬張
(
こわば
)
った表情をします。
銭形平次捕物控:246 万両分限
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
母親はお島の前では、初めて来た婿にも、
愛相
(
あいそ
)
らしい
辞
(
ことば
)
をかけることもできぬ程、お互に神経が
硬張
(
こわば
)
ったようであったが、鶴さんと二人きりになると、そんなでもなかった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
パデレフスキーの指は
硬張
(
こわば
)
らないにしても、その思想はもう昔のパデレフスキーではなかった。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
顔の筋肉などの
硬張
(
こわば
)
ったお増は、適当の
辞
(
ことば
)
も見つからずに、淋しい
笑顔
(
えがお
)
を
外方
(
そっぽ
)
へ向けたきりであったが、その目は細君の方へ鋭く働いていた。そして細君が何を言い出すかを注意していた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
悲しく挙げた顔は
塑像
(
そぞう
)
のように
硬張
(
こわば
)
って、蒼白い頬は涙の
痕
(
あと
)
もなく乾き切っておりました。これは満足しきった人の顔です。しかも、この世の人とも思えぬ美しい顔だったのです。
銭形平次捕物控:058 身投げする女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
昨日の晩から
頭顱
(
あたま
)
が痛いといってお島はその日一日充血したような目をして寝ていた。髪が総毛立ったようになって、荒い顔の皮膚が
巖骨
(
いわっころ
)
のように
硬張
(
こわば
)
っていた。そして時々うんうん
唸
(
うな
)
り声をたてた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
と寝室の
扉
(
ドア
)
を叩く音に驚いて、
寝巻
(
パジャマ
)
姿の讃之助が飛出すと、廊下の
絨毯
(
じゅうたん
)
の上に
崩折
(
くずお
)
れた家庭教師の道子は、その不思議に刻みの深い顔を
硬張
(
こわば
)
らせて、涙も無く泣きじゃくって居りました。
葬送行進曲
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
少し不養生らしい蒼い顔が、憤怒と月の光に、物凄く
硬張
(
こわば
)
って居りました。
裸身の女仙
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
枝の上の余吾之介は、ホッとした心持で、
硬張
(
こわば
)
った四肢を伸ばしました。
十字架観音
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
姉に似ぬ美しい顔を
硬張
(
こわば
)
らせて、そのつぶらな眼をしばたたくのです。
銭形平次捕物控:090 禁制の賦
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
硬
常用漢字
中学
部首:⽯
12画
張
常用漢字
小5
部首:⼸
11画
“硬”で始まる語句
硬
硬直
硬化
硬骨
硬玉
硬過
硬炭
硬口蓋
硬相
硬苦