眞實まこと)” の例文
新字:真実
眞實まことと思ひ終に吾助の言葉の如く二兩の金をもち宿やどへ下りたり然るに惡事千里のことわざの如く早晩いつしか吾助がお兼と言合せ飯炊めしたきの宅兵衞より金五兩を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
よしや千萬里ばんりはなれるとも眞實まこと親子おやこ兄弟けうだいならば何時いつかへつてうといふたのしみもあれど、ほんの親切しんせつといふ一すぢいとにかヽつてなれば
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ましてや彼方の世に新たに生れる主體の同一性は惠みの最も深き最も大なる發動でなければならぬ。かくの如き神の眞實まことに答へる人の眞實まことが愛である。
時と永遠 (旧字旧仮名) / 波多野精一(著)
眞實まことの下手人を搜し當てゝ、猪之助の不面目を救つてやり度いといふ外には邪念も無かつたのです。
銭形平次捕物控:260 女臼 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
それにはもつと複雜な精神作用が、百パアセントの虚構フイクシヨンが必要だ。よい小説とは言はば「嘘から出た眞實まこと」だ。本當の小説家は、いつも眞實を語るため虚僞を使用する。
詩人も計算する (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
けれども爺さんには今地主から言はれたことがどうしても眞實まこととして請取ることが出來ませんでした。律義な爺さんにはどうしても身分が違ふからといふ恐怖が先ちました。
白瓜と青瓜 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わたくしいま二本にほん煙筒えんとう二本にほんマスト不思議ふしぎなるふねて、神經しんけい作用さようかはらぬがふとおもうかんだこのはなししかの老水夫らうすゐふげん眞實まことならば、此樣こんふねではあるまいか、その海賊船かいぞくせんといふのは
炬燵こたつの火から火事が出たとか云はれてゐたが、近村の若い漁夫どもがそこへ集つて賭博を打つてゐる中大喧嘩を初めて、その揚句にこんなことになつたのだといふ噂が一番眞實まことしやかに傳へられた。
避病院 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
眞實まことならずと來て告げむ OMIKA の婆に心おびゆる。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
眞實まことなるもの、かならずしも眞實まことらしからず。』
眞實まこととなし斷りたりしは麁忽そこつ千萬此方はげんに見たるといふ證據あらねば其醫師いしやの云しがそにて大藤のむすめに病の氣も有らぬを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ただ神の根源的囘想の眞實まこと、愛の主體としてのかれの人格的同一性のみこの不思議をなし得るのである。
時と永遠 (旧字旧仮名) / 波多野精一(著)
苔のしたにて聞かば石もゆるぐべし、井戸がはに手を掛て水をのぞきし事三四度に及びしが、つく/″\思へば無情つれなしとても父樣は眞實まことのなるに、我れはかなく成りて宜からぬ名を人の耳に傳へれば
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
眞實まことは不義ではなく、許嫁いひなづけ良夫をつとがあつたので御座います。
神の眞實まこと、何ものにも打勝ち何事をも貫徹する神聖者の主體性・人格性こそ萬事の本であり源である。
時と永遠 (旧字旧仮名) / 波多野精一(著)
かゞめ折角の御入來なれども眞實まことに御氣のどく千萬生憎あやにく只今たゞいまさかなは賣切しゆゑ見世を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
こけのしたにてかばいしもゆるぐべし、井戸ゐどがはにかけみづをのぞきしこと三四およびしが、つく/″\おもへば無情つれなしとても父樣とゝさま眞實まことのなるに、れはかなくりてからぬひとみゝつたへれば
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
う申さばおまへさまのおこヽろにはなんんなものたヽきつけてかへしたしとおぼしめすからねど、かみまいにも眞實まことのこもるおこヽろざしをいたゞものぞかし、其御恩そのごおんなんともおもはず、一れんといふ三百六十五日打通うちとほして
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
するどはらつておたかどのことばばかりはうれしけれど眞實まことやらなにやらこゝろまで芳之助よしのすけあやにくたず父御てゝごこゝろ大方おほかたれてあり甲斐性かひしよなしのいやになりてえんちどがさに計略三昧けいりやくざんまいかゝりし我等われらわなのうちのけもの
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)