かけ)” の例文
「色も匂ひも味もないところを見ると、砒石ひせきだらうと言ふことで、喰べ殘しの小さいかけらを、本道の石齋が持つて行きましたが」
主人の少女は小さな箱から氷のかけを二ツ三ツ、皿に乗せて出して、少年の枕頭まくらもとおいて、「もう此限これぎりですよ、また明日あした買ってあげましょうねエ」
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
無数の米粒の中に、もしや見えざる石のかけが混っていて、主人が胃を破りその生命を危くするような事がありはせまいか。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ロスリッジが黙って俯向いて、焼麺麭トーストかけを弄んでいるので、細君は半ば冗談に、だが、何となくきっとした声で
双面獣 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
が、遂に風に吹かれて円莢のかけが、種子ごと一緒に遠くの方へ吹き飛ばされて了ふ。その種子はうして新しい地面を見つけて、芽を出して木になるのだ。
さわやかな飲料で絶えず舌とあご咽喉のどを洗っていなくてはいたたまれなかった。余は医師に氷を請求した。医師は固いかけらがすべって胃のに落ち込む危険を恐れた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ほとんどくちくことも出來できませんでした、やつとのことで左手ゆんでかけすこしばかりみました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
炭団でなければ起った炭火へ灰をかけてちょいと手をかざせるほどにして火鉢なら鉄架てっきゅうの上へ玉子焼鍋を置いて炭団を蓋の上の四隅へ四つに割った一かけずつ載せておきます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
床には麺麭パンかけらが散らばっているし、卓布には煙草の灰までくっついている。
たとえ食べものや寝所が欲しさに戸を叩いたとしても、牛小舎ごやの隅の藁床へなりと寝かしてくれたっていいじゃないか。犬に食わせる麺麭パンかけらぐらいけてくれたってよさそうなものだ。
乞食 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
「左様でございます。ほんたうに、雲のかけ一つだつてございませんわ。」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
ぼろ屑はざるに入れ、果物くだものの種は小桶こおけに入れ、シャツは戸棚とだなに入れ、毛布は箪笥たんすに入れ、紙屑は窓のすみに置き、食べられる物ははちに入れ、ガラスのかけは暖炉の中に入れ、破れくつとびらの後ろに置き
「とても疲れちゃったわ。」セエラはびっこの足台にぐたりと坐りました。「おや、メルチセデクがいるのね。可哀そうに、きっと御飯をもらいに出て来たのだわ。でも、今夜は一かけも残っていないのよ。 ...
護摩壇ごまだんも、天井裏も、床下も、押入も、一刻(二時間)ばかりで見尽しましたが、竹筒はおろか、小判のかけらも見付かりません。
第一だいいち證人しようにん帽子屋ばうしやでした。かれ片手かたて茶碗ちやわん片手かたて牛酪麺麭バターパンかけつてはいつてました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「左様でございます。ほんとうに、雲のかけ一つだってございませんわ。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「こうだ」と甲野さんが壊れたかけを土の上に眺めている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
腐った果物のかけら一つでも鼠と争わねばならなかった。
あやながら端渓たんけいで、よく洗ってあるのもたしなみですが、墨は親指おやゆびほどではあるが唐墨のかけらに違いなく、筆も一本一本よく洗って拭いてあります。
が、やがてあいちやんは、びるだけとほくへ兩腕りやううでばして、其端そのはしを一かけたゝおとしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
賣りに出た御家人の株といふのは何んと千兩、小判のかけらも無い寺西右京は、碁を打ち乍ら溜息ばかりついて來た
鍋のかけら、銅の藥罐、鍋鐵、眞鍮の煙管、何でも同じこと、お望みなら山吹色の小判でも、貴方がたの鼻の先で、見事またゝきする間に銀にしてお目にかける。
「小判なんざ、かけらも出やしません。出て來たのは、古釘と五徳のこはれと、鐵漿かねの壺だけ、これでも金には違ひありませんが、——飛んだくたびれ儲けで」
何處にも、血の付いた脇差も、小判のかけらもありません。天井も、床下も、押入も、蒲團の中も見ました。
どこにも、血の付いた脇差も、小判のかけらもありません。天井も、床下も、押入も、蒲団の中も見ました。
「確かなことは判らないが、空の千兩箱が二つも庭にはふり出してあつたよ。中味は小判のかけらも無い」
それへ一々銀流しをかけて鍋のかけやら、藥罐のふたと一緒に並べたのは、實に人を喰つたやり方です。
それへ一々銀流しをかけて鍋のかけやら、薬缶の蓋と一緒に並べたのは、実に人を喰ったやり方です。
主人の又左衛門始め、丁稚小僧まで加わって、大地を掘らぬばかりに捜し抜きましたが、三千両は遠く持去られたものか、浪花屋の居廻りには、かけらも見えなかったのです。
一つはチョークのかけら、これは門番の小倅こせがれへ返してやって下さい。もう一つは、手帳から引むしった、金庫の合言葉を書いた紙、これは家扶の本藤へ返してやって頂き度い。
判官三郎の正体 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
お勝手から裏へ出ると、浅い釣瓶つるべ井戸があって、物置があって、その裏に埃溜ごみためがありますが、どんなに念入りに捜したところで、菓子のかけらも見付かることではありません。
その上、浪花屋の前を通り越して、霊岸橋れいがんばしの袂へ消炭のかけらを捨てて行ったのは、どうだ。
「それが金を溜めている証拠じゃないか。商売物の品をあれだけ買いためている癖に、ろくな着替えも、膳や小鉢や、鰹節かつおぶしかけらも無いというのは、周助の並々でない心掛けだ」
香具師やしの懐中にも小判のかけらも見えないとすれば、早くもどこかへ隠したか、でなければ、横合から五千両をさらわれて、自棄やけのやん八で国府こくぶ濁酒どぶろくに贅を尽していたのだと睨んだのです。
余吾之介が格子から顔を出すと、外は冷たい月、人間のかけらも見えません。
十字架観音 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
鍋のかけら、あかの薬缶、鉄鍋、真鍮の煙管きせる、何でも同じこと、お望みなら山吹色の小判でも、貴方あなたがたの鼻の先で、見事瞬きする間に銀にしてお目にかける、嘘だと思う方は煙管でも、かんざしでも
見ると、頸筋くびすじから噴き出した恐ろしい血潮が、お市の半身と、その辺の雪を物凄ものすさまじく染めておりますが、見渡したところ、縁の下にも、庭の中にも、お化けはおろか、人間のかけらも見えません。
しましたが、人間のかけら猫一匹居なかつたやうで、へエ——
「九百九十両のかけらを使った人間があるんで」
「九百九十兩のかけらを使つた人間があるんで」
「漆原の主人重三郎が一と月前に死んだのさ。年は三十五で病氣は三年も前から床に就いて居る長い間の癆咳らうがい。これは壽命で何んの不思議もないが、その後に殘された筈の七八千兩の大金が、何處に隱してあるか小判のかけらも見えない」
「その太左衞門は一年前にくなつたが、何百年も溜めた寳が、どう積つても萬とある筈だといふので、家中の者から遠い近い親類まで寄つて、天井裏から床下、屋敷の居廻り何萬坪といふ大地の皮まで引つ剥がして見たが、小判のかけらも出て來ない」