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漲
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みな
ふりがな文庫
“
漲
(
みな
)” の例文
実生活の圧迫を逃れたわが心が、本来の自由に
跳
(
は
)
ね返って、むっちりとした余裕を得た時、
油然
(
ゆうぜん
)
と
漲
(
みな
)
ぎり浮かんだ
天来
(
てんらい
)
の
彩紋
(
さいもん
)
である。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
いつでも勢力が
漲
(
みな
)
ぎッている天地だ。太陽が
鼾
(
いびき
)
をかいて
寐
(
ね
)
たためしはない。月も星も山も川もなんでも動いていないものはない。
ねじくり博士
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
空には今日も青光りが
一杯
(
いっぱい
)
に
漲
(
みな
)
ぎり、白いまばゆい雲が大きな
環
(
わ
)
になって、しずかにめぐるばかりです。みんなは又叫びました。
風野又三郎
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
若
(
わか
)
き
血潮
(
ちしほ
)
の
漲
(
みな
)
ぎりに、私は
微醺
(
びくん
)
でも
帶
(
お
)
びた時のやうにノンビリした
心地
(
こゝち
)
になツた。友はそんなことは氣が
付
(
つ
)
かぬといふ
風
(
ふう
)
。
虚弱
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
言うに言われぬ
恐怖
(
おそろし
)
さが身内に
漲
(
みな
)
ぎってどうしてもそのまま眠ることが出来ないので、思い切って
起上
(
たちあ
)
がった。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
▼ もっと見る
さっぱりと眼が覚めて、初秋の未明の爽やかさが身に浸み入るようだ、云いようのないちからが体じゅうに
漲
(
みな
)
ぎり満ちて、気持も常になく
溌溂
(
はつらつ
)
としている。
恋の伝七郎
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私は廊下に
漲
(
みな
)
ぎる輝かしい光線の為めに、眼球の表面を刺激された
挙句
(
あげく
)
、網膜に
斑
(
まだ
)
らが出来たような不快な感じを抱いて、再びラオチャンドの室へと這入って行った。
ラ氏の笛
(新字新仮名)
/
松永延造
(著)
私はこの渋谷町の高台から
遙
(
はるか
)
に下町の空に、炎々と
漲
(
みな
)
ぎる白煙を見、足許には道玄坂を上へ上へと逃れて来る足袋はだしに、泥々の衣物を着た避難者の群を見た時には
琥珀のパイプ
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
小川が滑るように流れそのせせらぎは人を眠りにいざない、ときたま
鶉
(
うずら
)
が鳴いたり、
啄木鳥
(
きつつき
)
の木を
叩
(
たた
)
く音が聞えるが、あたりに
漲
(
みな
)
ぎる静寂を破る響はそれくらいのものだ。
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
ものさびしいうちに一種の興味を感じつつもその愉快な感じのうちには、何となしはかなく悲しく、わが生の煙にひとしき何もかも夢という思念が、
潮
(
うしお
)
と
漲
(
みな
)
ぎりくるを感ずるのである。
紅黄録
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
河身を見れば濁水
巨巌
(
きょがん
)
に
咆哮
(
ほうこう
)
して
正
(
まさ
)
しく天に
漲
(
みな
)
ぎるの有様、
方等般若
(
ほうとうはんにゃ
)
の滝もあったものにあらず、濁り水が汚なく絶壁を落つるに過ぎない。中の茶屋で
昼食
(
ちゅうじき
)
。出かけるとまたもや烈風強雨。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
何時
(
いつ
)
ともなくウトウトして居たらしい八五郎は、コトリといふ音に眼を覺したのです。何とも言へない不氣味さが、部屋の中一パイに
漲
(
みな
)
ぎつて、頭の上へ何やらノシかゝつて來るやうな心持がします。
銭形平次捕物控:015 怪伝白い鼠
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
乗客は——
可
(
か
)
なり込んで、中には、登山服に身を固めて、アルペンシュトックに頬杖ついたいかめしいのも交じっていたが、——一斉に左の窓にかたまって、あーっと驚きの声が、室の中に
漲
(
みな
)
ぎった。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
生命
(
いのち
)
の気
漲
(
みな
)
ぎる
朝
(
あした
)
しやうりの歌
(新字旧仮名)
/
末吉安持
(著)
そうして明るい家の
中
(
うち
)
に陰気な空気を
漲
(
みな
)
ぎらした。母は
眉
(
まゆ
)
をひそめて、「また一郎の病気が始まったよ」と自分に時々
私語
(
ささや
)
いた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ハッと思って細川は
躊躇
(
ためろ
)
うたが、
一言
(
ひとこと
)
も発し得ない、
止
(
とど
)
まることも出来ないでそのまま先生の居間に入った。何とも知れない一種の
戦慄
(
せんりつ
)
が身うちに
漲
(
みな
)
ぎって、坐った時には彼の顔は
真蒼
(
まっさお
)
になっていた。
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
身体
(
からだ
)
に活気を
漲
(
みな
)
ぎらせようにも、とうてい自己が自己以上に沈着してしまって、
一寸
(
いっすん
)
もあがきが取れなかったのである。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その時自分は
顛覆返
(
ひっくりかえ
)
った
炬燵
(
こたつ
)
を想像していた。
焦
(
こ
)
げた
蒲団
(
ふとん
)
を想像していた。
漲
(
みな
)
ぎる煙と、燃える
畳
(
たたみ
)
とを想像していた。ところが開けて見ると、
洋灯
(
ランプ
)
は例のごとく
点
(
とも
)
っている。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
刈り込んだ
髯
(
ひげ
)
に交る
白髪
(
しらが
)
が、忘るべからざる彼の特徴のごとくに余の眼を射た。ただ血の
漲
(
みな
)
ぎらない両頬の
蒼褪
(
あおざ
)
めた色が、冷たそうな無常の感じを余の胸に
刻
(
きざ
)
んだだけである。
三山居士
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
甲野さんは
真廂
(
まびさし
)
を
煽
(
あお
)
って坂の下から真一文字に坂の尽きる
頂
(
いただ
)
きを見上げた。坂の尽きた頂きから、淡きうちに限りなき春の色を
漲
(
みな
)
ぎらしたる
果
(
はて
)
もなき空を見上げた。甲野さんはこの時
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
敬太郎はまた例の
袴
(
はかま
)
を
穿
(
は
)
きながら、今度こそ様子が好さそうだと思った。それからこの間買ったばかりの
中折
(
なかおれ
)
を帽子掛から取ると、未来に富んだ顔に生気を
漲
(
みな
)
ぎらして
快豁
(
かいかつ
)
に表へ出た。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
実を云うとこの日は朝から食慾が
萌
(
きざ
)
さなかったので、吸飲の中に、動く事のできぬほど濁った白い色の
漲
(
みな
)
ぎる様を見せられた時は、すぐと重苦しく舌の先に
溜
(
たま
)
るしつ
濃
(
こ
)
い乳の味を予想して
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
漲
(
みな
)
ぎり渡る湯煙りの、やわらかな光線を一
分子
(
ぶんし
)
ごとに含んで、
薄紅
(
うすくれない
)
の暖かに見える奥に、
漾
(
ただよ
)
わす黒髪を雲とながして、あらん限りの
背丈
(
せたけ
)
を、すらりと
伸
(
の
)
した女の姿を見た時は、礼儀の、
作法
(
さほう
)
の
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
神の
代
(
よ
)
を空に鳴く
金鶏
(
きんけい
)
の、
翼
(
つばさ
)
五百里なるを一時に
搏
(
はばたき
)
して、
漲
(
みな
)
ぎる雲を下界に
披
(
ひら
)
く大虚の
真中
(
まんなか
)
に、
朗
(
ほがらか
)
に浮き出す
万古
(
ばんこ
)
の雪は、末広になだれて、八州の
野
(
や
)
を圧する勢を、左右に展開しつつ、
蒼茫
(
そうぼう
)
の
裡
(
うち
)
に
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「ありがとう」と云う女の眼の
中
(
うち
)
には憂をこめて笑の光が
漲
(
みな
)
ぎる。
一夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
漲
漢検1級
部首:⽔
14画
“漲”を含む語句
漲落
漲溢
暴漲
溢漲
怒漲
漲充
漲水御嶽
漲流
脂漲