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湧上
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わきあが
ふりがな文庫
“
湧上
(
わきあが
)” の例文
この、もの
淑
(
しずか
)
なお澄が、
慌
(
あわただ
)
しく言葉を投げて立った、と思うと、どかどかどかと
階子段
(
はしごだん
)
を踏立てて、かかる夜陰を
憚
(
はばか
)
らぬ、音が
静寂間
(
しじま
)
に
湧上
(
わきあが
)
った。
鷭狩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
琴の糸の
奏
(
かな
)
で出すあやは、彼女の空想を一ぱいにふくらませ、どの芽から摘んでいいかわからない想いが
湧上
(
わきあが
)
るのだ。
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
そこへ天覧という大きなことがかぶさって来ては! そこへまた予感という
妖
(
あや
)
しいことが
湧上
(
わきあが
)
っては!
鳴呼
(
ああ
)
、若崎が苦しむのも無理は無い。と思った。
鵞鳥
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
其日の授業だけは無事に済した上で、と丑松は
湧上
(
わきあが
)
るやうな胸の思を
制
(
おさ
)
へ
乍
(
なが
)
ら、三時間目の習字を教へた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
「然うさ、君は唯然う他の耳から理解してるんだ。僕は自分の心に
湧上
(
わきあが
)
つて、自分の口から云ふんだ。」
茗荷畠
(新字旧仮名)
/
真山青果
(著)
▼ もっと見る
むらむらと
湧上
(
わきあが
)
る好奇心が、人の悪い尾行慾に打勝った。それに相手はもう帰ろうとしているのだ。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と
喚
(
わめ
)
く、トタンに、吉原八町、
寂
(
しん
)
として、
廓
(
くるわ
)
の、
地
(
じ
)
の、
真中
(
まんなか
)
の底から、ただ一ツ、カラカラと
湧上
(
わきあが
)
ったような車の音。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
湧上
(
わきあが
)
った笑い声に気がついて見ると、あにはからんやの有様、舞台監督は
狼狽
(
あわて
)
て
緞帳
(
どんちょう
)
をおろしてしまったが——
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
款待振
(
もてなしぶり
)
の
田舎饅頭
(
ゐなかまんぢゆう
)
、その黒砂糖の
餡
(
あん
)
の食ひ慣れたのも、
可懐
(
なつか
)
しい少年時代を思出させる。故郷に帰つたといふ
心地
(
こゝろもち
)
は、何よりも深く斯ういふ場合に、丑松の胸を
衝
(
つ
)
いて
湧上
(
わきあが
)
るのであつた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
大手筋
(
おほてすぢ
)
を
下切
(
おりき
)
つた
濠端
(
ほりばた
)
に——まだ
明果
(
あけは
)
てない、
海
(
うみ
)
のやうな、
山中
(
さんちゆう
)
の
原
(
はら
)
を
背後
(
うしろ
)
にして——
朝虹
(
あさにじ
)
に
鱗
(
うろこ
)
したやうに
一方
(
いつぱう
)
の
谷
(
たに
)
から
湧上
(
わきあが
)
る
向
(
むか
)
ふ
岸
(
ぎし
)
なる
石垣
(
いしがき
)
越
(
ごし
)
に、
其
(
そ
)
の
天守
(
てんしゆ
)
に
向
(
むか
)
つて
喚
(
わめ
)
く……
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
楽しい
追憶
(
おもひで
)
の情は、唐人笛の音を聞くと同時に、丑松の胸の中に
湧上
(
わきあが
)
つて来た。
朦朧
(
おぼろげ
)
ながら丑松は幼いお妻の
俤
(
おもかげ
)
を忘れずに居る。はじめて自分の眼に映つた
少女
(
をとめ
)
の愛らしさを忘れずに居る。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
自動車がハタと留まって、窓を赤く
蔽
(
おお
)
うまで、むくむくと
人数
(
にんず
)
が立ちはだかった時も、
斉
(
ひと
)
しく、躑躅の根から
湧上
(
わきあが
)
ったもののように思われた。五人——その四人は少年である。
灯明之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
空模樣
(
そらもやう
)
は、その
癖
(
くせ
)
、
星
(
ほし
)
が
晃々
(
きら/\
)
して、
澄切
(
すみき
)
つて
居
(
ゐ
)
ながら、
風
(
かぜ
)
は
尋常
(
じんじやう
)
ならず
亂
(
みだ
)
れて、
時々
(
とき/″\
)
むく/\と
古綿
(
ふるわた
)
を
積
(
つ
)
んだ
灰色
(
はひいろ
)
の
雲
(
くも
)
が
湧上
(
わきあが
)
る。とぽつりと
降
(
ふ
)
る。
降
(
ふ
)
るかと
思
(
おも
)
ふと、
颯
(
さつ
)
と
又
(
また
)
暴
(
あら
)
びた
風
(
かぜ
)
で
吹拂
(
ふきはら
)
ふ。
夜釣
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
猫が鳴いた事は、誰の耳にも聞えたが、場合が場合で、一同が言合わせたごとく、その四角な、大きな、
真暗
(
まっくら
)
な穴の、
遥
(
はる
)
かな底は、上野天王寺の森の黒雲が灰色の空に
浸
(
にじ
)
んで
湧上
(
わきあが
)
る、窓を見た。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
方二坪ばかり杉葉の暗い中にむくむくと
湧上
(
わきあが
)
る、清水に浸したのを
突
(
つき
)
にかけてずッと押すと、
心太
(
ところてん
)
の糸は白魚のごときその手に
搦
(
から
)
んだ。皿に
装
(
も
)
って、はいと来る。島野は口も着けず下に置いて
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
謀叛人
(
むほんにん
)
が降つて湧いて、
二
(
に
)
の
丸
(
まる
)
へ
取詰
(
とりつ
)
めたやうな騒動だ。将軍の
住居
(
すまい
)
は大奥まで
湧上
(
わきあが
)
つた。
長袴
(
ながばかま
)
は
辷
(
すべ
)
る、
上下
(
かみしも
)
は
蹴躓
(
けつまず
)
く、
茶坊主
(
ちゃぼうず
)
は転ぶ、女中は泣く。
追取刀
(
おっとりがたな
)
、
槍
(
やり
)
、
薙刀
(
なぎなた
)
。そのうち騎馬で
乗出
(
のりだ
)
した。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
湧
常用漢字
中学
部首:⽔
12画
上
常用漢字
小1
部首:⼀
3画
“湧”で始まる語句
湧
湧出
湧起
湧立
湧然
湧水
湧返
湧井
湧井郷
湧金門