)” の例文
次の日のひるごろ、キャラコさんと茜さんは、長尾ながお峠の頂上に立っていた。眼のしたに、あしが、古鏡のように、にぶく光っている。
キャラコさん:03 蘆と木笛 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ところが、ヴォンブ水浴みずあびをしたり泳ぎまわったりしているガンたちのそばへいっても、だれからも帰れとは言われませんでした。
チタではことに支那人が多く、満洲まんしゅう近い気もち十分じゅうぶんであった。バイカルから一路上って来た汽車は、チタから少し下りになった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
このへんは、富士の五といわれて、湖水の多いところだった。みるとなぎさにちかく、白旗しらはたの宮とがくをあげた小さなほこらがあった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(人ありいはく。琵琶湖はたくといふべし。にあらず。余あんずるに震沢を太湖と称するときは湖といふも妨なし。)一里六丁鳥居本とりゐもと駅。此辺に床の山あり。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
七月下旬のある日、散歩ながら強羅停車場へ出てゆくと三十一日午後七時からあし燈籠とうろう流しを催すという掲示があって、雨天順延と註されていた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
スコットランドのネスのまん中あたりで、長いくびをひょっくり出していて、土地の人に見つけられたというあの太古たいこの怪獣である恐龍! この恐龍を
恐竜艇の冒険 (新字新仮名) / 海野十三(著)
やまくづれたので、當時たうじ大地震おほぢしん觸頭ふれがしらつた場所ばしよの、あまつさ四五日しごにち琅玕らうかんごとあし水面すゐめんかぜもなきになみてると、うはさしたをりであつたから。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いまから數十年前すうじゆうねんぜんのあるとし、スヰスのくにのチュウリッヒみづいままでになくつてそこあらはれました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
おぎの波はいと静かなり。あらしの誘う木葉舟の、島隠れ行く影もほの見ゆ。折しも松の風を払って、たえなる琴の音は二階の一間に起りぬ。新たに来たる離座敷はなれの客は耳をかたぶけつ。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
日本第一の近江おうみのびわは、そのぐるりがほとんど山ですが、霞ガ浦は関東平野かんとうへいやのまんなかにあるので、山らしい山は、七、八はなれた北の方に筑波山つくばさんむらさきの色を見せているだけで
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
船にのせてをわたしたる牡丹ぼたんかな
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
一葉舟ひとはぶねにうけて
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
「ヤッローさん、トーケルンの水がされて、はたけになったら、おまえさんたち野ガモは、来年らいねんは、いったいどうなさるんだね?」
このさきの、五の一つへしずめてありますゆえ、どんな物かはぞんじませぬが、このごろ、あっちこっちの悪者がそれをぎつけて、湖水の底をさぐり合っておりまする。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同時に、もみぢと、きりと、しもと、あのあしと、大空の星とを思ひ浮べて頂きたい。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
山辺の湯といふあり。疝癪の腹痛によし。至てぬるしといふ。〕下の諏訪秋宮に詣り、田間の狭路をすぐ。青稲せいたう脚を掩ひ鬱茂せり。石川せきせんあり。急流琤々さう/\としてに通ず。諏訪湖水面漾々たり。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
このみずうみ景色けしきは、平凡へいぼんといえば平凡ですが、びわのように、夏、ぐるりの山の上に夕立雲ゆうだちぐもがわいたり、冬、銀色の雪がひかったりすると、少しすごいような景色になるのとはちがって、春夏秋冬
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
仲秋や院宣いんぜんをまつのほとり
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
ヴォンブの岸べにえているハシバミのやぶの中で、メスのリスが一ぴきつかまえられて、近所の農家のうかにつれていかれました。
見るまに、二ごうの下あたりからわしにのって、おともなく五のほうへとび去った。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや、嘘のような話です——はるかあしを泳ぐ馬が、ここへ映ったと思ったとしてもよし、軍書、合戦記の昔をそのまま幻にたとしても、どっち道夢見たように、瞬間、馬だと思ったのは事実です。
半島一奇抄 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
山のの風雨雷霆らいてい常ならず
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
「函根の大地獄が火を噴いて、あしが並木にでもなるようなことがあったら、もう一度、焚火たきび秋刀魚さんま乾物ひものいて、往来へ張った網に、一升徳利をぶら下げようと思わねえこともねえんでね。」
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)