)” の例文
被害者轟九蔵氏が、昨夜遅く机にかかって仕事をしている最中に、犯人が背後から抱き付いて、心臓をグッと一突きったらしいんだ
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
警察の調べがとどいて、お槙があげられる、心細いの一念、可愛い憎いで、芳男と一しょにりました、と云いかねない女なのさ。
……あの勢いなら絲満ぐらいりかねないじゃないか。……しかし、案外あれで堅気なのかな。……いや、そんなことはあるまい。
金狼 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
十日ばかり前の晩にこの松山の向うで一人られたんだ、そいつが殺られた時は俺らは、まだこの八幡様へ奉公に来ていなかったんだ。
ばって、用心せえたって、用心のしようもなか。町角を曲るときに、すこし大廻りするくらいのこったい、られたときは、天命くさ。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
いまられた二人を加えて月輪組の十七名に、源十郎、与吉で十九、それにじぶんでちょうど二十と最後におのれを指さしたころ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「こんなにひどい血だから、駕籠の外へもこぼれたでせう。血の跡を逆に辿たどつて行つたら、何處でられたか、一と眼で判りやしませんか」
僕はもう自暴自棄だ……一そ丘子をって僕も……君、わかってくれるだろう、放っておいても、そう長くはない僕の命だ……
「人命ですか。——人命は大部分安全ですが、中にはこのばけものたちと格闘を始めて、られた者もいくらかいるようです」
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
同門の友でござるが、何ら怨みを受くべきいわれもなく、不意にあの堤の上から投げ槍を飛ばしてただ一突きにられました。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「とにかく、危険な存在はらにゃなりませんでな。あなたは、アフガニスタンのダワダールで降りて、『大地軸孔』へゆくつもり……ねえ」
人外魔境:10 地軸二万哩 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「求めて対手にすべきではない。よし、二人がられようと、大事の前の小事じゃ。わしが指図するまで、手出しはならぬ」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
広海屋をれなかったのは、残念だが、これは、いいものが手にはいったわい——と、思って、盗んで来たが、死なせてしまっては仕方がない——
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
そんな死物狂いの格闘が約十五分も続いたと思ったが、ふと気がついたときは、我々十二人の者が残ったっきり、敵は皆られてしまっていたのさ。
ああ、一思いにられたら。うんともすんともいう間はないのである。じいいと深く寸のめりに喰い込まれて、すうっと放たれる。その刹郡の快感。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
初めから此方こっちは斬る気はない、ただ逃げては不味まずい、きっられるとおもったから進んだ所が、先方も中々心得て居る、内心わ/\表面颯々さっさと出て来て
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
もし死んだのが本当なら、られたのだ! 殺られたのだ?——彼女はだんだんとそんな風に思い詰めてきていた。
猟奇の街 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
街の通行人ですら自然にかたまつてゐたのだ、かたまつて居ればられても一人でられない依頼の氣があつた。
巷の子 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
兄さんも死ぬ気なんだ……奴等の中で一番酷い奴を一人二人っつけたら、鉱山主達も少しは目を覚ますだろう”
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
青柳町の女房は——ぜん申したごとくで、これをお夏さんの生命いのちを縮める鬼のように思った。覿面てきめん、その剃刀かみそりったですでな。たとい人違いにもしろでがす。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たった今られたにしては、なにかの叫び声でも聞えそうなものだと思いながら、念のために女の口を割ってみると、口のなかから生々なまなましい小指があらわれた。
半七捕物帳:18 槍突き (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あっしゃ何でも支倉の奴が邪魔者だと云うのでったに違いねいと思って、飛込んで行ったのです。所が野郎落着き払って、逆にあっしに喰ってかゝるのです。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
「なんですって!」男は見る見る顔色を変えて「人殺しですって! いったい、誰がられたんです?」
石塀幽霊 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
「おう……られてる……殺られてる……やっぱり殺られてる! 眉間みけんを撃たれてるぞう!」
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
有「成程……って見ましょうが、の野郎をるのには何か刄物が無ければいけませんな」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
田中君が、った、と思った瞬間に、電燈が消えて、こん度はしばらくつかなかった。
小曲 (新字新仮名) / 橋本五郎(著)
禹徳淳 (安重根を凝視した後)君はどう考えているか知らんが、僕らは決して個人の挌で(低声に)伊藤をっつけるんじゃあないんだ。人数こそ尠いが、この行為は戦争だよ。
どんな博識多才の名士だって、君、九年も戸を出なかったら、京都の事情にも暗くなりますね。あのとおり、上洛じょうらくして三月もたつかたたないうちに、ばっさりられてしまいましたよ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
強盗の沢山居る中を行かなくちゃあならんから首尾しゅびよく其香それを買出して来たところが、果たしてラサ府まで持帰れるかどうか、その間に強盗のために商人あきんどられる者が多いそうです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
また一人った。昼食を済まして、川端を歩いていると、釣師が一人柳の木の下に眠っていた。正午だった。鋤が一丁、傍の馬鈴薯畑の中に、まるで故意に置いてあるような按配に突立っていた。
狂人日記 (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
『女の方をっちゃうと、奴ぁ急に恐くなっちゃいやがったんだな』
わしがとこでは農奴をどえらくられてしまいましたわい。
つつけるといふのは、お前達をころしてしまふことだよ。
小熊秀雄全集-14:童話集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
ところが、ねらあやまたず、最初に、一匹、ったのである。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
「短劒でぐさっと一突き、それでられたのです。」
られたか、芳秋蘭?」と甲谷は思わずいった。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「七造、おくには浅草でられたぞッ」
右門捕物帖:30 闇男 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
すごいな。三人った! 彼奴きゃつだ!)
怪しの者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
なにつ! けふもだれられたつて」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
「あッ られた」
流血船西へ行く (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
落盤でられた
夜明の集会 (新字新仮名) / 波立一(著)
貴方は大学を一番で出た優等生できぶつだ。これからの出世は望み次第だ。第一頭がいいからね。西村さんをった腕前なんざ凄いもんだぜ
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
いやいや、ここを塗直したのは美濃清かも知れねえが、それだけのことで美濃清が里春をったと決めてかかるのはどうだろう。
「いえ、ちょうどいいところに親分さんがいらしって下すって、助かりましてございますよ。なんですか、誰かられたんだそうで——。」
釘抜藤吉捕物覚書:11 影人形 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「こんなにひどい血だから、駕籠の外へもこぼれたでしょう。血の後を逆に辿たどって行ったら、どこでられたか、一と目で判りゃしませんか」
「おお! こりゃ兇器きょうきられてる。みんな傍へ寄っちゃいかん! 大変だ。君、急いで手配をして見張ってたまえ!」
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
殺意が……、この静かな男の面上をおおい包んでいるのを、そのとき誰も気が付くものはなかった。この機会、最後の密林のなかでヤンをろう。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
あたりに見ていた者共も、この奇怪なる盲目の武士の振舞に怖れをなして手出しをすることができない、手出しをすれば擬いの神尾がられる。
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
尺取しゃくとりは釘勘を、また稲吉はお粂をるという約束だった。……それがまだ一人もうまく行ってねえとあっちゃ、親分に合せる顔もねえだろう」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
而もその上、その傷は私が一時の興奮からってしまったあの迪子みちこの傷とソックリで、捻れたような赤い肉の隆起が、蚯蚓みみずのように匍廻はいまわっていた。
古傷 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)