極意ごくい)” の例文
あるいは東洋全面の風波も計るべからず、不虞ふぐに予備するは廟算びょうさん極意ごくいにして、目下の急は武備を拡張して士気を振起するにあり
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
聞もせぬ内其挨拶が成べなやといへば大膳は益々氣後せし樣子に伊賀亮も見兼みかねて大膳殿左程に案じ給ふならば極意ごくいをしゆべし先平石の口上を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ところで数というものも、天地の間に、丁と半とこの二つだけに限ったもので、それを当てるのが即ちバクチの極意ごくいなんでございますねえ
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
薩摩さつま蝋蠋らふそくてら/\とひか色摺いろずり表紙べうし誤魔化ごまくわして手拭紙てふきがみにもならぬ厄介者やくかいもの売附うりつけるが斯道しだう極意ごくい当世たうせい文学者ぶんがくしや心意気こゝろいきぞかし。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
「平次、気の毒だがもう銭が尽きたのか、鍋蓋の極意ごくい、面白かったのう、——さア、この上は一刀両断だ、来いッ」
所為しわざいやしけれども芸術げいじゆつ極意ごくいもこゝにあるべくぞおもはるゝゆゑに、こゝにしるして初学しよがくの人げいすゝむ一端はししめす。
廃物利用の極意ごくいである。甲谷はその話を聞くまでは、激しく宮子と結婚したい希望をもっていた。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
この物語は芸術鑑賞の極意ごくいをよく説明している。傑作というものはわれわれの心琴にかなでる一種の交響楽である。真の芸術は伯牙であり、われわれは竜門の琴である。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
すぐに正体を見あらわすのが秘法の極意ごくいではあるが、関白殿御寵愛の女子を呼び出して、その目の前で悪魔調伏の祈祷を試みるというわけにもいかないので、七十日の間
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
輕しとかこちし三尺二寸、双腕もろうでかけて疊みしはそも何の爲の極意ごくいなりしぞ。祖先の苦勞を忘れて風流三昧にうつゝを拔かす當世武士を尻目にかけし、半歳前の我は今何處いづくにあるぞ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
右に説いた戯曲について言えば、最初の捕人とりての場では、役者が「真影しんかげ極意ごくいをきわめた達人」
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
これ一同よく承まわれ一人いちにんならず三四人を一時いちじに殺すというは剣法の極意ごくいを心得て居らんければ出来ぬことじゃぞ、技倆わざばかりではなく、工夫もせねばならぬ、まして夏の開放あけはな
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
柳生の極意ごくい甲割かぶとわり、死に物狂いでろした太刀が、幸いきまって敵の刀を
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
もしわしに今のお役目が勤まらぬ程なら、柳生流の極意ごくいは死物となるのだ
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宮本武蔵むさしは『五輪書りんのしょ』という本のなかで「見の眼と観の眼」といっておりますが、武蔵によれば、この観の眼によってのみ、剣道の極意ごくいに達することができるのでありまして、彼は剣道において
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
省略に省略を重ねて一塵いちじんをとどめないところにいたることが極意ごくいである。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
わざを自得し、その名が世間に認められ、したい寄る門下も、多くなればなる程、最初の一念を忘却ぼうきゃくし、己が現世の勢力を、押し広め、流派を盛んにして、我慾を張らんとし、秘伝の極意ごくいのと、事々しく
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
春泥はあの小説のうちで、日本人の変装の極意ごくいを説いている。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
去水流居合きょすいりゅういあい鶺鴒剣せきれいけん極意ごくい
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
兵馬の槍は格にった槍、大和の国三輪みわ大明神の社家しゃけ植田丹後守から、鎌宝蔵院の極意ごくいを伝えられていることは知る人もあろう。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
所為しわざいやしけれども芸術げいじゆつ極意ごくいもこゝにあるべくぞおもはるゝゆゑに、こゝにしるして初学しよがくの人げいすゝむ一端はししめす。
「平次、氣の毒だがもう錢が盡きたのか、鍋蓋の極意ごくい、面白かつたのう、——さア、此上は一刀兩斷だ、來いツ」
鏡に対して反射の醜なるをとがめ、瓜に向いて茄子たらざるを怒り、その議論の極意ごくいを尋ぬれば、実物にかかわらずして反射の影を美ならしめ、瓜の蔓にも茄子を生ぜしむるの策ありと
学者安心論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
かわって、飯島平左衞門は凛々りゝしい智者ちえしゃにて諸芸に達し、とりわけ剣術は真影流の極意ごくいきわめました名人にて、おとし四十ぐらい、人並ひとなみすぐれたお方なれども、妾の國というが心得違いの奴にて
「その時に、目に気をつけろ、敵の目をとるのが吹針の極意ごくい
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真の極意ごくいというものを知らずに死ぬのだ、もし、神妙というところがあるなら、それを知って死にたいものだがな
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「どこが悪いか、ひとにかねばわからぬほど、そち自身の愚鈍ぐどんが、まだ気づかぬか。それも見えぬものに、何で、真の剣が観えよう、一刀流の極意ごくいの印可など、沙汰さたのかぎりである、断じて、そちにはまだ許せない」
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それ見ろ、一度この中へ入って済度さいどを受けてみんことにゃ、世の中の人情というものの極意ごくいがわからん」
「道は水にしたがえ」とは山あるきの極意ごくい
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
友達殿はあくまで真面目くさって、それからが極意ごくいなのだ、そうして立合っているうちに、先方が必ず打ち込んで来る。めんとか、籠手こてとか、どうとかいって、打ち込んで来る。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼に、戦の極意ごくいを問う者があると
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
多年武芸をみがきながら、両眼見えずして無心の按摩の得ている極意ごくいに及ばないことを知って、ついに無眼流の一流を発明したのは私ではございません、流祖の反町無格そりまちむかくのことですよ。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
実際、馬鹿面踊ばかめんおどりの極意ごくいに達している道庵の眼から見れば、小金ヶ原の場末から起り出した不統一な、雑駁ざっぱくな、でたらめな、このやからの連中の踊りっぷりなんぞは、見ていられないのかも知れません。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
もっとも私に、臨済りんざいと、普化ふけとの、消息を教えて下すって、臨済録の『勘弁』というところにある『ただ空中にれいの響、隠々いんいんとして去るを聞く』あれが鈴慕の極意ごくいだよ、と教えて下すった方はありました。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)