いわく)” の例文
僕の上海を去らんとするに当り、ジョオンズ、僕の手を握っていわく、「紫禁城は見ざるも可なり、辜鴻銘を見るを忘るること勿れ。」
北京日記抄 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
(短刀をお抜き、さあ、お殺し、殺しように註文がある。切っちゃ不可いけない、十の字を二つ両方へ艸冠くさかんむりとやらにいわくをかいて。)
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
不思議はないが、いわくがある。……ねえ、藤波さん、……一昨日の夜の四ツ(十時)頃、ごらんの通り、この厩が燃上った。
顎十郎捕物帳:07 紙凧 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
知っているんじゃアないかしら? ……ちょっとこいつはあぶないぞ! ……いやらしく妾に付きまとうあいつ! いわくがなけりゃアならないねえ
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
なにかいわくのある女だ、どうやら自分を見知っているようだし、見知っていて避けようとするのは、こちらに気づかれては困る理由があるのだろう。
ゆえに「グロチュス」判然ときいわく、宗教の益は原来げんらい上帝の恩徳を講解するにもっぱらなりといえども、人間の交際においてもまたその功力はなはだ大なりと。
さるを俳諧を捨て詩を語れと云迂遠うえんなるにあらずや、答いわく(略)画の俗を去だにも筆を投じて書を読しむ、いわんや詩と俳諧と何の遠しとする事あらんや(略)
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
責ていわく、一論に勝ほこりて、是を智なりと思へるや。その所詮を見るに、たゞ唇に骨をらせ、意識をあからせたるまで也。いでや隠士の境界は世間の理屈を
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
西村先生、西先生の説をばくしていわく、皮、側、川のごとき三字同訓、その混雑を如何いかんせんと。しかれども文章、談話ともに前後照応あり。かならず一語にしてとどまらず。
平仮名の説 (新字新仮名) / 清水卯三郎(著)
其習は本性の如く人にしみ附きて離れず。老子は自然と説く。これ。孔子いわく述而不作のべてつくらず信而好古しんじていにしえをこのむ窃比我於老彭ひそかにわれをろうほうにひす。かく宣給のたもふときは、孔子の意もまた自然に相近し
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
えきいわく約自ムスブヲイルルニマドヨリス』、まどは明らかなるところなり。たとえば家の内にある人に外より物を言い入るるに、壁越かべごしにいえば聞こえず、まどよりいえば聞こゆ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
拿破崙ナポレオン第一世、あるとき有名の女先生「カムペン」にいいいわく、旧来の教育法は、ほとんどその貴重すべきものなきに似たり。しかして人民をよく訓導するために欠くところのもの、何ぞや。
教育談 (新字新仮名) / 箕作秋坪(著)
先年里人さとびと妻その夫といさかいておおいにいかりしがこの熱湯に身をなげけるに、やがて身はただれさけて、その髪ばかりうかいず。豊後風土記いわく速見はやみ赤湯泉せきとうせん。この温泉も穴郡あなごうりの西北竈門山かまどもんやまあり
別府温泉 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
自手授いわく、此県令山本大膳上梓じょうし蔵五人組牒者、而農政之粋且精、未之者也、汝齎‐帰佐倉、示諸同僚及属官、可以重珍也、予拝伏捧持而退、既而帰佐倉、如
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
……いわく…………しん………………しんまたしん
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
訳者いわく。クルトは歌麿につい写楽しゃらくの研究を出せり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
是ヨリ先キ廿九日両氏ヲ問、時ニ西西郷いわく
坂本竜馬手帳摘要 (新字旧仮名) / 坂本竜馬(著)
先生のいわく——
「珊瑚集」解説 (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)
「ははあ、史学。君もドクタア・ジョンソンに軽蔑される一人ですね。ジョンソンいわく、歴史家は almanac-maker にすぎない。」
西郷隆盛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「うん、そう云やアその通りだが、そこにはいわくがあるんだろう。豚に真珠という格言もあらあ、せっかくの宝も持手が悪いと、ねっから役に立たねえものさ」
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
自然に化して俗を離るるの捷径しょうけいありや、こたえていわく、詩を語るべし、子もとより詩をよくす、他に求むべからず、波疑敢問はうたがってあえてとう、それ詩と俳諧といささかそのを異にす
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
○教会の説諭にいわく、およそ人民、該撒カエサル〈(シーサル)〉の物はみな該撒に、上帝の物はみな上帝に帰すべし、と。また曰、世の官職は上帝の設くるところなり、と。
あるいはいわくなんじこの編をのぶる、何ぞ平仮名をもってせざる。曰、唯々否々いいひひ、わが平仮名の説のごとき、ただ後進の人に便するのみ。この編のごとき、ひとえに学者に謀るものなり。
平仮名の説 (新字新仮名) / 清水卯三郎(著)
「見せな。」と渠を引寄せて頸環くびわに結べる紙片かみきれを取り、灯影ほかげに透かして、読めばいわく
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いわく、すべて宗教の事よりたんを開き、あるいは宗教の事に托して起したる戦争は、左の四件をあらわす。
一、高等学校生某いわく、私は今度の試験に落第しましたから、当分の内発句ほっくうたいもやめました。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
これか。これは藤沢の制服なんだ。彼いわく、是非僕の制服を借りてくれ給え、そうすると僕はそれを口実に、親爺おやじのタキシイドを借りるから。——そこでやむを得ず、僕がこれを
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「御同様は気がねえぜ、おめえの方にもいわくがあるかい。」
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
然れども世界に誇るべき二千年来の家族主義は土崩瓦解どほうがかいするをまぬかれざるなり。語にいわく、其罪をにくんで其人を悪まずと。吾人はもとより忍野氏にこくならんとするものにあらざるなり。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
虚子きょしいわく、今まで久しく写生の話も聞くし、配合といふ事も耳にせぬではなかつたが、この頃話を聴いてゐる内に始めて配合といふ事に気が附いて、写生の味を解したやうに思はれる。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
僕、この事を中野君に話せば、中野君、一息に玫瑰露まいかいろを飲み干し、さておもむろに語っていわく
北京日記抄 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ちなみに問ふ。狗子くし仏性ぶっしょうありや。いわく、苦。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
だい/\を蜜柑みかんと金柑のわろういわく 同
古池の句の弁 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)