明朝あした)” の例文
けど、その晩はもう遅くもあるし、さアと云って出かけることもならねえもんだから、明朝あした仕事を休んで一番で立って行った。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その晩二人は寝床へ入ってから、明朝あした自分達を生んでくれたもとの母さんを尋ねに三里彼方あなたの、隣村の杉の木の森をたずねに出る約束をしたのです。
迷い路 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はなるゝはかなしけれど是も修行しゆぎやうなれば決して御案おあんじ下さるなとて空々敷そら/″\しく辭儀じぎをなし一先感應院へ歸り下男げなん善助に向ひ明朝あした早く出立すれば何卒握飯にぎりめし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「いや、と身にけがれがあつて、不精ぶしょうに、猫の面洗つらあらひとつた。チヨイ/\とな。はゝゝゝ明朝あしたは天気だ。まあ休め。」
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「しばらくでしたのね……とうとう明朝あしたになりましてよ。木村に持って行くものは、一緒にお持ちになって?……そう」
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
まして、これから寝るまでの時間、明朝あした起きてからの幾時間を考えると、倭文子の心は憂欝になってしまうのだった。
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ああ可哀相な事をしてしまった。全く私が悪党を云うた為に民子は死んだ。お前はネ、明朝あしたは夜が明けたら直ぐに往ってよオく民子の墓に参ってくれ。
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
この壺の秘める密図の指示するところにしたがって、東西南北いずれにせよ、どっちみち明朝あした早く江戸を発足するのだから、もう当分、萩乃に会えない。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ええ那様そんな事なら訳はないです。それじゃ明朝あしたかく行って、しらべてみて直しますが、そう云う事は長念寺の和尚おしょうところへも行って、次手ついでにおはなしなすったらいでしよう。
□本居士 (新字新仮名) / 本田親二(著)
「かき廻しちゃ何にもならない。下水を念入りに捜すのは明朝あしたの事にして、塀の中を見るんだ」
「で、何日いつ御帰でありますか。明朝あした一所に御発足おたちにはなりませんか。此地こつちにさう長く居なければならんと云ふ次第ではないのでせう、そんなら一所にお立ちなすつたらどうであります」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「それは人の自由を拘束こうそくするというもの。私はそういう決答は出来ない。」「そんならどうにか決答しろ。」「明朝あしたまで思案をさせて貰いたい。」「それはいけない。眠くても決答しろ」
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「ハア、あの五週間の欠勤届の期限が最早きれたから何とか為さらないとけないッて、平岡さんが、是非今日私に貴姉あなたのことを聞いて呉れろッて、……明朝あしたは私が午前出だもんだから……」
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
夜更けて帰って来て、なにしろ家がせまいから、明朝あしたまた早くゆくといってくつろいでいた。その翌日いったらもう死者は家にいなかった。落魄らくはく御直参連一党がつらなって帰って来てつぶやいた。
明朝あしたは港の方へでも出かけて行かう。
定本青猫:01 定本青猫 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
「もう遅い、明朝あしたのことにせい」
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
明朝あした目を覚ますと、お作はもう起きていた。枕頭まくらもとには綺麗に火入れの灰をならした莨盆と、折り目のくずれぬ新聞が置いてあった。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
(おお、諏訪すわの湖のあたりまで馬市へ出しやすのじゃ、これから明朝あしたお坊様が歩行あるかっしゃる山路を越えて行きやす。)
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小説的かも知れんけれど、八犬伝はつけんでん浜路はまじだ、信乃しの明朝あしたは立つて了ふと云ふので、親の目を忍んで夜更よふけひに来る、あの情合じやうあひでなければならない。いや、妙だ! 自分の身の上も信乃に似てゐる。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「何だ馬鹿馬鹿しい、十五かそこらの小僧の癖に、女のことなどばかりくよくよ考えて……そうだそうだ、明朝あしたは早速学校へ行こう。民子は可哀相だけれど……もう考えまい、考えたって仕方がない、学校学校……」
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
明朝あした目がさめると、昨夜ゆうべ張り詰めていたような笹村の心持が、まただらけたようになっていた。頭も一層重苦しくよどんでいた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
(おゝ、諏訪すはみづうみあたりまで馬市うまいちしやすのぢや、これから明朝あした御坊様おばうさま歩行あるかつしやる山路やまみちえてきやす。)
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
飯をすますと直ぐ、お島が通りの方にあるミシンの会社で一台註文して来た機械が、明朝あした届いたとき、二人はやっと仕事に就くことができた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「母に話したら、是非お目にかゝるから此方へおつれ申せと言つたんだけれど、僕は今夜はもう遅いから明朝あしたにしたら可いだらうと言つておいたよ。」
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
明朝あした海岸の町の方へ出て行つたのは、お昼頃であつた。勿論母屋おもやの方へつれて行かれて、二階の座敷も見せられたし、五十ばかりの母親にも紹介された。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
夕方裏の畑へ出て、明朝あしたのおつゆの実にする菜葉なっぱをつみこんで入って来ると、今し方帰ったばかりの作が、台所の次の間で、晩飯の膳に向おうとしていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「いや、いづれ明朝あした僕が紹介しよう。それに親父は浦賀の方の親類へ行つてゐるんだ。多分二三日は帰らないだらうと思ふ。当分ゐたつて可いんだらう。」
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
母親は泣き立てる乳呑ちのを抱えて、お庄の明朝あしたの髪をったり、下の井戸端いどばた襁褓むつきを洗ったりした。雨の降る日は部屋でそれをさなければならなかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その晩そこに泊った浅井が、明朝あした目をましたのは大分遅くであった。その日もじりじり暑かった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「被服の下請なんか、割があわないからもう断然止めだ。そして明朝あしたから註文取におあるきなさい」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「どうせ彼奴あいつは帰って来る気遣いないんだから、明朝あしたからみんなかわり番こに飯をたくんだぞ。」
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
浅井は明朝あした結納を持って行くことになっている、その世話焼きの男と、前祝いに酒を飲んでいた。結婚の調度の並んだ、明るい部屋のなかには、色っぽい空気が漂っていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「それにもうしばらく兄の容態も見たいと思っているんだ。今日いいかと思うと、明朝あしたはまた変わるといったふうだから、東京へ帰って、また来るようなことになっても困る」
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「それじゃ私は先へ行っておりますで、明朝あしたはどうでも来て下さるだろうね。」母親は行李こうりを一つまたの下へはさんで、車夫が梶棒かじぼうを持ち上げたときに、咽喉のどふさがりそうな声を出して言うと
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
明朝あしたうららかな、いい天気であった。空には紙鳶たこのうなりなどが聞かれた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
うなされていたような心持で、明朝あした目のさめたのは、七時ごろであった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
明朝あした蟹子かにこ持って来るのよ。きっとよ。私のうち知っているわね。」
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
均平はそれを辞し、病院は明朝あしたにすることにした。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)