かへ)” の例文
あと四十円は莫斯科モスコオで一等の切符とかへる時に出すのだと云ふ事である。男の席はあると云ふので斎藤氏は二等車の寝台券を買つた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
背広せびろかるいセルのひと衣にぬぎかへて、青木さんがおくさんと一しよにつましやかなばんさんをましたのはもう八ちかくであつた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
かれは、まだ羞恥はぢ恐怖おそれとが全身ぜんしん支配しはいしてるおつぎをとらへてたゞ凝然ぢつうごかさないまでには幾度いくたびかへ苦心くしんした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
まあ僕の昔の事を書く時に、どんな眼で昔を見てゐるか、云ひかへれば僕の作品の中で昔がどんな役割を勤めてゐるか、そんな事を話して見ようかと思ふ。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
浮川竹うきかはたけとやらへおしづめ下されいさゝかにてもお金にかへらるゝ物ならば此身は何樣いかやう艱難かんなんを致し候も更々さら/\いとひ申さねば何卒此身を遊女いうぢよに御賣成うりなされ其お金にて御年貢ねんぐをさめ方を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
三四郎が馬尻ばけつの水をかへに台所へ行つたあとで、美禰子がハタキと箒を持つて二階へのぼつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ようするに、寫眞しやしんの本れうは、興味けうみはさういふ意味いみ記録きろくを、いひかへれば、過去くわこ再現さいげんして、おもひ出のたのしさや回想くわいそうの懷かしさをあたへるところにある。
與吉よきち近所きんじよ子供こども田圃たんぼた。あたゝかいにはかれ單衣ひとへかへて、たもとうしろでぎつとしばつたりしりをぐるつと端折はしよつたりしてもら待遠まちどほねてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さらさんよりいつそ江戸の淺草にて水茶屋渡世の甚兵衞は從弟いとこえんもある事故彼を便たよりて行ならば又よき手段しゆだんも有べきやと心の内に思ひを定め賣殘したる家財かざいを集め金にかへつゝ當歳の子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
言ひかへれば前印象派乃至ないしこう印象派の芸術には僕等と共鳴する世界の多いにかゝはらず、なほ越えがたい距離のあるのを覚えて、ロダンの彫刻にしても、セザンヌ、ゴツホ、マチス諸家の絵にしても
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
しろ菅笠すげがさあめさらされゝばそれでやぶれてしまふので、なつのはじめには屹度きつと何處どこでもあたらしいのにかへられるのである。おつぎは勘次かんじかれてむぎ畦間うねまたがやした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)