つゝ)” の例文
新字:
あいちやんはふたゝ福鼠ふくねずみはらたせまいと、きはめてつゝましやかに、『わたしにはわかりませんわ。何所どこからみん糖蜜たうみつんでたのでせう?』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
おや、おや、その代り、いやなトきが附いて居る。その代り『伉儷かうれい得難かるべし、縁談すべて望なし、つゝしむべし、愼しむべし』
つゝしみのない女の輕はずみな行動ほど、われ/\のやうな男の心を誘惑するものはありません。御手紙であの邊の景色を思出しました。
畦道 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
彼女の性質に一つの美徳が存在するといふことすら確かでなく、彼女の心にも樣子にも、何一つつゝしみ深さも仁愛も高潔さも、洗煉された點も見えなかつた。
つゝしみ居ければ主人五兵衞は此久兵衞が年頃といひ萬端ばんたん如才じよさいのなき者ゆゑ大いに心にかな好者よきもの
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
無地むぢかとおもこん透綾すきやに、緋縮緬ひぢりめん長襦袢ながじゆばん小柳繻子こやなぎじゆすおびしめて、つまかたきまでつゝましきにも、姿すがたのなよやかさちまさり、打微笑うちほゝゑみたる口紅くちべにさへ、常夏とこなつはな化身けしんたるかな。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
神樣かみさままをげるかたは、たふとくもありまた、おそろしくもあるかたで、われ/\の祖先そせんにおつしやつた言葉ことばは、祖先そせんひとたちがおそつゝしんでうけたまはり、實行じつこうしなければならない命令めいれいでありました。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
牡丹色の薔薇ばらの花、仰山ぎやうさんに植木のある花園はなぞのつゝましやかな誇、牡丹色の薔薇ばらの花、風がおまへのはなびらあふるのは、ほんの偶然であるのだが、それでもおまへは不滿でないらしい、僞善ぎぜんの花よ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
「解りませんよ。——それとも本郷は暗劍殺あんけんさつに當るかな——この方角はよろづの事惡し、火難盜難つゝしむべし——と三世相に書いてある」
銭形平次捕物控:124 唖娘 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
知る者もまれなりと雖もまた不開化ふかいくわなどといふ者もあらんかあゝつゝしむべしといふくちまたつゝしむべし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
總てが終ると、ムア・ハウスは、家の外が、この季節に、冬の荒廢とすさんだ陰氣さの見本であると同じく、家の内は、明るいつゝましい快さの完全な典型であると、私は思つた。
『けど、もつと分明はつきりへとつたつてそれは無理むりよ』あいちやんはきはめてつゝましやかにこたへて、『でも、わたしはじめッから自分じぶん自分じぶんわからないんですもの、幾度いくどおほきくなつたりちひさくなつたりしたんで、 ...
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
派手はでこゑながら、姿すがたばかりはつゝましさうに
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
したり、見ちや居られませんでしたよ。妾奉公する身だつて、女には違ひないでせう。女には女のつゝしみといふものがなきや——ね、親分
も見遁しくれ候間此大恩は忘れまじと其以後は急度きつとつゝしみまかあり候然るに私しを生置いけおいては妻の事心元無く思ひてやいはゆる犬のくそにて敵きと申如くありもせぬ事を申上長庵を罪科ざいくわおといれおのれが女房を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あなたの生眞面目きまじめさや、思慮深さや、つゝましさの所爲せゐで、あなたは祕密な話の聽手になるやうに造られてゐるのです。その上、私にはどういふ種類の心に、自分の心を觸れさせてゐるかゞ分るんです。
入口から見透しの六疊ににじり入つて、つゝましく挨拶した紀久榮は、四十二、三といふ年配としよりは、一世代も若く見える、非凡の女でした。
お菊は半元服の美しい眉をあげてつゝしみ深く床の上に起き直りました。肩から首へ繃帶ほうたいをしてをりますが、若々しさに張り切つた、いかにも良い嫁です。
一と晩の夜露にさらされて、らふ人形のやうに蒼白く引締つて見えるのは、言ひやうもない痛々しさで、さすがに無駄口の多い八五郎も、つゝしみつゝしんで何や彼と世話をしてをります。
娘はさう言つて、後ろにつゝましくひかへたお靜の方を、訴へるやうに見やるのでした。
平次はいつものつゝしみ深い熊度で——その癖恐ろしく念入りに調べましたが、顏の表情など至つて穩かで、なんの苦悶くもんの跡も留めず、傷は左の乳の下を一と突きだけ、いかにもあざやかな手際です。
平次は後ろにつゝましく覗いて居るお玉を顧みました。
この時伊之吉は、つゝましく口を挾んで