おそろし)” の例文
とお前様まへさまかせまをはなしは、これからぢやが、最初さいしよまをとほみちがいかにもわるい、宛然まるでひとかよひさうでないうへに、おそろしいのは、へびで。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
悪人を探す為に善人を迄も疑い、見ぬ振をしてぬす、聞かぬ様をして偸みきく、人を見れば盗坊どろぼうと思えちょうおそろしき誡めを職業の虎の巻とし果は疑うにとまらで
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
と、無暗むやみおそろしくてならぬので。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
おそろし山蛭やまびる神代かみよいにしへから此処こゝたむろをしてひとるのをちつけて、ながひさしいあひだくらゐ何斛なんごくかのふと
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と、無暗むやみおそろしくてならぬので。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
とずっと出すと、びったり額を伏せて、しっかりと膝をつかんだが、苦痛を堪えるおそろしい力が入って、しびれるばかり。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かつしやい、孤家ひとつや婦人をんなといふは、もとな、これもわしにはなにかのえんがあつた、あのおそろし魔処ましよはいらうといふ岐道そばみちみづあふれた往来わうらいで、百姓ひやくしやうをしへて
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
中に一人いちにん真先まっさきかけて、壁の穴をふさいで居たのが、此の時、掻潜かいくぐるやうにして、おそろしい顔を出した、めんおおきさ、はりなかばおおうて、血のすじ走るきんまなこにハタと桂木をめつけた。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
兎角とかく分別ふんべつだ出ぬ前、おそろしい地震だと思つて、真蒼まっさおになつて、むねを離れてのがれようとする。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
何でも石滝って処を奥へ蹈込ふみこむと、ちょうど今時分咲いてる花で、きっとあるんだそうだけれど、そこがまた大変な処でね、天窓あたまが石のような猿の神様が住んでるの、おそろしおおきわしが居るの
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つい酒の上じゃ惚気のろけを云った事もあるそうですが、根が悪人ではないのですから、をなくすというおそろしい相談に震い上って、その位なら、御身分をお棄てなすって、一所にげておくんなさい。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「はい、はじめてうたいました時は、みんなが、わっと笑うやら、中にはおそろしこわいと云う人もござんす。なぜ言うと、五日ばかり、あの私がな、天狗様に誘い出された、と風説うわさしたのでござんすから。」
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)