嫡男ちゃくなん)” の例文
大和国神戸かんべしょう小柳生城こやぎゅうじょうあるじ、柳生美作守家厳みまさかのかみいえとし嫡男ちゃくなんとして生れ、産れ落ちた嬰児えいじの時から、体はあまり丈夫なほうでなかった。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上野国の御家人薗田太郎成家は秀郷ひでさと将軍九代の孫、薗田次郎成基が嫡男ちゃくなんであるが、武勇の道に携わり、射獦しゃかつを事として罪悪をほしいままにしていたが
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「神保帯刀様ご嫡男ちゃくなん、同姓市之丞様に物申す。いざ尋常にご覚悟あって、その御手おんてそびらにお廻わしあれや!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
嫡男ちゃくなんの正広と云う人があるが、その人とは分けても仲が悪くて、よく喧嘩けんかをすること、光代自身は見ていないが、激して来ると兄貴を殴ったりもしかねないと云う話であること
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
かの国にて世を終らんかなどの事をさえ打ち明くるに至りければ、妾もまたその情に撃たれつつ、御身おんみは妾と異なりて、財産家の嫡男ちゃくなんに生れ給い、一度ひとたび洋行してミシガン大学の業を
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
それにしてもみぎ所謂いわゆる小櫻姫こざくらひめ』とは何人なんびとか? 本文ほんぶんをおみになればわかとほり、この女性じょせいこそは相州そうしゅう三浦みうら新井城主あらいじょうしゅ嫡男ちゃくなん荒次郎あらじろう義光よしみつ奥方おくがたとして相当そうとうられているひとなのであります。
「それはいけない。私はまだ青くさい一介の若輩だし、貴公はいやしくも平安の名家吉岡拳法の嫡男ちゃくなん、門人数百を持つ一流の御宗家だ」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いやいやそれは信じられぬ。いかに暴虐の殿であっても、鳰鳥などという怪しい女子おなごに魂を奪われる殿であっても、お家の忠臣花村家の、その嫡男ちゃくなんそれがしの、愛するそなたを
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
中御門なかみかどの北、堀川の東一丁の所にあった時平の居館の名で、当時時平は故関白かんぱく太政だじょう大臣基経もとつね、———昭宣公しょうせんこう嫡男ちゃくなんとして、時のみかど醍醐だいご帝の皇后穏子おんしの兄として、権威並びない地位にあった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
嫡男ちゃくなんとして役所に届け出でられぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
それは、亡き楠木河内守正成の嫡男ちゃくなん正行まさつらだった。先帝のと洩れ聞いて、正行は一族の和田和泉守らとほか数百騎をひきつれてせ参じ
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
嫡男ちゃくなん新三郎水没し、次男弥蔵出藍しゅつらんほまれあり、江州佐和山石田三成に仕え、乱後身を避け高野山に登り、後吉野のそばに住す。清洲少将忠吉公、その名を聞いてこれを召す。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こゝで此の二人が噂をしている「そちの大納言」とその北の方と云うのは如何いかなる人であるか、と云うのに、大納言は藤原国経くにつねのことで、閑院左大臣冬嗣ふゆつぐの孫に当り、権中納言長良ながら嫡男ちゃくなんである。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そして、東と西は、加茂の河辺から山の尾根までを抱き、小松谷の山ふところには、嫡男ちゃくなんの重盛が邸宅を新築し、小松殿とよばれてもいる。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、義元は、甲斐の信玄の嫡男ちゃくなん太郎義信たろうよしのぶに、自身の息女むすめを嫁がせ、信玄の息女を、北条家に嫁がせることを、かねてから策していたのであった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蒲焼屋の男が、とたんに、ぺたッと坐ってしまったのは、もしやこの人が、上野介の嫡男ちゃくなん左兵衛佐さひょうえのすけではあるまいか、とすぐ感じたからであった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中の弟の二十二歳になるほうは、終始、主君の嫡男ちゃくなん太郎信勝の影身にそい、この若い主従も、同じ頃、討死していた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いかに自分の嫡男ちゃくなんであろうと、こういう暗愚を見せられたら、家臣たちもおのずと氏真を軽んじるであろう。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひとたび、山を追われて、今の修羅しゅらの世に出て、あの雄叫おたけびを聞いたなら、おそらく、彼は、源義朝よしとも嫡男ちゃくなんたちと共に、業火ごうかの下に、鉄弓てっきゅうもしごく男となろう
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
気品においては、源家の正統、鎮守府将軍義家ちんじゅふしょうぐんよしいえ嫡男ちゃくなん対馬守義親つしまのかみよしちかの息女、云い分のあろうわけはない。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鎌倉には、妻の登子とうこを残していた。また、新田軍のうちには、嫡男ちゃくなんの千寿王を、あえて参陣させてある。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
城主の勝入をはじめ、嫡男ちゃくなん紀伊守きいのかみむこ森武蔵守もりむさしのかみまで、一時に三名の柱が、長久手に戦死して、のこるは、若い三左衛門輝政てるまさと、まだ十五歳の長吉ながよしだけとなった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
残してきた最愛の嫡男ちゃくなんだけがひたすら彼の心配であった。——年を越えつつ尊氏は備前から京都へ急いで引っ返した。——だが途中で、もうその義詮は父に出会った。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
信長はまた、嫡男ちゃくなんの信忠に、信玄の第六女をめとって、両国のくさびをゆるめまいと努めた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わが病の一つは、これで除かれたというものだ。彼の嫡男ちゃくなん孫策はまだ幼年だし……」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かりに五十日や百日おやすみでも、決して時務に遅滞ちたいはいたしませぬ、諸大名も案じています、どうぞ充分御静養を取られますようにと、さすがもう世嗣よつぎ嫡男ちゃくなんらしく自負して言った。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遮那王といえば、源家の嫡男ちゃくなん前左馬頭義朝さきのさまのかみよしともの末子で、幼名おさななを、牛若といった御曹子おんぞうしのことだ。常磐ときわとよぶ母の乳ぶさからはなされて、鞍馬寺へ追い上げられてから、もう、十年の余になる。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かくて教頭王進の母子おやこは、そのまま史家村に居着いてしまった。そして史家しけ嫡男ちゃくなん九紋龍一人のために、かつての禁軍八十万の師範王進が、日々手をとって武芸十八般にわたる秘技を指南した。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「よい子持ちだの。——嫡男ちゃくなんどもか。みんな前へ出ろ。わしが尊氏だ」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御幼少なお嫡男ちゃくなん、お三人のひいさまたちのお行く末については、藤吉郎、身にかえても、お護りいたす所存しょぞんにございますれば……畏れながら、それについては、いささかのお心残りも遊ばさぬように
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ことし十二歳になった小六の嫡男ちゃくなん亀一は、父の声を聞くと
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
嫡男ちゃくなんの菊池武重を、肥後の守護職、けん、左京大夫に。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長政は、黒田如水じょすい嫡男ちゃくなんであった。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
嫡男ちゃくなん、千寿王ぎみ
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)