婚姻こんいん)” の例文
婚姻こんいんと死とはわずかに邦語を談ずるを得るの稚児ちじより、墳墓に近づくまで、人間の常に口にする所なりとは、エマルソンの至言なり。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
婚姻こんいんは秋山十五ヶ村をかぎりとして他所にもとめず。婦人ふじん他所にて男をもてば親族しんぞく不通ふつうしてふたゝ面会めんくわいせざるを、むかしよりのならはせとす。
すなわちそのみちとはなし、今の学校を次第しだいさかんにすることと、上下士族相互あいたがい婚姻こんいんするの風をすすむることと、この二箇条のみ。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
れだから彼等かれら婚姻こんいん當日たうじつにも仕事しごと割合わりあひにしてはあまりに多人數たにんずぎるので、ひと仕事しごとあつまつては屈託くつたくない容子ようすをして饒舌しやべるのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
のせられ恥を世の中へさらしてゐても大事ないかといかりの言葉ことばも無理ならず此方も是を婚姻こんいん邪魔じやまなす者の所爲しわざと知ねば彼奸計かのかんけい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
床の間に掛けた「郭子儀」の幅に、不結果な婚姻こんいんの罪をなんで着せたか——明治中期は封建的遺産を多分に保つてゐた。
「郭子儀」異変 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
そのほか更に古いところでは大台ヶ原の山中にある五鬼継ごきつぐの部落、———土地の人はあれは鬼の子孫だと云って、決してその部落とは婚姻こんいんを結ばず
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
やはりこの二つは婚姻こんいん育児の条件ではあるが、鳥によりまたその境遇によって、幾分かいずれかを軽く重く、見なければならぬ事情があったものと思われる。
そして立ちどころに婚姻こんいんが成立し、長男の私の父がいなくなっておるのにもかかわらず、その男を養子としてではなく、正式にその男のもとに私の叔母をやった。
若し相愛あいあいしていなければ、婚姻こんいんの相談が有った時、お勢が戯談じょうだん托辞かこつけてそれとなく文三のはらを探る筈もなし、また叔母と悶着もんちゃくをした時、他人同前どうぜんの文三を庇護かばって真実の母親と抗論する理由いわれもない。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
とげたし然どもかくしてやりたる病氣が一日二日の中に起らば折角せつかくなしゝ婚姻こんいん破談はだんになりてたからの山へ入ながらにして手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
兩性りやうせいしか他人たにんりてひとつに婚姻こんいん事實じじつ聯想れんさうすることから彼等かれらこゝろ微妙びめう刺戟しげきされる。彼等かれらすべてはことごと異性いせいまたらんとしてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
中津の旧藩にて、上下の士族が互に婚姻こんいんよしみつうぜざりしは、藩士社会の一大欠典にして、その弊害へいがいはほとんど人心の底に根拠して動かすべからざるもののごとし。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ふゆひくうてしづんだ。舊暦きうれきくれちかつて婚姻こんいんおほおこなはれる季節きせつた。まち建具師たてぐし店先みせさきゑられた簟笥たんす長持ながもちから疎末そまつ金具かなぐひかるのをるやうにつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
おひ婚姻こんいん破談はだんに成しは庄兵衞が日頃よりして我戀わがこひかなはぬことを無念に思ひ兄元益を彼方へつかは癲癇てんかん病と言せしより事の茲には及べるなりと深くも遺恨ゐこんに思ひつゝさてこそ庄兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
開闢かいびゃく以来今日に至るまで世界中の事相じそうるに、各種の人民相分あいわかれて一群を成し、その一群中に言語文字を共にし、歴史口碑こうひを共にし、婚姻こんいん相通じ、交際相親しみ、飲食衣服の物
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)