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嚔
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くさめ
ふりがな文庫
“
嚔
(
くさめ
)” の例文
だが、どこ風吹くかの魯達は、この
森厳
(
しんげん
)
さと山冷えに、
嚔
(
くさめ
)
でも覚えてきたか、しきりと鼻に
皺
(
しわ
)
をよせて、鼻をもぐもぐさせていた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
或時書生さんがお勝手まで
駈
(
か
)
けて来て、真赤な顔をして、
頻
(
しき
)
りに
嚔
(
くさめ
)
をして苦しそうなので、「どうなすったの」と聞きましたら
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
泥溜
(
どろだめ
)
の中で棺桶が
嚔
(
くさめ
)
をする。——一枚の板が揺ぶられる。頑丈な釘がうちつけてあるのを恐しい音をさせて
軋
(
きし
)
ませる。……
鴉片
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
辰男は幾度も
嚔
(
くさめ
)
をした。寒さに
堪
(
た
)
えられなくなるし、妹の
愚
(
おろか
)
な言草に興も起らないので、言葉の切れ目にその側を離れて、自分の寝床へ入った。
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
嚔
(
くさめ
)
が出た。またクッシャン。つづけ様に嚔をした信吉があわててしっとり冷えたシャツの上へ上衣をひっかけていると
ズラかった信吉
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
▼ もっと見る
そして折からの凩に
嚔
(
くさめ
)
をしたり苦笑したりする破口栓君の心持に同情する。私は三君とりどりの態度に動かされた。私もまた私の一部を暴露したい。
雑信(二)
(新字新仮名)
/
種田山頭火
(著)
男の目に女子が天性の欠点ありありと見えすいて来るは正にこの時ぞかし。初は
嚔
(
くさめ
)
一ツも男の見る前には遠慮せしを、髪かたち身じまひは勿論なり。
桑中喜語
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
ときどき軽く
唸
(
うな
)
る。またときとしては
軋
(
きし
)
る。あちらこちら、原では、
丈
(
せい
)
の高い草が、不安らしく揺れる。と、とつぜん、石ころにぶつかって、
嚔
(
くさめ
)
をする。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
どうひっぱたいて見たって歌どころか
嚔
(
くさめ
)
一つする訳はねえ。こちとらはただ巡査がすッ飛んで来て解散させるのを
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
中で
嚔
(
くさめ
)
をする娘がゐて、それが餘りに突然だつたので、みんなは僅かに可笑しくなつて笑つただけ、あとは元どほりの寫眞の顏のやうにまじめくさつてゐる。
はるあはれ
(旧字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
書物に
嚔
(
くさめ
)
す可らず、小供や猫に書物を投げつける可らず(如何に騒々しくとも)などと云う事も書いてある。
愛書癖
(新字新仮名)
/
辰野隆
(著)
百日紅
(
さるすべり
)
の
燃残
(
もえのこ
)
りを、
真向
(
まっこう
)
に仰いで、日影を吸うと、出損なった
嚔
(
くさめ
)
をウッと吸って、扇子の隙なく袖を
圧
(
おさ
)
える。
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
爺「あんた、此の馬は実に珍らしい馬でね、えら一つ起して、
嚔
(
くさめ
)
一つした事がねえ、どんなに引いて引まわしても、足に
血溜
(
ちだまり
)
一つ出来る馬じゃアねえ、見なんせえ」
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
そして広島
杉木小路
(
すぎのきこうぢ
)
の父の家に謹慎させられてゐた山陽は、此
夕
(
ゆふべ
)
嚔
(
くさめ
)
を幾つかしただらうとさへ思つた。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
そして鼻や口のあたりをムズムズさせていましたが、大きい
嚔
(
くさめ
)
を一つするとパッと眼を開きました。
崩れる鬼影
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
五月の末だったが、その日はひどく冷気で、空気がじとじとしており、鼻や気管の悪い彼はいつもの癖でつい
嚔
(
くさめ
)
をしたり、ナプキンの紙で
水洟
(
みずばな
)
をふいたりしながら、パンを
毮
(
むし
)
っていた。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
これではまた皆
風邪
(
かぜ
)
にやられるどころか、定雄自身もう続けさまに
嚔
(
くさめ
)
が出て来た。
比叡
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
千久馬がわざと大きな
嚔
(
くさめ
)
をしたら、土人たちは顔を見合はせてにやにや笑つた。
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
まず課長殿の
身態
(
みぶり
)
声音
(
こわいろ
)
はおろか、
咳払
(
せきばら
)
いの様子から
嚔
(
くさめ
)
の仕方まで
真似
(
まね
)
たものだ。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
今まで三味線を
弾
(
ひ
)
いていた人が、急に手を止めたと思うと、大きな
嚔
(
くさめ
)
をした。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
すると凡太郎は、しまいには、しきりに
嚔
(
くさめ
)
をするのであつた。
憂鬱な家
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
哲学も科学も寒き
嚔
(
くさめ
)
哉(昭和八年二月、渋柿)
柿の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
つづけさまに
嚔
(
くさめ
)
して威儀くづれけり
五百句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
「四遍も見ると、
嚔
(
くさめ
)
が出る」
銭形平次捕物控:113 北冥の魚
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「
咳
(
せき
)
や
嚔
(
くさめ
)
はしない方が宜い」
変人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
嚔
(
くさめ
)
ひとつ
雪
(新字旧仮名)
/
高祖保
(著)
誰か、大きな
嚔
(
くさめ
)
をした者がある。
風邪
(
かぜ
)
をひいた兵が、火縄の臭気に鼻をつかれて思わず放ったのであろうが、そんな味方の中の声一つでも
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
辰男は幾度も
嚔
(
くさめ
)
をした。寒さに堪へられなくなるし、妹の愚かな言ひ草に興も起らないので、言葉の切れ目にその側を離れて、自分の寢床へ入つた。
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
コン吉がこの
朝暁
(
あさあけ
)
に、風邪をひいた
縞馬
(
しまうま
)
のように、しきりに
嚔
(
くさめ
)
をしながら、気の早い海水浴を決死の覚悟で企てようとするゆえんは、この島の鳥貝なるものは
ノンシャラン道中記:01 八人の小悪魔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
心配なのは、
嚔
(
くさめ
)
と
咳
(
せき
)
をすることだ。彼は息をころす。そして、目をあげると、戸の上の小さな窓から、星が三つ四つ見える。
冴
(
さ
)
え渡った
煌
(
きらめ
)
きに、彼は
竦
(
すく
)
みあがる。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
鼻の
前
(
さき
)
を、その
燈
(
ひ
)
が、暗がりにスーッと
上
(
あが
)
ると、ハッ
嚔
(
くさめ
)
、
酔漢
(
よっぱらい
)
は、細い
箍
(
たが
)
の
嵌
(
はま
)
った、どんより黄色な魂を、口から抜出されたように、ぽかんと
仰向
(
あおむ
)
けに目を明けた。
菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
種彦は二度も三度もつづけざまにする
嚔
(
くさめ
)
と共にどうやら
風邪
(
かぜ
)
を引込んだような心持になった。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
嚔
(
くさめ
)
もせぬ。
洟
(
はな
)
もたらさぬ。まして、熱が出たの、手足が冷えるのと云うた覚は、
嘗
(
かつ
)
てあるまい。各々はこれを、誰のおかげぢやと思はつしやる。——みんな、この虱のおかげぢや。
虱
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
今まで
内爛
(
ねえら
)
一つ起して
嚔
(
くさめ
)
一つした事のねえ馬だ、それに十六貫目の四斗俵を二俵附けるなら
当前
(
あたりめえ
)
だが、ハア三俵となると
汝
(
われ
)
え疲れべいと思って、山坂を越える時は
己
(
おら
)
が一俵担いでやるようにするから
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
下へ降るに従って足が冷え、
嚔
(
くさめ
)
の数が増して来る。困った街だ。
欧洲紀行
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
すると凡太郎は、しまいには、しきりに
嚔
(
くさめ
)
をするのであつた。
小熊秀雄全集-15:小説
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
○大きな
嚔
(
くさめ
)
を、午前0時半にした。
日記:14 一九二八年(昭和三年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
きのうの残暑とは比較にならない陽気なので、
風邪
(
かぜ
)
をひき込んだのであろう、鼻のうえに
皺
(
しわ
)
をよせ、鼻腔と眉を一緒にして、大きな
嚔
(
くさめ
)
を一つ放つ。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それはそうと、
嚔
(
くさめ
)
が出る時、彼女がひょっこり現われただけで、それが止まってしまうことも事実だ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
ただ、お断りしておきますが、曲芸の最中に
嚔
(
くさめ
)
をしたり、あまり強い
呼吸
(
いき
)
をしたりしないように願いますよ。ミミイ嬢が気を悪くして何もしなくなってしまいますからね。
ノンシャラン道中記:08 燕尾服の自殺 ――ブルゴオニュの葡萄祭り――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
と鳴くにつれて、
茸
(
きのこ
)
の軸が、ぶる/\と動くと、ぽんと言ふやうに
釣瓶
(
つるべ
)
の
箍
(
たが
)
が
嚔
(
くさめ
)
をした。
雨ばけ
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
下人は、大きな
嚔
(
くさめ
)
をして、それから、
大儀
(
たいぎ
)
そうに立上った。夕冷えのする京都は、もう
火桶
(
ひおけ
)
が欲しいほどの寒さである。風は門の柱と柱との間を、夕闇と共に遠慮なく、吹きぬける。
羅生門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
仮橋をこえて、振りかえると、岩公が薄暗い河原で、大きな
嚔
(
くさめ
)
をしていた。
下頭橋由来
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それでも
寂寞
(
ひっそり
)
、気のせいか
灯
(
あかり
)
も陰気らしく、立ってる土間は暗いから、
嚔
(
くさめ
)
を仕損なったような変な
目色
(
めつき
)
で弥吉は飛込んだ時とは打って変り、ちと
悄気
(
しょげ
)
た形で格子戸を出たが、後を閉めもせず
葛飾砂子
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
五位は慌てて、鼻をおさへると同時に
銀
(
しろがね
)
の提に向つて大きな
嚔
(
くさめ
)
をした。
芋粥
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
嚔
(
くさめ
)
をした。
唾
(
つば
)
を吐いた。そしていう——
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
何、何、愚僧が三度息を
吹掛
(
ふきか
)
け、あの
身体中
(
からだじゅう
)
まじなうた。
屑買
(
くずかい
)
が
明日
(
あす
)
が日、奉行の鼻毛を抜かうとも、
嚔
(
くさめ
)
をするばかりで、
一向
(
いっこう
)
に目は附けん。
其処
(
そこ
)
に
聊
(
いささか
)
も懸念はない。が、正直な気のいゝ屑屋だ。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
象の小父さんが、
嚔
(
くさめ
)
をしたようで、えぐいよ。
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
嚔
(
くさめ
)
の出そうな容体、
仰向
(
あおむ
)
いてまたすすり
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“嚔(くしゃみ)”の解説
くしゃみ(嚔、en: sneeze)とは、一回ないし数回痙攣状の吸気を行った後に強い呼気をされること。くしゃみ反応は不随意運動であり「自力で抑制」することはできない。
(出典:Wikipedia)
嚔
漢検1級
部首:⼝
18画