上機嫌じょうきげん)” の例文
その代り相手から小言を言われても上機嫌じょうきげんで我慢をし、攻撃されても決して自分を弁解したり喧嘩けんかしたりするようなことはなかった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
おじいさんは、上機嫌じょうきげんでありました。正二しょうじも、おじいさんにそういわれると、ハーモニカをってもらったよりもうれしかったのでした。
二百十日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
酒呑童子しゅてんどうじ頼光らいこうたちがわるびれもしないで、のおさけでも、にくのおさかなでも、けてくれたので、るから上機嫌じょうきげんになって
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「こないだは、ずいぶん怒ってお帰りになりましたのよ。」と相変らず上機嫌じょうきげんに笑いながら、僕と斎藤氏と二人の顔を見較みくらべながら言った。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
三人で行って来給えなどと、気味が悪い程の上機嫌じょうきげんで、今までこんなに義兄から親切に云われたことはないくらいであった。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
これはただ自分の心持が変ってしまっただけのことなのだ。というのは自分が今度このたび故郷へ帰って来たのは、決して上機嫌じょうきげんで来たのではないからだ。
故郷 (新字新仮名) / 魯迅(著)
「芸者を呼びましょうか」とか、「大相上機嫌じょうきげんです、ね」とか、「またいらっしゃい」とか、そういうことを専門に教えてくれろと言うのであった。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
彼女は午後の一部分を庭で過ごしながら、年取った不平家の父親といっしょにいつも上機嫌じょうきげんで、縫い物をしたり夢想したり庭をいじったりしていた。
将軍は今日も上機嫌じょうきげんだった。何か副官の一人と話しながら、時々番付を開いて見ている、——その眼にも始終日光のように、人懐ひとなつこい微笑が浮んでいた。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と、大そう上機嫌じょうきげんで弁じるのであった。(この大谷は八月六日の朝、出勤の途上つい行方ゆくえ不明になったのである)
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
どっかりとすわった与吉、お藤の差しだす茶碗の冷酒ひやをぐっとあおって、さて、上機嫌じょうきげんに話しだしたのは……。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
と龍巻は上機嫌じょうきげんである。そしていままでは、やや心をゆるさずにいた民部みんぶを、すッかり信用してしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今日は荒田老もめずらしく上機嫌じょうきげんで、「わしはめしはたくさんです」などと無愛想ぶあいそうなことも言わず、自分からすすんで平木中佐をさそい、その席につらなったのである。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
後がワシントンに帰ってきたときは、出かけるときとはちがって、大した上機嫌じょうきげんであった。
しかし、おじさんは、花林かりんの卓のまえに向ったまま、思いのほか、上機嫌じょうきげんそうに答えた。
花を持てる女 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
『今のは太そうな奴だな、フン、うまいうまい。』叔父さん独語ひとりごとを言って上機嫌じょうきげんである。
鹿狩り (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ある日のこと、父は久方ぶりの上機嫌じょうきげんで、わたしの部屋へ入ってきた。彼はこれから馬で出かけるところで、ちゃんと拍車はくしゃをつけていた。わたしは、一緒いっしょに連れて行って下さいとせがんだ。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
皇帝は病気にかかっていて馬上では局所に苦痛を感じて困難ではあったが、かつてその日ほど上機嫌じょうきげんなことはなかった。心情を発露することのないその顔つきも、朝から微笑をたたえていた。
うち晩酌ばんしゃくに飲み、村の集会で飲み、有権者だけに衆議院議員の選挙せんきょ振舞ぶるまいで飲み、どうやらすると昼日中ひるひなかおかずばあさんの小店こみせで一人で飲んで真赤まっか上機嫌じょうきげんになって、笑って無暗むやみにお辞義をしたり
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
あるすきとおるように黄金きんいろの秋の日土神は大へん上機嫌じょうきげんでした。
土神ときつね (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
もう大分上機嫌じょうきげんになっていたが、見るから一と癖も二た癖もありそうな、癇癪かんしゃくの強いぎょろりとした大きな出眼の、額から顳顬こめかみのあたりが太い筋やしわでひきつったようになって、気むずかしいのは
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
空いた燗徳利かんどくりが三四本、さかなはちや洋食のさらもかなり並んでいたし、留さんは上機嫌じょうきげんで、陽気に笑ったり話したりしながら、「まあ飲みなせえな」とか、「もっと食いせえ、ま」などとせっついていた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
医師はいつも上機嫌じょうきげんで、騒々しくて、せかせかして、俗っぽくて、好人物だった。盛んに食い飲み語り笑った。彼といっしょだとアンナも少し口をきいた。
そこで、そのばかりは、特別とくべつ無礼ぶれいのことのないかぎり、かれらはくつろいでんでも、いいとのことであったから、みんなは、上機嫌じょうきげんになってしまいました。
珍しい酒もり (新字新仮名) / 小川未明(著)
弁当持参で出掛けられて、二時頃迄に帰って来られれば、その間に此方も済むであろう、と、至極上機嫌じょうきげんの顔つきで云い、縁のものだから分らないけれども、私は実は
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
汽車は割にいていて、三人とも腰かけられた。汽車の中では、叔父さまは非常な上機嫌じょうきげんでうたいなどうなっていらっしゃったが、お母さまはお顔色が悪く、うつむいて、とても寒そうにしていらした。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
いかにも上機嫌じょうきげんそうに、ふらりふらりと歩いていた。
三つの挿話 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
四 トロミエス上機嫌じょうきげんにてスペインの歌を歌う
白木も上機嫌じょうきげんだ。
暗号音盤事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いつも隣で聞かされながら云い知れぬ嫉妬しっとを覚えたものだが、今夜は特別にそのゴロゴロが大きな声に聞えるのは、よっぽど上機嫌じょうきげんなのであろうか、それとも自分の寝床の中だと
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
がクリストフは、その男の滑稽こっけい饒舌じょうぜつといつも変わらぬ上機嫌じょうきげんとを愉快がっていた。
「やあ、おめでとう。」と津田氏も上機嫌じょうきげんである。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
クリストフは上機嫌じょうきげんに話をした。彼女は気のない返辞ばかりしていた。クリストフを恨めしく思いがちだった。そこへ呼鈴が鳴った。それはジョルジュだった。オーロラはびっくりした。
「またもう一遍いっぺん学生時代にかいったような気イするなあ」などいいますから、「夫婦づれで自動車で通う学生あったらおかしいやないか」いいましたら、あはあは笑うたりなんぞして上機嫌じょうきげんでした。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と、ひどく上機嫌じょうきげんな声で云った。すると、並んで立っていた陣場が
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
上機嫌じょうきげんで笑っていた。