かけ)” の例文
旧字:
多助は戸田様のお屋敷へ炭を持ってまいり、帰ろうとして不図目に付いた荷札に、実父の姓名があるに、思わず縁の方よりかけより
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
両手でくうつかんで煙を掻分かきわけるように、火事じゃ、とかけつけた居士が、(やあ、お谷、軒をそれ火がめるわ、ええ何をしとる)
半島一奇抄 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うずらはらかかえたなり、ホテルへ帰って勘定かんじょうを済まして、停車場ステーションかけつけると、プラットフォームに大きな網籠あみかごがあった。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
てうは早く出てブレラの美術館ピナコテカくまで市内の各所をかけ歩いた。スフオルチエスコの古城こじやう方形はうけいの珍しい城であつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
清子夫人がそんな女かうかはよく知らないが、唯この婦人を中心に泡鳴氏と王堂氏がかけつこをしてゐるのは面白い。手製ではあるが二人とも日本一の文学者ださうだ。
ここもとにこそありつれと、禅師が前を幾たび走り過ぐれども、更に禅師を見る事なし。堂の方にかけりゆくかと見れば、庭をめぐりてをどりくるひ、つひに疲れふして起き来らず。
だが、橘の顔はぞくぞくするほどの予感で、あおざめてその色をうしのうて行った。それは彼らがそのいのちの的をりあうために遠くにかけって行ったものに、毛毫もうごう相違なかったからだった。
姫たちばな (新字新仮名) / 室生犀星(著)
一分間の後、私たちは乗心地のよい回転馬車ランドウに座を占めて、見馴れぬ古風なデヴォンシャの市をかけらせていた。グレゴリ警部は今度の事件で胸一杯だったと見え、話は後から後へと迸り出た。
「お前様達、一里かけッこをするのかね」と爺さん達は眼をまるくしている。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
さんだんにうねりてみゆるお河童かつぱの髪ゆりていましかけりくるかな
小熊秀雄全集-01:短歌集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
余り早くおかけなさらないがいわ。
とき濠端ほりばたかけつけたは、もつぺととなへる裁着たつゝけやうの股引もゝひき穿いた六十むそじあまりの背高せたか老爺おやぢで、こしからしたは、身躰からだふたつあるかとおもふ、おほき麻袋あさぶくろげたのを、あし一所いつしよばして
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
智恵ちゑのないこゑをしながら、無暗むやみひとんで、雪枝ゆきえ山路やまみちかけづりまはつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はなすがはやいか、さる方々はう/″\かけずりまはつて勝手放題かつてはうだい道楽だうらくをする、夜中よなかつきあかるときてらもんたゝいたこともあつたさうだし、ひと庖厨くりやしのんで、なべおほきいのと飯櫃めしびつ大屋根おほやねつてあがつて
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
男は深疵ふかでだったけれども気がたしかで、いまかけつけた者を見ると
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)