いひ)” の例文
しな照る 片岡山かたをかやまに いひて こやせる 旅人たびとあはれ 親無おやなしに なれりけめや 剌竹さすたけの きみはやき いひて こやせる 旅人たびとあはれ
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
中臣藤原の遠つおやあめのおしくもね。遠い昔の 日のみ子さまのおしのいひとみ酒を作る御料の水を、大和国中くになか残る隈なく捜し蒐めました。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
まことにめづらしき会なりと、ひるいひたうべなどして、上野の桜を見つつ、中田圃より待乳山にのぼりてしばしながめつ。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
また當麻たぎま倉首比呂くらびとひろが女、いひの子に娶ひて、生みませる御子、當麻の王、次にいも須賀志呂古すがしろこの郎女二柱。
日本人とは切っても切れぬ因縁いんねんのある米の飯、是すらもつとに変化してしまっている。今我々の食うのは、昔の日本人のいういひではなく、かゆすなわちカタカユというものである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「一鉢千家のいひ、孤身幾度の秋、くうならず又しきならず、無楽また無憂、日は暖かなり堤頭の草、風は涼し橋下の流、人しこの六を問はば、明月水中に浮ぶ」と吟じおわってから
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いへにあればいひ草枕くさまくらたびにしあればしひる 〔巻二・一四二〕 有間皇子
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「家にあればにもるいひも草まくら旅にしあれば椎の葉にもる」とは行旅の情をうたつたばかりではない。我我は常に「ありたい」ものの代りに「あり得る」ものと妥協するのである。
侏儒の言葉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
さむき日をひねもすくりやにおりたちてわれにいひはますわれのづま十一月十八日
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
からんからん茶椀をならしみつれどもさびしさいえずひとりいひ食む
小熊秀雄全集-01:短歌集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
かがまりていひ待つかげのさびしきに触ればいとしきいのちなりけり
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
いとほしき妻と子等とに食はすべきいひもなきまで貧しきや
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
玄米くろごめもみがらくさきいひながらほかほかとめばあたたまるもの
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いひかしぐゆふべの煙庭に這ひてあきらけき夏の雨は降るなり
なまけ者と雨 (新字旧仮名) / 若山牧水(著)
いひもたべずにわがうたふ
抒情小曲集:04 抒情小曲集 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
とあるいひむせかへり
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
いひかしぐ 事も忘れて
日本の美 (新字新仮名) / 中井正一(著)
いへにあればにもるいひを草まくら旅にしあれば椎の葉にもる」とは行旅の情をうたったばかりではない。我我は常に「ありたい」ものの代りに「あり得る」ものと妥協するのである。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あやしげのいひをはみつつあやしげのいのちつづくる今の世の人十月二十一日
枕上浮雲 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
うれしくてうれしくて吾はいくたびもはなをかむなりいひしにつつ
小熊秀雄全集-01:短歌集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
海のべの唐津からつのやどりしばしばも噛みあつるいひすなのかなしさ
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
過去になき深き安らひ身にありていひむにさへ笑みの湧き来る
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
あかんぼを黒き猫来て食みしといふ恐ろしき世にわれもいひ
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いひかしぐゆふべの煙庭に這ひてあきらけき夏の雨は降るなり
春されば花うぐひすと人は言へど心も向かずいひに饑うれば
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
われのいひを食みつつ
忘春詩集:02 忘春詩集 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
いひはめばこころ足らへりわがいのち太古の民の安けさにかも似る
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
病みながら秋のはざまに起臥おきふしてけふも噛みたるいひいしあはれ
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
いひみ酒をいただきしかすがにあり経むものか人のごとくに
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ひからびし手をもて母が炊ぎたるたふときいひぞしみじみと食す
小熊秀雄全集-01:短歌集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
文鳥の欲りむままにいひ置きてみあきるまで眺めてゐたり
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
青き豌豆を煮もしいひにもまじへて食ふを好めば。
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
ひえびえと明りて近き小竹の揺れ硝子戸越しに見つついひ待つ
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いひの中にまじれるすなにしつつ海辺うみべ宿やど明暮あけくれにけり
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
老妻おいづまのかしげるいひうべつつ語りあかさな春の一夜いちや
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
生きの身の吾が身いとしくもぎたての青豌豆のいひたかせけり
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
この冬は貧しかりけり庭つ鳥の餌をひろふかにひろふいひの粒
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
人常にすこやかならず朝露の藜のみどり観つついひ
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
松風に白きいひ食む春さきは浜防風も摘むべかりけり
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)