附絡つきまと)” の例文
お島はあとから附絡つきまとって来る川西の兇暴な力に反抗しつつ、工場のすみに、慄然ぞっとするような体を縮めながらそう言って拒んだ。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
這箇こつちは気が気ぢやないところへ、もう悪漆膠わるしつこくてたまらないから、病気だとつて内へげて来りや、すぐ追懸おつかけて来て、附絡つきまとつてゐるんでせう。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
公子 解いてもい、(結び目に手を掛け、思慮す)が、解かんでもかろう。……最初に見た目はどこまでも附絡つきまとう。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
悪い病気にかかったというその情婦は、どこへ行っても兄に附絡つきまとわれていて、好いこともなくて旅で死んでしまった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
朦朧もうろうと立ったり、間近な崖へ影がしたり、背後うしろからざわざわとすすき掻分かきわける音がしたり、どうやら、くだんの二人のおうなが、附絡つきまとっているようなおもいがした。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かれがお通のあとを追うはほとん旬日前じゅんじつぜんよりにして、美人が外出をなすにうては、影の形に添う如く絶えずそこここ附絡つきまとうを、お通は知らねど見たる者あり。
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
川西は、傍に附絡つきまとっているお秀をも、湯へ出してやってから、時々口にすることをその時もお島に言出した。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
およそ、つきとともに、影法師かげぼふしのあるところくだんもの附絡つきまとはずとことなうて、ひ、め、蹂躙ふみにじる。が、いづれひと生命いのちおよぶにはがあらう。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
我に貞なりとはいうことを得ずとなし、はじめよりお通の我を嫌うこと、蛇蝎だかつもただならざるを知りながら、あたかもかれ魅入みいりたらんごとく、進退すきなく附絡つきまといて
琵琶伝 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
慕わせるより、なつかしがらせるより、一目見た男をする、ちから広大こうだいすくなからず、地獄、極楽、娑婆しゃばも身に附絡つきまとうていそうな婦人おんなしたごうて、罪もむくいも浅からぬげに見えるでございます。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
車夫は、藍川館まで附絡つきまとった、美しいのにげられた、色情狂いろきちがいだと思ったろう。……
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たび密月みつゞきたび第一夜だいいちやから、附絡つきまとふて、となり部屋へや何時いつ宿やどる……それさへもおそろしいのに、つひ言葉ことばのはづみから、双六谷すごろくだに分入わけいつて、二世にせちぎりけやうとする、けば名高なだか神秘しんぴ山奥やまおく
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
盲人めくらこそ、をんなおもひをけて、かげのやうに附絡つきまとうて、それこそ、をんないへまはりの瓦斯燈がすとうのあかりでれば、守宮やもりか、とおも形體ぎやうたいで、裏板塀うらいたべい木戸きど垣根かきねに、いつもあかく、つらあを
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)