鍛冶屋かぢや)” の例文
玩弄屋おもちややの隣に可愛い娘の居る砂糖屋、その向ふに松風亭といふ菓子屋、鍛冶屋かぢや、酒屋、其前に新築の立派な郵便電信局……。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「近頃、あの家の者か、出入の者で、鍵をこしらへさせた者はないだらうか、山の手一圓の鍛冶屋かぢや鑄掛屋いかけやを、ごく内證で調べて貰ひたいんだが——」
それは二人の村の、鍛冶屋かぢやの三男の小平こへいさんでした。小平さんはその前の年の春頃、学校を卒業しました。
(新字旧仮名) / 新美南吉(著)
土間どまはしめつて、鍛冶屋かぢや驟雨ゆふだち豆府屋とうふや煤拂すゝはきをするやうな、せはしくくらく、わびしいのもすくなくない。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此樣こん孤島はなれしま鍛冶屋かぢやなどのあらうはづはない、一時いちじこゝろまよひかとおもつたが、けつしてこゝろまよひではなく、寂莫じやくばくたるそらにひゞひて、トン、カン、トン、カンと物凄ものすご最早もはやうたがはれぬ。
「えゝ、箆棒べらぼう一日いちんち手間てま鍛冶屋かぢやんちあなくつちやなんねえ」かれつぶやいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
先日もお父さまが、あの鍛冶屋かぢやの向うの杉山に行つて見られますと、意地のきたない田澤の主人が境界石を自家の所有の方に二間もずらしてゐたさうです。お父さまは齒軋はぎしりして口惜しがられました。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
鍛冶屋かぢや小僧こぞうさん
歌時計:童謡集 (旧字旧仮名) / 水谷まさる(著)
鍛冶屋かぢやの男が重い鉄槌てつゝちに力をこめて、カンカンと赤い火花をとほりに散らしてると、其隣そのとなりには建前たてまへをしたばかりの屋根の上に大工が二三人しきりに釘を打附うちつけてた。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
しかるに家業かげふ出精しゆつせいゆゑもつて、これよりさきとく一個いつここの鍛冶屋かぢやしやうたまひしより、昧爽まいさうける市街しがい現象げんしやううておもむきへんじ、今日けふ此頃このごろいたりては、鍛冶屋かぢや丁々てう/\ふもさらなり
鉄槌の音 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
見ると、鍛冶屋かぢやの物置からでも盜んで來たものだらう。これは手掛りになるまいな
鍵をあづかつてる人は、前の街道を一二ちやう行つたところの、鍛冶屋かぢやの隣の饅頭屋まんぢうやであつた。場末の町によく見るやうないへつくりで、せいろのなかの田舎饅頭まんぢうからは湯気が立つてる。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
これより旬日じゆんじつまへまでは、前田まへだ加賀守かがのかみ治脩公ちしうこう毎朝まいてうかゝすことなくあさひ禮拜らいはいなしたまふに、たゞ寂寞せきばくたるはかしたに、金城きんじやう蒼生たみみなねむりて、彌望びばう極顧きよくこ活色くわつしよくなく、したちか鍛冶屋かぢやにて
鉄槌の音 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いま鍛冶屋かぢやのきならべて、なかに、やなぎとともに目立めだつのは旅館りよくわんであります。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)