身柄みがら)” の例文
舷の釘に彼の衣類きものと覚しき絣の切れ端が、残されていたのとで、死人の身柄みがらなり自殺の動機なりが分明したよし記されてありました。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しかし、現に盗品をたずさえていたという当面の罪はまぬかれず、豊雄の身柄みがらは国守の役所にひきわたされて、牢に入れられた。
ひとうへつものはだけ苦勞くらうおほく、里方さとかた此樣このやう身柄みがらでは猶更なほさらのことひとあなどられぬやうの心懸こゝろがけもしなければるまじ
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
若者わかものたちは老人ろうじんのそばにやってきて、不思議ふしぎ身柄みがらのわからないふねが、みなとうちにはいっていることをげたのであります。
カラカラ鳴る海 (新字新仮名) / 小川未明(著)
横眼でにらんでは舌舐したねぶりをする(文三は何故か昇の妻となる者は必ずおろかで醜い代り、権貴な人を親に持った、身柄みがらの善い婦人とのみ思いこんでいる)
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
あるいはじぶんの身柄みがらをかくすことに成功するかもしれないと考え、全身の力をこめて、大男のあごをつきあげた。
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
禰宜 人妻にしては、艶々つやつや所帯気しょたいげ一向いっこうに見えぬな。また所帯せぬほどの身柄みがらとも見えぬ。めかけ、てかけ、かこいものか、これ、霊験あらたかな神の御前みまえじゃ、明かに申せ。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もともと、かれは江戸で、お千絵様という女性を墨屋敷すみやしきの穴蔵部屋へ押し込めていた当時からして、金箔付きんぱくつきの隠密組のひとりという身柄みがらは、こっちも知っていたのに!
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あまつさ謀判ぼうはんの罪を犯したことが明白になり、身柄みがらを吉長に下げ渡されて即時に首をねられた。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
はんこを捺して人間の身柄みがらを引取ったこともはじめてだったが、変な気のものであった。
生涯の垣根 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
かれはそのあね訪問はうもんによつて、その身柄みがら教養けうやう程度ていどを、ほゞ推察すゐさつすることが出来できた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
相当さうたう身柄みがらいへそだつただけに青木さん夫婦ふうふ相方さうはう共に品のいい十人なみ容姿ようし持主もちぬしで、善良ぜんりやう性格せいかくながらまた良家りやうかの子らしい、矜と、いくらかえをるやうな氕質きしつもそなへてゐた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
其の左膳も病にし、死する臨終いまわわれを枕元に招き、き跡にて此の孫を其のほうの娘となし、成長ののち身柄みがらあるいえ縁付えんづけくれ、頼む、と我師わがし遺言ゆいごん、それよりいさを養女となせしが
小木曾をぎそをとめの身柄みがらには
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
息子むすこはいまでは、このみやこでなに不自由じゆうなくらしていられる身柄みがらでありましたから、父親ちちおやに、なんでもめずらしそうなものをってきて、もてなしました。
山へ帰りゆく父 (新字新仮名) / 小川未明(著)
品子がこの猫の身柄みがらについて福子に嫌味いやみな手紙を出したり、塚本を通してあんなに執拗しつッこく頼んだりした動機と云うものを、一寸ちょっと説明しておかなければならないのであるが、正直のところ
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
治明博士は、聖者を迎える前に、レザール氏の身柄みがら業績ぎょうせきについて述べた。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかし身柄みがらは、錦小路殿へひきとられ、直義の養子となって、なのりも
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はかなきいま身柄みがらには
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
わたしはそのときちゃんとって、身柄みがらのわからない……いままでに、たことのないふねだなとはおもっていた。
カラカラ鳴る海 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして程なく、武松の身柄みがらは、この地からさらに遠い
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
高氏どのの身柄みがら
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)