身形みなり)” の例文
おあいが身形みなりにもかまわず、小さな子供を負って、雪を分けて、森の家を指して行くのを、晩方ばんがた、戸口に立っていて見た人があった。
凍える女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
今更に身形みなりのしどけないのに、年にも似ず顏赭らめて、寢衣の上へ帶なぞ締めて來たお道は、前をかき合はせ/\、呆れた顏をして
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
黄八丈の着物に鹿の子の帯を締め、そしてお河童頭には紅いリボンを三つも結んでいるというのがそのころの妾自身の身形みなりだった。
三人の双生児 (新字新仮名) / 海野十三(著)
角「縁は縁だが、此様こんな事になっては悪縁だねえ、さア此処に金が五十両あるから、これで身形みなりを整えて、立派なおさむれえになって下せえ」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
男はやがて身形みなりを直した。額の脂汗を袖で拭った。それから蚊帳の外に出て、押入の襖を静に開いた。中には四尺ばかりの空いてる場所があった。
白血球 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
特に「御所人形ごしょにんぎょう」とか「嵯峨人形さがにんぎょう」とか呼ばれるもので、昔からの技を守るものは出来が上等であります。顔立かおだちにも身形みなりにも型を守って乱しません。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
殺害したるに違ひなしと思ひしうち家の造作家内の身形みなりも立派になり皆々不思議ふしぎに存じたる所博奕に廿兩勝た三十兩勝たと吹聽ふいちやう致せども是は盜賊の名を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
彼は何だか変な身形みなりをして、頭には、両方の耳の上へつばが突き出したような一種のふち無し帽をかぶっていました。
身形みなりが別に派手でも何でもないが、彼女を見付け出すのは鶏群中の雄鶏おんどりを見出す程容易であった。彼女の手には反物たんものらしい紙包の買物が既に抱かれて居った。
偽刑事 (新字新仮名) / 川田功(著)
身形みなりの端正なのにそぐわず、髪の毛を馬鹿にモジャモジャとのばした、相手の青年は、次の様に語り出した。
一枚の切符 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
自分の身形みなり他人ひとからの悪口を気にせず、また躍り上る浮気心や他人のお世辞にのぼせ上らずに、埃だらけ泥まみれになって努力し続けなければ駄目でしょう。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
廣間二つに樂の群を居らせて、客の舞踏のにはとしたり。舞ふ人の中にベルナルドオありき。金絲もて飾りたる緋羅紗らしやの上衣、白き細袴ズボン、皆發育好き身形みなりかなひたり。
勿論セリフは全くわからないし、身形みなりも作らない作業姿なので、最初は何が何だかサッパリわからなかったが、だんだんと場面が進行するにつれて外題げだいがわかって来た。
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
やがて通されたのは、十七八の可愛らしい娘で、八五郎の前觸れほどのきりやうではありませんが、身形みなりもよく物腰しも上品で、何んとなく好感を持たせるところがあります。
市九郎は、二人の身形みなりを見ると、彼はこの二人を今年の犠牲者にしようかと、思っていた。
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
この助郷は雲助などに比べると相当の着物を着て身形みなりもよく一層温順であるが、それだけ駕籠の舁き方も拙く、足ものろいので、我々はやはり助郷よりも雲助の方を便とした。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
断っておくが、井深君の齢は、そんな身形みなりをしても、未だ三十二歳には少し間があって、しかもその実際よりも更に三つ四つ若く、つまり弱冠はたちそこそこにしか見えないような童顔をしていた。
(新字新仮名) / 渡辺温(著)
『人のことを、そないに見るのはや。』と、お光は自身の身形みなりを見𢌞はしてゐる小池の視線をまぶしさうにして、身體からだすくめた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
右「えゝ、そんなお身形みなりにお成りなさいまして、此様こんな山の中にお出でなさいますか、おなさけない事でございますなア」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
しかし口には何事も言わずにただ身形みなり容子ようすで——もう日が暮れて時刻が遅くなるぞ。早くやっつけてしまわねえかと催促するようにせわしげに動き始めた。
捕われ人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さつし是々御浪人我等は此樣に見苦しき身形みなりゆゑ定めて不審いぶかしき者とおぼされんが必ず御心配なさるに及ばず某は讃州さんしう丸龜まるがめに住居なす後藤半四郎秀國ひでくにとて劔道けんだう指南しなん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いたずらに都の風を追う安っぽい身形みなりよりも、土地から生れたこういう風俗の方が、どんなに美しいでありましょう。借物でも嘘物でもないからであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
旅人は二人とも、大変粗末な身形みなりをして、財布には宿賃を払うだけのお金もなさそうに見えました。
格子戸の中、あかりから遠い土間に立ったのは、二十三——四の年増、ガラッ八が言うほどの美い縹緻きりょうではありませんが、身形みなりも顔もよく整った、しっかり者らしい奉公人風の女です。
只今はういうお身形みなりだが、前々まえ/\しかるべきお身の上のお方と存じます、左もなくて腕がなければ中々又市を一うちにお打ちなさる事は出来ぬ事でな
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かひ妻子の身形みなりも立派になり二十兩勝た三十兩勝たと博奕ばくちに勝たはなしをする樣子何分合點がてんゆかず常にはまけた事ばかり云ひて勝た事をいはざるに全く金の出處をうたがはれぬ樣に勝し事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
格子戸の中、あかりから遠い土間に立つたのは、二十三——四の年増、ガラツ八が言ふほどの美い縹緻きりやうではありませんが、身形みなりも顏もよくとゝのつた、しつかり者らしい奉公人風の女です。
何時、見る時も、かつて、この村に来た時と同じい年頃に見受けた。そればかりでなく、身形みなりも余り変っていると思った者がない。或時は、秋から冬にかけて、僧はこの村に入って来た。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
雪国の人たちは雪にえる身形みなりや持物を用意せねばなりません。それらのものは都からは運ばれて来ません。人々は色々のものを作って、自分やまた家族の者のために準備せねばなりません。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
まとまったお金を幾らか私が貰って上げるから、それで内証ないしょの借金を払い、二百両か三百両の金を友さんにも遣り、借金のかたを附け、可なり身形みなりこしら
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
どんな身形みなりでも地方的に特色のあるものは、どこか美しいものです。そうしてこういう特色あるものが地方から凡て消えてしまったら、その国民の風俗は眠い醜い凡庸なものに沈むでしょう。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
心は冷たい石となってしまったかと思われる程、身形みなりに構わなくなった。色の青白い顔に根の弛んだ髪は解けて肩のあたりまで散りかかっている。身には女らしい赤や、紫の色はいていなかった。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
わっちが上野の三橋側の夜明よあかしの茶飯屋のところで、立派な身形みなり新造しんぞが谷中長安寺への道を聞いてるんで、てっきり駈落ものとにらんで横合から飛び出し、私もね
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
行きずりに道で逢う人々の身形みなりが大事である。かぶぼうまとう着物、背負う籠、腰の持ち物、それらよりきた手本はない。同じように事情が許すなら、民家の茶の間、その台所を見るにくはない。
地方の民芸 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
それが或年から、全く翁の身形みなりや、信仰が変ってしまった。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
しゅうとが腹を立って追出すくらいでございますから、何一つもくれませぬ、それ故少しは身形みなりこさえたり、江戸へくには土産でも持ってかなければなりませぬ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
身形みなりから、様子から、その時の儘であると語った。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
旦那様もお身形みなりが変りお見違みちげえ申すようになりました、誠にまアあんたもおふけなさいました
此の金子でわし身形みなりを整えて江戸の屋敷へ帰るから、よう、よう分ったか
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それに付いても貴方のお身形みなりう云う訳で
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)