路用ろよう)” の例文
「お金はあるよ、家を逃げ出す時に持っていたのが、まだこの箱の中にソックリあるから、逃げようと思えば路用ろようには困らないのだよ」
徊歴くわいれき肥後國ひごのくに熊本の城下じやうかに到りぬこゝは名におふ五十四萬石なる細川家ほそかはけの城下なれば他所とはかは繁昌はんじやうの地なり寶澤は既に路用ろよう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「おい! 浅に、喜蔵に、嘉助かすけとが、俺と一緒に来るんだ! 外の野郎達は、銘々思い通りに落ちてくれ! 路用ろようの金は、分けてやるからな!」
入れ札 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
四番よばんめの大伴おほとも大納言だいなごんは、家來けらいどもをあつめて嚴命げんめいくだし、かならたつくびたまつていといつて、邸内やしきうちにあるきぬ綿わたぜにのありたけをして路用ろようにさせました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
自分はそのうちから佐野まで往き復りの路用ろようとして一両だけを取って、残りの金を主人に戻した。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
られた財布の中味は、正直のところ、路用ろようから湯治の雑用を併せて三両二分ばかり、あとに残ったのは、煙草入に女房のお静が入れてくれた、たしなみの小粒が三つだけです。
これ必定ひつじょう、駈落の侍が路用ろようの金なるべしと心付き候へば、なほ更空恐しく相なり、後日ごじつの掛り合になり候ては一大事と、そのまゝ捨て置き立去らむと致せしが、ふとまた思直おもいなおせば
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「石の枕」はひとばあさんが石の枕に旅人を寝かせ、路用ろようの金を奪ふ為に上から綱につた大石おほいしを落して旅人の命を奪つてゐる、そこへ美しい稚児ちご一人ひとり一夜いちやの宿りを求めに来る。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ときに、一歩いちぶ路用ろようとゝのへて、平吉へいきちがおはむきに、なゝツさがりだ、掘立小屋ほつたてごやでも一晩ひとばんとまんねな兄哥あにい、とつてくれたのを、いや、瓜井戸うりゐど娼妓おいらんつてらと、れいおれが、でから見得みえつた。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
途中の路用ろようも、もないし、それに不破から先の山道や、長い江州路には、野武士や悪者がたくさんいて、先おととし、安土が攻め落されたとき、そこを迷うて怖ろしい目におうているので
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おびやか路用ろよううばひて己が酒色のれうにぞつかすてけり初の程は何者の仕業しわざとも知る者なかりしが遂に誰云ふとなく旅人りよじんはぐの惡黨は此頃常樂院の食客大膳と云ふ者の仕業なりとを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
まあ、半分はい出されたような形で、幾らかの路用ろようを貰って江戸へ帰って参りました。
廿九日の牡丹餅 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
でも差迫って不自由なのは路用ろようで、今のところ何にも無く、明日にも路頭に迷わなきゃなりません、済みませんが、私の荷物の中に貰い溜めた給金、小判で五両ほどぼろに包んで隠してあります
なにもいざこざはない、はなしかへつててゆつくりするが、これからぐに筑波山つくばさん參詣さんけいだ。友達ともだち附合つきあひでな、退引のつぴきならないで出掛でかけるんだが、おあきさん、おまへ呼出よびだしたのはほかことぢやない、路用ろようところだ。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
出し外に金五十兩是は其方が路用ろようの足に致すべしと二包の金子を渡せば忠八は其志操こゝろざし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しばらく身をひそめ、路用ろようこしらえて上方かみがたへでも行こうという話でした