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衒気
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げんき
ふりがな文庫
“
衒気
(
げんき
)” の例文
いかにも青臭く
衒気
(
げんき
)
満々のもののような気がして来て、全く、たまらないのであるが、そこがれいの鉄面皮だ、
洒唖々々然
(
しゃあしゃあぜん
)
と書きすすめる。
鉄面皮
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
もし帯刀とその小姓をのぞけば、この近傍の
庄屋
(
しょうや
)
とも変りはない。それほどに
覇気
(
はき
)
や
衒気
(
げんき
)
のみじんも見えない人がらであった。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
旨く書こう、なるべく上手にと技巧に囚われている書家の字に価値のないのは、内容のない浅慮の振舞として、
衒気
(
げんき
)
、
匠気
(
しょうき
)
を出すからである。
鑑賞力なくして習字する勿れ
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
同じく近代楽をプログラムに載せても、シゲティーとハイフェッツの間には、愛着と誇示と、理解と
衒気
(
げんき
)
との違いがある。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
用もないのにむやみに外来語を使いたがる稚気と、
僅
(
わずか
)
ばかりの外国語の知識をやたらにふりまわしたがる
衒気
(
げんき
)
とが民衆にないとは決していえない。
外来語所感
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
▼ もっと見る
もとよりこの書には、ことにその初めの頃のものは
稚
(
おさな
)
く、かつ若さに伴う
衒気
(
げんき
)
と感傷とをかなりな程度まで含んでいる。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
この浮薄と
衒気
(
げんき
)
とを省みると、何が音なく暮れてだ、何が病む心地するだろうと赤面する。そこで朱線を引いてしまう。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
しかし、当代第一流の剣士に見られているという意識からはぬけることができず、ついすると
衒気
(
げんき
)
が出そうになり、緊張のあまり冷汗がながれた。
花も刀も
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
織田は坂田八段の「銀が泣いてる」に就て述べてゐるが、私は、最初の一手に
端歩
(
はしふ
)
をついたといふ
衒気
(
げんき
)
の方が面白い。
大阪の反逆
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
嘘
(
うそ
)
を
吐
(
つ
)
いて世間を
欺
(
あざむ
)
くほどの
衒気
(
げんき
)
がないにしても、もっと
卑
(
いや
)
しい所、もっと悪い所、もっと面目を失するような自分の欠点を、つい発表しずにしまった。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
衒気
(
げんき
)
、匠気というものから、頼まないのに解放されて、
独
(
ひと
)
りを楽しむという高尚な域に近くなっているのです。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
笹村は死際までも幾分人間
衒気
(
げんき
)
のついて廻ったような、先生の言出しを思わないわけに行かなかった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
優れた探偵家の
免
(
まぬが
)
れ難い
衒気
(
げんき
)
であったのか、彼も亦、一度首を突込んだ事件は、それが全く解決してしまうまで、気まぐれな思わせぶりの外には、彼の推理の
片影
(
へんえい
)
さえも
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
例令
(
たとえ
)
此
(
この
)
創業
(
そうぎょう
)
の一年が、稚気乃至多少の
衒気
(
げんき
)
を帯びた浅瀬の波の深い意味もない
空躁
(
からさわ
)
ぎの一年であったとするも、彼はなお彼を此生活に導いた大能の手を感謝せずには居られぬ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
実は
衒気
(
げんき
)
五分市気三分の
覇気
(
はき
)
満々たる男で、風流気は
僅
(
わずか
)
に二分ほどしかなかった。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
置形にも批の打ちどころがありました。一口に言へば
衒気
(
げんき
)
に満ちた作品でした。
利休と遠州
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
私は表面若旦那然たるなりをしてゐても一と皮
剥
(
は
)
げば
衒気
(
げんき
)
満腹、蛮骨
稜々
(
りょうりょう
)
、鼻持のならない野心や情慾が悪臭紛々と漲つてゐる不良青年であつたから、先生のやうな温雅な尊者の前へ出ると
青春物語:02 青春物語
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
と源氏から言われたので、しいて冷静な態度を見せて、借り物の
衣裳
(
いしょう
)
の身に合わぬのも恥じずに、顔つき、声づかいに学者の
衒気
(
げんき
)
を見せて、座にずっと並んでついたのははなはだ異様であった。
源氏物語:21 乙女
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
あの一代の
伊達男
(
だておとこ
)
——犯罪研究家として、古今独歩を唱われる彼が、はじめて現場ならぬ、舞台を蹈む事になった。然し、決してそれは、
衒気
(
げんき
)
の沙汰でもなく、勿論不思議でも何んでもないのである。
オフェリヤ殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
織田は坂田八段の「銀が泣いてる」に
就
(
つい
)
て述べているが、私は、最初の一手に
端歩
(
はしふ
)
をついたという
衒気
(
げんき
)
の方が面白い。
大阪の反逆:――織田作之助の死――
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
その眼と体験から見れば、石舟斎の何らの
覇気
(
はき
)
も
衒気
(
げんき
)
もない、淡々たる
朴醇
(
ぼくじゅん
)
な風は、これが上泉伊勢守なき後の宇内の名人かと疑われるほどであった。
剣の四君子:02 柳生石舟斎
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
平安な時あらゆる人に絶えず附け
纏
(
まと
)
はる自己広告の
衒気
(
げんき
)
は
殆
(
ほとん
)
ど意識に
上
(
のぼ
)
る権威を失つてゐる。従つて艇長の声は
尤
(
もつと
)
も苦しき声である。又
尤
(
もつと
)
も
拙
(
せつ
)
な声である。
艇長の遺書と中佐の詩
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
その音楽が思いのほか
衒気
(
げんき
)
がなく、感傷的で、直情的で、甘さと人の好きを露骨に表現しているばかりでなく、その形式が
整頓
(
せいとん
)
されたヨーロッパ風であるにもかかわらず
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
矢張り人は長生きをして
為事
(
しごと
)
を完成しなくてはだめだ。若い内は作品は唯
衒気
(
げんき
)
ばかりだ、天才があってもそれは唯
閃
(
ひらめ
)
きをみせている丈だ。五十にならなくては本当じゃない。
青べか日記:――吾が生活 し・さ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
不遜
(
ふそん
)
なり、教養なし、思想不鮮明なり、俗の野心つよし、にせものなり、誇張多し、精神
軽佻
(
けいちょう
)
浮薄なり、自己陶酔に過ぎず、
衒気
(
げんき
)
、おっちょこちょい、
気障
(
きざ
)
なり、ほら吹きなり
風の便り
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
村人の居合わす処で其紳士が丁寧に
挨拶
(
あいさつ
)
でもすると、彼はます/\得意であった。彼は好んで斯様な都の客にブッキラ棒の
剣突
(
けんつく
)
を
喰
(
く
)
わした。
芝居気
(
しばいげ
)
も
衒気
(
げんき
)
も彼には沢山にあった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
そして私の持っている色気や
衒気
(
げんき
)
が、実に目に鮮かに見えて恐縮いたします。私はこれから天香師の生活から吸収しうるすべてのよい Einfluss を受け取りたいと思います。
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
が、同時に政治家型の
辺幅
(
へんぷく
)
や
衒気
(
げんき
)
や
倨傲
(
きょごう
)
やニコポンは薬にしたくもなかった。君子とすると
覇気
(
はき
)
があり過ぎた。豪傑とすると神経過敏であった。実際家とするには理想が勝ち過ぎていた。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
しかし不遇の角行燈子が、多年の逆境を脱して、一時に本能を逞しうするの機会を得たために、多少の
衒気
(
げんき
)
と、我慢と、虚栄と、
貪婪
(
どんらん
)
とが併出したと見えて、せっかくの光明に力がありません。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それは青年の、むしろ気鋭な
衒気
(
げんき
)
ですらあつたけれども、やつぱり、虚無的なものではあつた。私は然し、再びそこへ戻つたのではなかつたやうだ。
二十七歳
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
手腕が足りなくて自分以下のものができたり、
衒気
(
げんき
)
があって自分以上を
装
(
よそお
)
うようなものができたりして、読者にすまない結果を
齎
(
もたら
)
すのを恐れるだけである。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
むしろ
衒気
(
げんき
)
に近いものすらある。大きく
膝頭
(
ひざがしら
)
をひらいて武将坐りを組み、長い
肘
(
ひじ
)
を折って
脇息
(
きょうそく
)
へ
倚
(
よ
)
せているため、すこし体が斜に構えた格好になっている。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし、それは、多くの場合、物好きであり、こけ
脅
(
おど
)
かしであり、
衒気
(
げんき
)
である。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
紅葉は
蜀山人
(
しょくさんじん
)
を学んで、若い頃のは蜀山人以上に
衒気
(
げんき
)
満々としていたが、晩年はスッカリ枯れ切って
蒼勁
(
そうけい
)
となった。蜀山人から出て蜀山人よりも力があって、
何処
(
どこ
)
となく豪快の風が現われていた。
美妙斎美妙
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
現実を無視することを誇り、ものごとの正常さを
蔑
(
さげす
)
み、虚栄と
衒気
(
げんき
)
と詠嘆とを生命としてきた。はかなさ、
脆
(
もろ
)
さ、弱さ、そういうものにもっとも美を感じ、風流
洒落
(
しゃれ
)
のほかに生活はないと思ってきた。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それは青年の、むしろ気鋭な
衒気
(
げんき
)
ですらあったけれども、やっぱり、虚無的なものではあった。私は然し、再びそこへ戻ったのではなかったようだ。
二十七歳
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
叱りつけるほどの
衒気
(
げんき
)
もなかった。ただ彼女が帰った後で、たちまち今までの考えが
逆
(
さかさ
)
まになって、兄の精神状態が周囲に及ぼす影響などがしきりに苦になった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
初陣とあれば、誰しも、華々しい功名を心がけて、世上の聞えにも
衒気
(
げんき
)
を抱くのが青年の常なのに——何となされたことかと、後に訊ねる者があった。すると元康は
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
又父はその蔵書印に「子孫酒に換ふるも
亦
(
また
)
可」といふのを彫らせて愛してをり、このへんは父の
衒気
(
げんき
)
ではなく多分本心であつたと思ふが、私も亦、多分に通じる気持があり
石の思ひ
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
その反面の心理には特に選ばれて主将となって来たことや、日頃から孔明の
寵
(
ちょう
)
をうけているという気分が満々と若い胸にあった。壮気というべきみえ、
衒気
(
げんき
)
、自負があった。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
又父はその蔵書印に「子孫酒に換ふるも
亦
(
また
)
可」というのを
彫
(
ほ
)
らせて愛しており、このへんは父の
衒気
(
げんき
)
ではなく多分本心であったと思うが、私も亦、多分に通じる気持があり
石の思い
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
要するに、当初は双方がまだ若く、
衒気
(
げんき
)
や覇気や壮気に充ちきっていた。そして力の互角した者同士が起しやすい摩擦から
醸
(
かも
)
された感情と感情のくいちがいに過ぎなかった。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
孔明の顔を見るや否や、この老将は、
衒気
(
げんき
)
でも負け惜しみでもなく、正直にそう云った。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
かりそめにも
衒気
(
げんき
)
や
大袈裟
(
おおげさ
)
を云わない人である。その宗厳がきょうは沈痛な
面
(
おも
)
もちで
剣の四君子:02 柳生石舟斎
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
事実、そう
覚
(
さと
)
ってからの彼には、これまでにない純粋な献身ぶりがみえ、
驕
(
おご
)
ッていたあの
衒気
(
げんき
)
もいまは捨てて、一身これ現朝廷のため、また打倒尊氏の念に、燃えきっている姿にみえる。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
生意気ざかり、知識自慢、頭でっかちの
衒気
(
げんき
)
紛々
(
ふんぷん
)
なのが揃っているのだった。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、藤次は、美少年の
衒気
(
げんき
)
をたしなめるようにいう。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それほどばかな
衒気
(
げんき
)
もない。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“衒気”の意味
《名詞》
衒 気(げんき)
自分の学識や才能を見せびらかして自慢したいと思う気持ち。
(出典:Wiktionary)
衒
漢検1級
部首:⾏
11画
気
常用漢字
小1
部首:⽓
6画
“衒”で始まる語句
衒
衒学
衒学的
衒学者
衒奇
衒学癖
衒勇
衒揚
衒燿
衒耀