いも)” の例文
われわれにしてからが、ジャガタラいもそのものに、すっかりおどかされちゃってるんだから。ことによると、外国の船でもやって来たかな
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「児玉さんにあつちや、われわれ大人はまるで大根かいもみたいに扱はれる。ぐいと握られて、いきなりブツリと注射だ。」
地獄 (新字旧仮名) / 神西清(著)
この二月の総選挙のとき、ある種の婦人たちは、参政権よりは、やすいいもの方がありがたい、と言葉に出していった。目の前の欲しさを強調した。
世界の寡婦 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
屑拾いこそしなかったが、賃縫いや、ラウンドリーの下請けや、進駐軍ハウスの芝刈りや、闇成金の家掃除、米やいもや魚介の買出し、宝クジ売り。
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
しかし、触れたものをたちまち金にしてしまう力の速さにはかないませんでした。彼の口は、粉を吹いた馬鈴薯じゃない、こちこちの金のいもで一杯でした。
土もついているらしいいもの汁も、空腹すきはらには珍味である。山盛三杯の飯を平げて、湯も飲まずに食事を終った。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
いもでるむっとした匂いの充ちたキッチンに入ると、彼は網戸の外を見ていた。女たちが、彼を恥じさせたのではなかった。彼は彼の空腹を恥じていたのだった。
その一年 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
勿論もちろん例の主義という手製料理は大嫌だいきらいですが、さりとて肉とかいもとかいう嗜好しこうにも従うことが出来ません
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「あのあたりには椰子林があるし、天然のいもも少しはあるです。それから、こっちのあのジャングル地帯には食べられそうな草がある。蜜蜂みつばちなんかも御馳走だ」
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「あーあ!」彼女はもちろん自分が作ったものとは思いつつも、この白いいものようなものが、泥土どろのなかにあったのかと思うと、非常に不思議でたまらないのである。
不周山 (新字新仮名) / 魯迅(著)
井戸——といっても味噌樽みそだるを埋めたのに赤鏽あかさびの浮いた上層水うわみずが四分目ほど溜ってる——の所でアネチョコといい慣わされた舶来の雑草の根に出来るいもを洗っていると
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
続々といものころげ出てくる穴へ、さらに手を突ッこんで深く掻き捜した。畑の黒土は下へゆくほど、人肌みたいな温かさを持っていた。薯はすぐ一と風呂敷に余った。
生徒たちは先生の畑のつくり方を真似まねて、どうなりこうなり、いもが植え付けられるまでに仕上げた。
いもの袋を背負い、汽車の窓から出入りしていた頃の話である。虚脱状態から未だ抜け切らず、空襲で半ばこわれた研究所の中で、若い研究員たちは、混迷の姿であった。
科学は役に立つか (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
大師が四通八達の文化的の智才を以て庶民生活の実地の便利を図られたことは、俗に弘法温泉とか、弘法いもとか言われるものの名に残っていることによっても徴されます。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
第四十二 アテチョーのスープ アテチョーとはツクいもに似た西洋種の薯で味の良いものです。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
お君を呼んできいてみると、戦中、猛威をふるったナチ・マニアの〈ジャガイモ一家〉のママいもと娘いもがおそろいできているというので、うんざりして部屋へひきかえした。
だいこん (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その争いの原因が通例は山のいもで、それがちょうど時鳥の山の木に飛びかわす頃に、芽を出しつるを延ばしてありかを人に知らせる、単純な我々の食物であったことを考えると
さてそれからその山腹下の山村、黒川村でとまり、はじめてジャガイモを味わった。これは古くから同地でつくられてあったものでカウバウイモといっており形の小さいいもであった。
若き日の思い出 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
ある侍今日は殊に日和ひよりよしとて田舎へ遊山ゆさんに行き、先にて自然薯じねんじょもらい、しもべに持せて還る中途とびつかみ去らる、僕主に告ぐ、油揚あぶらあげならば鳶も取るべきに、いもは何にもなるまじと言えば、鳶
粗末な餉台の上で、じゃがいもの煮たのと、鮭の焼いたのと……。
傷痕の背景 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ずりちた崖土がけつちに、無性むしやう矢鱈やたらまはつたおいもつる
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いも十六貫俵がたった八十銭。
馬鈴薯階級の詩 (新字新仮名) / 中島葉那子(著)
有野村の与八が、この春から勧化かんげをして歩いたことの一つに、荒地の開拓と、ハト麦の栽培、ジャガタラいもの増産等があります。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
大根の葉はいうまでもなく、人蔘にんじんの葉から尻尾しっぽ、ジャガいもの皮や、せり、三つ葉の根、ふきの葉まで捨てることはなかった。
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
いもの隆々と成育するだけの日光と水はけとをそなえた空地を果して家のまわりにもっているであろうか。
ラウダは奥からいもだとか、椰子やしの実をかかえてきた。それをきったり、焼いたりして食べるのだ。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「君は何方どちらなんです、牛といも、エ、薯でしょう?」と上村は知った顔に岡本の説をいざのうた。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
昆布こんぶやまいも野老ところなどは木の実でないが、これも早くから菓子のうちに加えられていた。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
附合つけあわせ物には馬鈴薯を湯煮ゆで裏漉うらごしに掛けいも一斤にバター大匙半分、牛乳大匙二杯、塩小匙一杯の割合にて混ぜ火に掛け能く掻廻かきまわして煮たる物を用ゆ。この附合物をマッシポテトという。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
いももころげ出せ、馬鈴薯じやがいも、里芋、つくね芋。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
おごってくれ、ようかん、餅菓子、今川焼、ぼったら焼、今坂、おいも、何でもよろしい、山の如く甘いものを買い集めて、これへ持参するように
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
突き合わせれば、菊太郎とおかみさんの仲もわかるだろうし、得石、蝶太夫、香屋の清一と、いもつるをたぐるようにつながって出てきますぜ、そう思いませんか
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
キャベジ、人蔘、ジャガいも、肉片。魚スープもあり、量がひどく多くて、慣れないうちは食べきれぬ。
米の飯やいもなども余りの物を、壺の中に貯えて作るからと、五島あたりでは説明しているが、やはりくなる前にいったん甘くなるので、アマリといったのではないかとも想像せられる。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
客の小山一々感心し「このビフテキのそばにあるキントンのようなものは大層美味うまいが何だね」主人「それはジャガいものマッシといってよく湯煮ゆでたジャガ薯を裏漉うらごしにして牛乳を加えて塩と砂糖で味を ...
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
いもはころげる。はたけぢや逃げ出す
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
思ひぞくらす秋の山に、牝恋つまこふ鹿もうらめしく、まがきにからむいもかつら、子にほだされて捨てかねし、身のなるはてをあはれ世に、訪ふ人絶えてなかりけり。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
午後から、さつまいもを買い、絵の具をかって、Xマス〓と云うサンスクリットを彫る。(Aが)
当分は玄米といもで過す積り。今日は寒かった。夕食にうどんを煮て少年「助」に馳走し自分も喰べた、贅沢の空なることを知った。助と喰べた自炊のうどんはうまかった。
あるいは今一つの山のいもの話などと、混同してからああなったのかも知れぬが、少なくともこの鳥がさも急いで、森から岡へ空を横ぎって飛ぶ声を聴いてそっちへ飛んで行ったと叫ぶように
川越はお前、今でこそいもの産地だが、黄八幡の北条の旗風には、関東もなびいたものだし、天海僧正様の屋敷だし、徳川の三代将軍もあそこで生れたというところだ。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
大きい胡瓜きゅうりは三十五匁もあり、おいもなどは大きいと四十匁だから、こういうものは一日一本はあたらないわけです。魚は二十五匁が一日置きの予定のところ三日から五日置き。
幾日もいもや菜っぱの汁で食いつないだことが十度や二十度じゃあきかなかった、天下の名婦とか烈女などなら、そんなときでもきげんのいい顔をして、できないくふうをしたかもしれない
おれの女房 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
目白めじろかごに飼われると、熟柿じゅくしなどよりもかえっていもを好んで食う。
それからもう一つ、ジャガタラいもというのがござんすが、あれは近ごろ南蛮から来たのだそうですが、結構たくさん取れて穀類の代りになります、あれをお植えなさい。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ところがこの頃ときたら、コムナールにはジャガいも、玉ネギ、鰊ぐらいがあるっきりだ。
ズラかった信吉 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
いもや南瓜を作るには余るくらいの広い庭が付いていた。
風流化物屋敷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
つるをたぐって、さつまいもの太いのを三本ばかり掘り取り——行きがけの駄賃といっては済まない、水気たっぷりのかぶを一株、根こそぎ引きぬいて、さっと表道へ引上げる。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
問題の本質は、ジャガいもには無え。富農とその手先の計画的奸策にあるんだ
ズラかった信吉 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)