蒟蒻こんにやく)” の例文
しなはどうかしてすこしでも蒟蒻こんにやくらしてきたいとおもつた。おしなそのうちきられるだらうとかんがへつゝ時々とき/″\うと/\とる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
どうかすると大人達は、「ほらよ。」といつて、煮えた里芋か蒟蒻こんにやく一片ひときれを、子供達にくれることがあるのである。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
万事は音作のはからひ、酒のさかなには蒟蒻こんにやく油揚あぶらげの煮付、それに漬物を添へて出す位なもの。やがて音作はさかづきすゝめて
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
𤍠田丸記念会を数年後東京に開かうと云ふので会員簿にたがひに自署し、其れが蒟蒻こんにやく版に刷られてすぐに配附せられた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
さじとかこ魂棚たまだな可懷なつかしき面影おもかげに、はら/\と小雨こさめ降添ふりそそでのあはれも、やがてがた日盛ひざかりや、人間にんげんあせり、蒟蒻こんにやくすなり、はへおとつぶてる。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
どうも困つたなア庄太郎が男のやうでもない、女房の里から離縁を申し込まれて、酢の蒟蒻こんにやくのと離縁をしおらんじや。でもどうしても私は離縁ささねば置かぬ。
心の鬼 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
お関は村はづれに小さい店を開いてそこで揚物だの蒟蒻こんにやく煮などを売つてゐた。八十吉を引上げたお関の婿といふのはそこへ他村から入婿に来た若者のことであつた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
引立て拷問所へ引出し理左衞門は上座じやうざに直り是迄屡々しば/\拷問に及べども蒟蒻こんにやくのと云かすめ今に白状致さぬ故今日は此理左衞門が自身に拷問がうもんを見聞せん強情しぶといやつめと一調子てうし引上げコリヤ者共九助を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それがこの自分じぶんでもひどいやであつたが、冬至とうじるから蒟蒻こんにやく仕入しいれをしなくちやらないといつて無理むりたのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
やさしさよ、松蔭まつかげ清水しみづやなぎおとしづくこゑありて、旅人たびびとつゆわかてば、細瀧ほそだき心太ところてんたちまかれて、饂飩うどん蒟蒻こんにやくあざけるとき冷奴豆腐ひややつこたではじめてすゞしく、爪紅つまくれなゐなるかにむれ
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
もう幾人いくにんあるいたあとなので、おもふやうにはけなかつたがそれでも勘次かんじはおしなにひかされて、まだのこつて蒟蒻こんにやくかついでかへつてしまつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)