荒々あらあら)” の例文
これにはんしてきたからのかぜは、荒々あらあらしいうみなみうえを、たかけわしいやまのいただきを、たにもったゆきおもてれてくるからでありました。
大きなかしの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ああ、それでわかった。女の選手達が、大坂ダイハンのことをボンチとか、ボンボンとか呼んでいるのは、そういう意味か」と、言えば、松山さんも荒々あらあらしく
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
たとえんであろうと、ひきずってもれてかねばならぬという、つよ意地いじ手伝てつだって、荒々あらあらしくかたをかけた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そしてとうとうこらえ切れなくなって、えるようにうなって荒々あらあらしく自分の谷地やちに帰って行ったのでした。
土神ときつね (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
と、なにげなく立ちよって、なかのおい床几しょうぎの上へ安置あんちすると、土間どまのうちで荒々あらあらしい人声。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
敏子の声には今までにない、荒々あらあらしい力がこもっている。男はワイシャツの肩や胴衣チョッキに今は一ぱいにさし始めた、まばゆい日の光を鍍金めっきしながら、何ともその問に答えなかった。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
こっそり帰ってみると、柳吉はいびきをかいていた。だし抜けに、荒々あらあらしく揺すぶって、柳吉が眠い眼をあけると、「阿呆あほんだら」そしてくちびるをとがらして柳吉の顔へもって行った。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
やわらかにつもりであったが、はんして荒々あらあらしくこぶしをもかためて頭上かしらのうえ振翳ふりかざした。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
無慈悲むじひな家主はこわい顔をして、荒々あらあらしくおこって家賃の催促さいそくをしました。二人の子供はおどろきと悲しみのあまりものを言うことも出来ませんでした。首をすくめ、目をしばたたいているばかりでした。
神様の布団 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
X号は、まゆをひそめて、その機械人間を荒々あらあらしくしかりとばした。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
子供こどものころから、うみたたみうえのようにおもっているひとたちでありましたから、この荒々あらあらしいうみをもおそれてはいませんでした。
幽霊船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぼく達はすみっこでチョコレエトクリイムをもらい、二人でぼそぼそめているとき、入口のドアを荒々あらあらしくして一人のアメリカの大学生が入ってきて、なにも註文ちゅうもんせず、スタンドの前に立ち
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
余計よけい世話せわかんでもいい。』ますます荒々あらあらしくなる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
荒々あらあら右にて相尽き申す可く候。
尾形了斎覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いつしか、まちはずれ、さびしいみちにかかりますと、いままでよりいっそう、かぜは、荒々あらあらしく、つよく、いていました。
花と少女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「なに、ゆずをもいだ?」といって、足音あしおと荒々あらあらしく、縁側えんがわてこられると、おそろしいで、にらみつけて
ゆずの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あなたがこのさびしい野原のはらに、こうしてひとりでたよりなくいていられるのは、あのはたが、荒々あらあらしい、北海ほっかいなみあいだにひらめくのとおなじだとかんがえられるのです。あなたは、さびしくはありませんか。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)