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草摺
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くさずり
ふりがな文庫
“
草摺
(
くさずり
)” の例文
が、左の手は、ぶらんと落ちて、
草摺
(
くさずり
)
の
断
(
たた
)
れたような
襤褸
(
ぼろ
)
の袖の中に、肩から、ぐなりとそげている。これにこそ、わけがあろう。
貝の穴に河童の居る事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その男は、渋色の
粽頭巾
(
ちまきずきん
)
をかぶって、汚い
布直垂
(
ぬのひたたれ
)
を職人結びに後ろでむすび、片膝たてて
革胴
(
かわどう
)
の
草摺
(
くさずり
)
を大きな動作で縫っていた。
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それで主利家と同じ様に馬から仰向けに落されたのだが、落ち際に相手の
草摺
(
くさずり
)
に取付いて、諸共に川の中に引摺り込んだ。
長篠合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
そして自分は、右手で腰骨を押えながら、よろよろとそこへ膝をついていた……五弾の内一弾が、彼の腰骨を
草摺
(
くさずり
)
はずれに射抜いたのであった。
三十二刻
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
と口々にいいながら、
鎧
(
よろい
)
の袖、
草摺
(
くさずり
)
に取りすがって離れようとしない。これには維盛も、どうしようもなく、暗然と涙にむせぶばかりであった。
現代語訳 平家物語:07 第七巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
▼ もっと見る
が、その中のは
脛
(
すね
)
へばかり、脛当をあてた者があり、又腕へばかり鉄と鎖の、
籠手
(
こて
)
を嵌めたものがあり、そうかと思うと腰へばかり、
草摺
(
くさずり
)
を纏った者があった。
弓道中祖伝
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
微祿した浪人者だから、ピカ一は祖先の系圖で
草摺
(
くさずり
)
の切れた具足がお職だらうと思ふと大違ひ——
銭形平次捕物控:279 持参千両
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
今
桐生氏
(
きりゅうし
)
の子孫の家に蔵する所の
輝勝
(
てるかつ
)
の像を見るに、
南蛮胴
(
なんばんどう
)
に
黒糸縅
(
くろいとおどし
)
の
袖
(
そで
)
、
草摺
(
くさずり
)
の附いた
鎧
(
よろい
)
を着、水牛の
角
(
つの
)
のような巨大な
脇立
(
わきだて
)
のある
兜
(
かぶと
)
を
被
(
かぶ
)
って、右の手に朱色の
采旆
(
さいはい
)
を持ち
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
鎧が、考えていたよりも重いし、這うのに、
草摺
(
くさずり
)
が邪魔になった。
近藤勇と科学
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
倶利伽羅を仰ぐと早や、名だたる古戦場の面影が眉に迫って、
驚破
(
すわ
)
、松風も
鯨波
(
とき
)
の声、山の緑も
草摺
(
くさずり
)
を揺り揃えたる
数万
(
すまん
)
の
軍兵
(
ぐんぴょう
)
。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
たちまち脚下の満城の地には、
草摺
(
くさずり
)
のひびきや馬蹄の音が
鏘々
(
しょうしょう
)
と、
戛々
(
かつかつ
)
と、眼をさました
濤
(
なみ
)
のように流れ出すのが聞えてきた。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大助は
草摺
(
くさずり
)
をひきあげた。兵たちが潰れた足を取って支えた。又七郎は一刀でみごとにそれを斬り放した。そしてみずから傷口を縛ってやりながら
一人ならじ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
式部
手鑓
(
てやり
)
にて真柄が
草摺
(
くさずり
)
のはずれ、一鑓にて突きたれど、真柄物ともせず、大太刀をもって払い斬りに斬りたれば、匂坂が
甲
(
かぶと
)
の吹返しを打ち砕き、余る太刀にて鑓を打落す。
姉川合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
実盛は、郎党の首を
前輪
(
まえわ
)
にひき寄せると、頸をかき切った。目前に、家来の討たれるのを見た光盛は、実盛の左手に寄ると、鎧の
草摺
(
くさずり
)
を引きあげて、ぐいと刀を二度突きさした。
現代語訳 平家物語:07 第七巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
赤地
(
あかぢ
)
、
蜀紅
(
しよくこう
)
なんど
錦襴
(
きんらん
)
の
直垂
(
ひたゝれ
)
の
上
(
うへ
)
へ、
草摺
(
くさずり
)
曳
(
ひ
)
いて、さつく/\と
鎧
(
よろ
)
ふが
如
(
ごと
)
く
繰擴
(
くりひろ
)
がつて、
人
(
ひと
)
の
俤
(
おもかげ
)
立昇
(
たちのぼ
)
る、
遠近
(
をちこち
)
の
夕煙
(
ゆふけむり
)
は、
紫
(
むらさき
)
籠
(
こ
)
めて
裾濃
(
すそご
)
に
靡
(
なび
)
く。
魔法罎
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
螺鈿鞍
(
らでんぐら
)
をおいた駒の背にとび乗り、八文字に開かれている中門から大手の土坡口へ、
鏘々
(
そうそう
)
と、
鎧
(
よろい
)
の
草摺
(
くさずり
)
や太刀の響きをさせて駈け出して来た。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
草摺
(
くさずり
)
のあとも残らず千切れた鎧を着け、
鋸
(
のこぎり
)
のように刃こぼれのした太刀を持って、湿った土の上に
俯伏
(
うつぶ
)
せに倒れていたひとりの武者の前に立ち、しずかに経文を唱えはじめると
荒法師
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
景経が痛手にひるむところを、弥太郎が隣の舟からかけつけて、景経に取組み、上になったところへ、弥太郎の家来が駆けつけ、景経の鎧の
草摺
(
くさずり
)
を引き上げ、三度、刺し通してから首を取った。
現代語訳 平家物語:11 第十一巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
当時の鉄砲の射程内は、およそ三十間どまりといわれているが、それも精いっぱいに届いた弾では、
鎧
(
よろい
)
の
草摺
(
くさずり
)
や
革胴
(
かわどう
)
から撥ね返されてしまうのだ。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
喉輪
(
のどわ
)
か脇壺か、または
草摺
(
くさずり
)
はずれを刺し通して相手を倒すと、そのまま見向きもせずに次の強敵に向って斬り込んでゆく、いま自分の討った相手がどんな高名な部将であろうとも
石ころ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
雫
(
しずく
)
を帯びて、人待石——巨石の割目に茂った、露草の花、
蓼
(
たで
)
の
紅
(
くれない
)
も、ここに腰掛けたという判官のその山伏の姿よりは、
爽
(
さわや
)
かに
鎧
(
よろ
)
うたる、色よき
縅毛
(
おどしげ
)
を思わせて、
黄金
(
こがね
)
の太刀も
草摺
(
くさずり
)
も鳴るよ
瓜の涙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
菊王丸は、
草摺
(
くさずり
)
のはずれを向う側まで射通されて、四つんばいになった。教経は、左手に弓を持ったまま、右手で菊王丸をつかむと、船へ、からりと投げ入れたが、深傷であったから直ぐ息が絶えた。
現代語訳 平家物語:11 第十一巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
そして鎧のアイビキ
紐
(
ひも
)
、
草摺
(
くさずり
)
のクリシメ
紐
(
ひも
)
、陣太刀の
緒
(
お
)
と、
端
(
はし
)
からキチキチむすんでゆく指の早さといったらない。まるで
神技
(
かみわざ
)
と思わるるくらいだ。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
角の九つある、竜が、
頭
(
かしら
)
を
兜
(
かぶと
)
に、尾を
草摺
(
くさずり
)
に敷いて、敵に向う大将軍を飾ったように。……けれども、虹には目がないから、私の姿が見つからないので、
頭
(
かしら
)
を水に浸して、うなだれ
悄
(
しお
)
れている。
紅玉
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
草摺
(
くさずり
)
にも、折れ矢が立っている。いつかだいぶ深く入っていたのだ。横にもうしろにも、敵方の武者声がする。
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
角
(
つの
)
の
九
(
ここの
)
つある、竜が、
頭
(
かしら
)
を
兜
(
かぶと
)
に、尾を
草摺
(
くさずり
)
に敷いて、敵に向ふ大将軍を飾つたやうに。……けれども、虹には目がないから、
私
(
わたし
)
の姿が見つからないので、
頭
(
かしら
)
を水に浸して、うなだれ
悄
(
しお
)
れて居る。
紅玉
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
戛々
(
かつかつ
)
と、おびただしい
蹄
(
ひづめ
)
の音や、
草摺
(
くさずり
)
のひびきや、その人馬の足もとから揚るほこりにつつまれながら——
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
二階へばたばたと
駈上
(
かけあが
)
り、御注進と云う処を、
鎧
(
よろい
)
が
縞
(
しま
)
の
半纏
(
はんてん
)
で、
草摺
(
くさずり
)
短
(
みじか
)
な格子の前掛、ものが無常だけに、ト手は
飜
(
ひるがえ
)
さず、すなわち尋常に
黒繻子
(
くろじゅす
)
の襟を合わせて、火鉢の向うへ中腰で細くなる……
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
部屋には、仕事用の長板やら、
錣
(
しころ
)
の糸掛け、
草摺
(
くさずり
)
掛けなどを置き、染革の切れッぱしだの
膠鍋
(
にかわなべ
)
が、ざつぜんと、散らかっている。ときには、万年
寝床
(
どこ
)
も敷きっぱなしだ。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
清盛は、
具足櫃
(
ぐそくびつ
)
から、胴、すね
当
(
あて
)
、
草摺
(
くさずり
)
など、つかみ出しては、手ばやく、身に着けながら
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
覆布
(
おおい
)
の下には、血にそんだ
鎧
(
よろい
)
の
草摺
(
くさずり
)
の片袖と、
血糊
(
のり
)
によごれた黒髪とが
載
(
の
)
せられてあった。
日本名婦伝:大楠公夫人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
敵に
捥
(
も
)
ぎとられてしまったのか、進軍の途上、信長の馬前にすがって、
陣借
(
じんがり
)
して参加した甲州
牢人
(
ろうにん
)
の
桑原甚内
(
くわばらじんない
)
などは、腰から下の具足や
草摺
(
くさずり
)
は着けていたが、上半身の鎧は失って、半裸体のまま
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
馬蹄
(
ひづめ
)
の音や、
草摺
(
くさずり
)
の音が、にわかに、
仮借
(
かしゃく
)
ない厳しさをそこに
漲
(
みなぎ
)
らせ
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
よろいの
草摺
(
くさずり
)
は片袖もがれ、
兜
(
かぶと
)
も失い、髪はさっと風に立っている。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
どさと、
草摺
(
くさずり
)
の響きをさせて、板床へ、ひざまずいた。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
草
常用漢字
小1
部首:⾋
9画
摺
漢検準1級
部首:⼿
14画
“草摺”で始まる語句
草摺引
草摺長