胡魔化ごまか)” の例文
旦那、そういわないで見ておくんなさい。わしは生れつき胡魔化ごまかすのが嫌いでネ、なるべくこうしてお手隙の午前中に伺って、品物を
軍用鼠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
吾輩は少々気味が悪くなったから善い加減にその場を胡魔化ごまかしてうちへ帰った。この時から吾輩は決して鼠をとるまいと決心した。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
請負人うけおひにんは払ふべき手間てまを払ひ、胡魔化ごまかされる丈け胡魔化してカスリを取り、労働者は皆一度におのが村々へ帰ることになつた。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
胡魔化ごまかすんじゃないよ。今云う吾輩の脳髄論と大関係があるんだ。探偵小説というものは要するに脳髄のスポーツだからね。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
基督キリスト教の教えるところは果して正しいのであろうか。それはただ、人の心を胡魔化ごまかす麻酔剤にすぎないのではなかろうか。
そしてまた中には、我知らず騷ぎ立ててしまつたうしろめたさを胡魔化ごまかさうとして、故意に再び喧囂の内に隱れようとした者さへあつたのである。
猫又先生 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
書物をく読むといなとは人々の才不才さいふさいにもりますけれども、かくも外面を胡魔化ごまかして何年居るから登級とうきゅうするの卒業するのとうことは絶えてなく
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「ようやく毛が四、五寸そろったところで、付けまげか何んかで胡魔化ごまかし、宮永町の石井へ乗込んだのは去年の春」
それは板や柱の腐れ掛った所は土やペンキを塗って胡魔化ごまかしてあるからちょっと見ただけでは分らぬといって
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
何しろ百キロ以上も離れている山を正確に見ようというのですから、むずかしい話で、多少だまされても仕方がない、仕方がないから胡魔化ごまかして置きます。
望岳都東京 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
少し胡魔化ごまかしたように見えるが、この話の秘訣ひけつは、鉛筆で描いた線には幅があるという点に帰するのである。
地球の円い話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
ついには主人の金品を胡魔化ごまかす、仕入部と工場に忌わしい連絡が結ばれる、とうとう陥る所までおちて馘首かくしゅされ、昨日の店員も今日からは他人となり縁が絶えてしまう。
八千円ばかりの金高から百円を帳面ちょうづら胡魔化ごまかすことは、たとい自分に為し得ても、直ぐあと発覚ばれる。又自分にはさる不正なことは思ってみるだけでも身がふるえるようだ。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
聴けば、杉田先生はお年寄役だけに、三十六計の奥の手も余り穏かならじとあって、単身踏みとどまり、なんとかかんとか胡魔化ごまかして、荷物をことごとく巻上げて来たとの事だ。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
いいや、そんな泣きごとで、胡魔化ごまかそうとしたって駄目だ——思いもかけねえこの宿屋に、ちっとは骨のあるこの俺が居合せたんで胆を抜かれて、いい加減な出たら目で、人を
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「こいつ、胡魔化ごまかごとをいうて、このほうを、小馬鹿にいたすな」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まだ白っぱくれているな。吾々の眼はもう胡魔化ごまかされんぞ。白丘ダリアが嫌いだったら、『赤外線男』として汝を捕縛ほばくする。それッ」
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
何だあのざまは。馴染の芸者がはいってくると、入れ代りに席をはずして、逃げるなんて、どこまでも人を胡魔化ごまかす気だから気に食わない。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
道徳上の罪までも胡魔化ごまかせるかも知れないというのですから、これ位アクドイ、残酷な悪戯いたずらは又と在るまいと思われるじゃないですか先生……
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
最小労力で胡魔化ごまかす術は実験の方で大分こつが分っているので、墨の濃度を色々かえたり、線の形だの太さだのを工夫したりして、順序立てて色々やって見て
南画を描く話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
仏法の修行しゅぎょうが充分出来て居るではなし、わずかにこの身をのがれて来たからといって、世界に対する義務とか何とか書生の喜ぶような事をいって胡魔化ごまかそうとしても
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
日頃仲のよく無い秋山彌十、自分の腕の鈍さを胡魔化ごまかすために、何彼と余計な策動をする秋山彌十が、富山七之助に対する反感がつのって、見切札の悪戯をしないとは言い切れません。
かつて祖母が吹聴ふいちょうしたものとはまるっきり違っていたことを余りにもはっきりとわからせないように胡魔化ごまかすためだったのだろう、余りにひどい筒袖つつそでの衣類などははねのけてしまって
「やい、胡魔化ごまかすな」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今夜はね、根岸ねぎしさとへ行って来るって胡魔化ごまかして来たのよ。私だって、たまにはゆっくりとまって見たいもの。——大丈夫よ。
白蛇の死 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そうして、それは昨日誠太郎を好加減に胡魔化ごまかして返した反響だろうと想像した。五六分雑談をしているうちに、兄はとうとうこう云い出した。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
第一お前は平常いつもと違って三時間以上余計に朝寝をしていたのはどういう訳か。絞め殺しておいて胡魔化ごまかすつもりで寝ていたのが、つい寝過したのじゃないか。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
雪の全種類の結晶が、気温と水蒸気の量とを変えることにって出来るといったのは実は少し胡魔化ごまかしがあるので、自然のたくみはなかなかそう簡単ではないようである。
雪雑記 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
密使みっし油蹈天ゆうとうてんをはるばる上海シャンハイつかわして、金博士の最新発明になる“人造人間戦車”の設計図を胡魔化ごまかしに行かせたのであった。
ござんすよ。胡魔化ごまかさないでも。ちゃんと分ってるんだから。だから正直にそうだと云って御しまいなさい。そうでないと、後が話せないから」
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
とか何とかいったような出鱈目でたらめで、別荘附近の人々を胡魔化ごまかしてしまいました。
キチガイ地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
もっともアナウンスの外に音楽もはいるのであるから、底に低く音楽を流すと、いくらでも胡魔化ごまかしが効くらしいということも、少しやっているうちには分って、この方もちょっと面白かった。
映画を作る話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
私のこせつき方は頭の中の現象で、それほど外へ出なかったようにも考えられますから、あるいは奥さんの方で胡魔化ごまかされていたのかもわかりません。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
上家をはじめ他の人達がよく注意して居れば勿論こんな馬鹿馬鹿しい胡魔化ごまかしにはかからないが、すこしたたかいたけなわになって来ると、よくこれが行われる。
麻雀インチキ物語 (新字新仮名) / 海野十三(著)
帽子の大きいのと靴の小さいのには閉口したが、それでもどうにか胡魔化ごまかした。
冥土行進曲 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それにしても、なんだかうまく胡魔化ごまかされたようなところがあるような気がして、自分の部屋へ帰ると、リーマン博士の言葉をもう一度復習してみた。
宇宙尖兵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
厭味いやみで練りかためたような赤シャツが存外親切で、おれに余所よそながら注意をしてくれるかと思うと、マドンナを胡魔化ごまかしたり、胡魔化したのかと思うと
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
頼むから、ちょっと胡魔化ごまかして踊らせてやったのだ
豚吉とヒョロ子 (新字新仮名) / 夢野久作三鳥山人(著)
君に懸物かけもの骨董こっとうを売りつけて、商売にしようと思ってたところが、君が取り合わないでもうけがないものだから、あんな作りごとをこしらえて胡魔化ごまかしたのだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これが普通の場合だったら、旦那どの胤だと、胡魔化ごまかせるんだが、生憎あいにくと、その旦那どのというのは、女に子を産ませる力がないことが医学的に判っているのだ。
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その鍵だけは監視人の眼も胡魔化ごまかしおおせて、いまだに僕の手にあり、僕はそれを唯一の玩具——いや宝物として退屈きわまる毎日をわずかに慰めていたのだった。
鍵から抜け出した女 (新字新仮名) / 海野十三(著)
実は行徳の俎と云う語を主人はかいさないのであるが、さすが永年教師をして胡魔化ごまかしつけているものだから、こんな時には教場の経験を社交上にも応用するのである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「おう……俺を見忘れたか。手前なんかに胡魔化ごまかされる俺と俺が違わあ……どうだ、話は穏かにつけよう。あの青二才から捲き上げた金を五十両ほど黙って俺に貸せッ」
(新字新仮名) / 海野十三(著)
宗助そうすけはとう/\はうとしたこと勇氣ゆうきうしなつて、うそいて胡魔化ごまかした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あれは郵便局で押したものではなく、手製の胡魔化ごまかしものですよ。だからあの小包を持って来た郵便局の配達夫というのは、恐らく蠅男の変装だったにちがいありません。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一口ひとくちでいうと、叔父はわたくしの財産を胡魔化ごまかしたのです。事は私が東京へ出ている三年の間に容易たやすく行われたのです。すべてを叔父まかせにして平気でいた私は、世間的にいえば本当の馬鹿でした。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
丘田医師はかねてヘロインを手にしてからというものは、パントポンの代りに、この粗製品を使って世間を胡魔化ごまかしていたことは、帆村の調査によって証拠だてられたところだ。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ただ、それには又父を胡魔化ごまかす必要が出て来るに違なかった。代助は腹の中で今までのわれを冷笑した。彼はどうしても、今日の告白をもって、自己の運命の半分を破壊したものと認めたかった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
やむを得ず筆を停めて胡魔化ごまかした。今日こそは手記風に書きたく思う。
大脳手術 (新字新仮名) / 海野十三(著)
胡魔化ごまかされるのはどっちにしても同じでしょうけれども、せられ方からいえば、従妹をもらわない方が、向うの思い通りにならないという点から見て、少しは私のが通った事になるのですから。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)