うけが)” の例文
平野老人は首を振ってうけがいませんでした。市川の言ったことをねつけることによって、自分がもてあました言葉尻が立て直りました。
それ程でなくっても、父と兄の財産が、彼等の脳力と手腕だけで、誰が見ても尤と認める様に、作り上げられたとはうけがわなかった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
右のかたなる離れし處に魂のむれあり、汝うけがはば我は汝を彼等の許に導かむ、汝彼等を知るを喜びとせざることあらじ。 四六—四八
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
はるばると二四三尋ねまどひ給ふ御心ねのいとほしきに、豊雄うけがはずとも、我々とどめまゐらせんとて、一なる所に迎へける。
何うかして誰が見てもそれとうけがはれるやうな人物を点出したい。傀儡でない人物を点出したい。かう思はないものは誰もない。
存在 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
「いいでせう、話して見ませう」とはつきりうけがうた自分の言葉に對しても興奮してゐた。何しろかうしたことは始めての經驗であつたから。
続生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
彼が罪なくて牢獄の人となった時には勿論もちろん人をうらまなかった、弟子などがあつまって来て、しきりに弁護せよ弁護せよと勧告するけれど断乎だんことしてうけがわない。
ソクラテス (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
さりながら人が「石川成章は一に関氏五郎若くは石川氏関五郎と云つた」と云つて、万事解決せられてゐると以為おもふのは、わたくしのうけがひ難い所である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
それをうけがって、却って後に不幸を招くようなことをするよりは、静に考え、寧ろ結婚するよりは、友達として平和な交際を続けることを勧めるほかないことさえあります。
男女交際より家庭生活へ (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
かくてぞ母様はいとど我の輿入れ急ぎたまへど、方様はいつも同じやうなる事のみいひてうけがひたまはず。されど月日経る内には方様も男世帯の不自由に堪えかねたまひてや。
葛のうら葉 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
人間と人間と触れ合うことは無限の味、幸福、涙である。そのとき人は死をうけがうことさえ辞さないのである。それを思えば自分は一人の人間をも除さず縁を結びたい気がする。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
姉夫婦は真女児のことばに道理があるので疑いを晴らして、「さるためしあるべき世にもあらずかし、はるばるとたずねまどい給う御心おんこころねのいとおしきに、豊雄うけがわずとも、我々とどめまいらせん」
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
流転の途は厭はせられたりしも人我にんがの空をばうけがひは為玉はざりしや、何とて幺微いさゝかの御事に忌はしくも自ら躓かせたまひて、のりの便りの牛車を棄て、罪の齎らす火輪にもさんとは思したまふ
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
たゞ平岡と事を決する前は、麺麭パンために働らく事をうけがはぬ心を持つてゐたから、あによめ贈物おくりものが、此際このさい糧食としてことに彼にはたつとかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
習慣ならはしはかしこにてかく我等のしるべとなれり、しかしてかの貴き魂のうけがへるため我等いよいよ疑はずして路に就けり 一二四—一二六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
しかし、この舟の者が、こうまで心配していることを見計らって、相当の気休めを言ったつもりなのだろうが、それをうけがわない清澄の茂太郎が
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
商人となりて京に一〇まうのぼらんことを頼みしに、雀部いとやすくうけがひて、いつのころはまかるべしと聞えける。
黙翁は老いてやむに至って、福山氏に嫁した寿美を以て、善庵にじつを告げさせ、本姓に復することを勧めた。しかし善庵は黙翁の撫育ぶいくの恩に感じてうけがわず、黙翁もまた強いて言わなかった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
法味を永遠に楽ませ玉へ、と思入つて諫めたてまつれば、院の御霊は雲間に響く御声してから/\と異様ことやうに笑はせ玉ひ、おろかや解脱の法を説くとも、仏も今はあだなり、涅槃ねはん無漏むろうけがはじ
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
うけがおうとしないがんこな、いこじな心理があるように思える。
それ程でなくつても、ちゝあにの財産が、彼等の脳力と手腕丈で、だれが見てももつともと認める様に、つくげられたとはうけがはなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いざ汝して知るべし、人うけがひて神また肯ひかくして誓ひ成るならんには、そのいととほときものなることを 二五—二七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
元治がんじ元年に京都で暗殺された佐久間象山の門生が二人——ちょうどこの宿屋に泊り合せていたのがうけがいません。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
三一てきすべからねば、おそらくはうけがひ給はじ。媒氏なかだちの翁ゑみをつくりて、大人うしくだり給ふ事甚し。
ただ平岡と事を決する前は、麺麭パンの為に働らく事をうけがわぬ心を持っていたから、嫂の贈物が、この際糧食としてことに彼にはたっとかった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かれに代りてうけがへる女は、かれとその嗣子よつぎ等とより出づるにいたるしきを己が眠れる間に見たり 六四—六六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
逸見利恭は鉄扇を砕くるばかりに握って、これも眼中に穏かならぬ色をたたえて、この勝負を見張っていたが、「分けよう」という一心斎が眼の中の相談を、なぜか軽く左右に首を振ってうけがいません。
彼はその手段として、父やあによめから勧められていた結婚に思い至った。そうして、この結婚をうけがう事が、すべての関係をあらたにするものと考えた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
弁信はそれをうけがおうともしませんで
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
道義的情操に関する言辞(詩歌感想を含む)はその言辞を実現し得たるとき始めてをしてその誠実をうけがはしむるのが常である。
艇長の遺書と中佐の詩 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
反駁はんぱくをする日には、はなしが段々込み入るばかりで、此方こちらの思ふ所は決して、梅子の耳へ通らないと考へた。けれども向ふの云ひぶんうけがふ気は丸でなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
私がうけがおうと肯うまいと、それには頓着とんじゃくする必要がない、ただその時の私から好い影響を受けて、一時的にせよ苦しい不安をまぬかれたのだと、兄さんは断言するのです。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
人事を離れた天然にいても、前同様の批評を如何いかな読者も容易にうけがわなければまぬ程、作者は鬼怒川きぬがわ沿岸の景色や、空や、春や、秋や、雪や風を綿密に研究している。
又其特殊な趣味が容易に多数にうけがわれない所を、決然身を挺して唱道する所が、評家会心の点らしい。文壇はこれがために、新領土を手に入れたと同じ訳になるからである。
長塚節氏の小説「土」 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
どこまでも我は我で通している。人の威圧やら束縛をけっしてうけがわない。信仰の点においても、趣味の点においても、あらゆる意見においても、かつて雷同附和の必要を認めない。
文壇の趨勢 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一たび此論断をうけがつたとき、彼等は彼等の主観のうちに、又彼等の理想のうちに、彼等の平素排斥しつゝあるが如く見ゆるもろ/\の善、もろ/\の美、又もろ/\の壮と烈との存在を肯はねばならぬ。
文芸とヒロイツク (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さいわいに知らざる人の盾を借りて、知らざる人の袖をまとい、二十三十の騎士をたおすまで深くわがおもてを包まば、ランスロットと名乗りをあげて人驚かす夕暮に、——たれかれ共にわざと後れたる我をうけがわん。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
K君はまだ私の云う事をうけがわない様子であった。私も強情であった。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けれどもこういう風に一々彼をうけがわせるほどの判断を、彼の頭に鉄椎てっついたたき込むように入れてくれる松本はそもそも何者だろうか、その点になると敬太郎は依然として茫漠ぼうばくたる雲に対する思があった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)