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肯
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うけが
ふりがな文庫
“
肯
(
うけが
)” の例文
平野老人は首を振って
肯
(
うけが
)
いませんでした。市川の言ったことを
刎
(
は
)
ねつけることによって、自分がもてあました言葉尻が立て直りました。
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それ程でなくっても、父と兄の財産が、彼等の脳力と手腕だけで、誰が見ても尤と認める様に、作り上げられたとは
肯
(
うけが
)
わなかった。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
右の
方
(
かた
)
なる離れし處に魂の
群
(
むれ
)
あり、汝
肯
(
うけが
)
はば我は汝を彼等の許に導かむ、汝彼等を知るを喜びとせざることあらじ。 四六—四八
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
はるばると
二四三
尋ねまどひ給ふ御心ねのいとほしきに、豊雄
肯
(
うけが
)
はずとも、我々とどめまゐらせんとて、一
間
(
ま
)
なる所に迎へける。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
何うかして誰が見てもそれと
肯
(
うけが
)
はれるやうな人物を点出したい。傀儡でない人物を点出したい。かう思はないものは誰もない。
存在
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
▼ もっと見る
「いいでせう、話して見ませう」とはつきり
肯
(
うけが
)
うた自分の言葉に對しても興奮してゐた。何しろかうしたことは始めての經驗であつたから。
続生活の探求
(旧字旧仮名)
/
島木健作
(著)
彼が罪なくて牢獄の人となった時には
勿論
(
もちろん
)
人を
恨
(
うら
)
まなかった、弟子などが
集
(
あつま
)
って来て、
頻
(
しき
)
りに弁護せよ弁護せよと勧告するけれど
断乎
(
だんこ
)
として
肯
(
うけが
)
わない。
ソクラテス
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
さりながら人が「石川成章は一に関氏五郎若くは石川氏関五郎と云つた」と云つて、万事解決せられてゐると
以為
(
おも
)
ふのは、わたくしの
肯
(
うけが
)
ひ難い所である。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
それを
肯
(
うけが
)
って、却って後に不幸を招くようなことをするよりは、静に考え、寧ろ結婚するよりは、友達として平和な交際を続けることを勧めるほかないことさえあります。
男女交際より家庭生活へ
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
かくてぞ母様はいとど我の輿入れ急ぎたまへど、方様はいつも同じやうなる事のみいひて
肯
(
うけが
)
ひたまはず。されど月日経る内には方様も男世帯の不自由に堪えかねたまひてや。
葛のうら葉
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
人間と人間と触れ合うことは無限の味、幸福、涙である。そのとき人は死を
肯
(
うけが
)
うことさえ辞さないのである。それを思えば自分は一人の人間をも除さず縁を結びたい気がする。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
姉夫婦は真女児の
詞
(
ことば
)
に道理があるので疑いを晴らして、「さる
例
(
ためし
)
あるべき世にもあらずかし、はるばるとたずねまどい給う
御心
(
おんこころ
)
ねのいとおしきに、豊雄
肯
(
うけが
)
わずとも、我々とどめまいらせん」
蛇性の婬 :雷峰怪蹟
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
流転の途は厭はせられたりしも
人我
(
にんが
)
の空をば
肯
(
うけが
)
ひは為玉はざりしや、何とて
幺微
(
いさゝか
)
の御事に忌はしくも自ら躓かせたまひて、
法
(
のり
)
の便りの牛車を棄て、罪の齎らす火輪にも
駕
(
が
)
さんとは思したまふ
二日物語
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
たゞ平岡と事を決する前は、
麺麭
(
パン
)
の
為
(
ため
)
に働らく事を
肯
(
うけが
)
はぬ心を持つてゐたから、
嫂
(
あによめ
)
の
贈物
(
おくりもの
)
が、
此際
(
このさい
)
糧食としてことに彼には
貴
(
たつ
)
とかつた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
習慣
(
ならはし
)
はかしこにてかく我等の
導
(
しるべ
)
となれり、しかしてかの貴き魂の
肯
(
うけが
)
へるため我等いよいよ疑はずして路に就けり 一二四—一二六
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
しかし、この舟の者が、こうまで心配していることを見計らって、相当の気休めを言ったつもりなのだろうが、それを
肯
(
うけが
)
わない清澄の茂太郎が
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
商人となりて京に
一〇
まうのぼらんことを頼みしに、雀部いとやすく
肯
(
うけが
)
ひて、いつの
比
(
ころ
)
はまかるべしと聞えける。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
黙翁は老いて
病
(
やむ
)
に至って、福山氏に嫁した寿美を以て、善庵に
実
(
じつ
)
を告げさせ、本姓に復することを勧めた。しかし善庵は黙翁の
撫育
(
ぶいく
)
の恩に感じて
肯
(
うけが
)
わず、黙翁もまた強いて言わなかった。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
法味を永遠に楽ませ玉へ、と思入つて諫めたてまつれば、院の御霊は雲間に響く御声してから/\と
異様
(
ことやう
)
に笑はせ玉ひ、おろかや解脱の法を説くとも、仏も今は
朕
(
わ
)
が
敵
(
あだ
)
なり、
涅槃
(
ねはん
)
も
無漏
(
むろ
)
も
肯
(
うけが
)
はじ
二日物語
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
肯
(
うけが
)
おうとしないがんこな、いこじな心理があるように思える。
誰のために:インテリゲンツィアと民主主義の課題
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
それ程でなくつても、
父
(
ちゝ
)
と
兄
(
あに
)
の財産が、彼等の脳力と手腕丈で、
誰
(
だれ
)
が見ても
尤
(
もつとも
)
と認める様に、
作
(
つく
)
り
上
(
あ
)
げられたとは
肯
(
うけが
)
はなかつた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
いざ汝
推
(
お
)
して知るべし、人
肯
(
うけが
)
ひて神また肯ひかくして誓ひ成るならんには、そのいと
貴
(
とほと
)
きものなることを 二五—二七
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
元治
(
がんじ
)
元年に京都で暗殺された佐久間象山の門生が二人——ちょうどこの宿屋に泊り合せていたのが
肯
(
うけが
)
いません。
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
三一
門
戸
(
こ
)
敵
(
てき
)
すべからねば、おそらくは
肯
(
うけが
)
ひ給はじ。
媒氏
(
なかだち
)
の翁
笑
(
ゑみ
)
をつくりて、
大人
(
うし
)
の
謙
(
くだ
)
り給ふ事甚し。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
ただ平岡と事を決する前は、
麺麭
(
パン
)
の為に働らく事を
肯
(
うけが
)
わぬ心を持っていたから、嫂の贈物が、この際糧食としてことに彼には
貴
(
たっ
)
とかった。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
かれに代りて
肯
(
うけが
)
へる女は、かれとその
嗣子
(
よつぎ
)
等とより出づるにいたる
奇
(
く
)
しき
果
(
み
)
を己が眠れる間に見たり 六四—六六
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
逸見利恭は鉄扇を砕くるばかりに握って、これも眼中に穏かならぬ色を
湛
(
たた
)
えて、この勝負を見張っていたが、「分けよう」という一心斎が眼の中の相談を、なぜか軽く左右に首を振って
肯
(
うけが
)
いません。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
彼はその手段として、父や
嫂
(
あによめ
)
から勧められていた結婚に思い至った。そうして、この結婚を
肯
(
うけが
)
う事が、
凡
(
すべ
)
ての関係を
新
(
あらた
)
にするものと考えた。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
弁信はそれを
肯
(
うけが
)
おうともしませんで
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
道義的情操に関する言辞(詩歌感想を含む)は
其
(
その
)
言辞を実現し得たるとき始めて
他
(
た
)
をして
其
(
その
)
誠実を
肯
(
うけが
)
はしむるのが常である。
艇長の遺書と中佐の詩
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
若
(
も
)
し
反駁
(
はんぱく
)
をする日には、
話
(
はなし
)
が段々込み入る
許
(
ばかり
)
で、
此方
(
こちら
)
の思ふ所は決して、梅子の耳へ通らないと考へた。けれども向ふの云ひ
分
(
ぶん
)
を
肯
(
うけが
)
ふ気は丸でなかつた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
私が
肯
(
うけが
)
おうと肯うまいと、それには
頓着
(
とんじゃく
)
する必要がない、ただその時の私から好い影響を受けて、一時的にせよ苦しい不安を
免
(
まぬ
)
かれたのだと、兄さんは断言するのです。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
人事を離れた天然に
就
(
つ
)
いても、前同様の批評を
如何
(
いか
)
な読者も容易に
肯
(
うけが
)
わなければ
済
(
す
)
まぬ程、作者は
鬼怒川
(
きぬがわ
)
沿岸の景色や、空や、春や、秋や、雪や風を綿密に研究している。
『土』に就て:長塚節著『土』序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
又其特殊な趣味が容易に多数に
肯
(
うけが
)
われない所を、決然身を挺して唱道する所が、評家会心の点らしい。文壇はこれがために、新領土を手に入れたと同じ訳になるからである。
長塚節氏の小説「土」
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
どこまでも我は我で通している。人の威圧やら束縛をけっして
肯
(
うけが
)
わない。信仰の点においても、趣味の点においても、あらゆる意見においても、かつて雷同附和の必要を認めない。
文壇の趨勢
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
一たび此論断を
肯
(
うけが
)
つたとき、彼等は彼等の主観のうちに、又彼等の理想のうちに、彼等の平素排斥しつゝあるが如く見ゆる
諸
(
もろ/\
)
の善、
諸
(
もろ/\
)
の美、又もろ/\の壮と烈との存在を肯はねばならぬ。
文芸とヒロイツク
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
今
幸
(
さいわい
)
に知らざる人の盾を借りて、知らざる人の袖を
纏
(
まと
)
い、二十三十の騎士を
斃
(
たお
)
すまで深くわが
面
(
おもて
)
を包まば、ランスロットと名乗りをあげて人驚かす夕暮に、——
誰
(
たれ
)
彼
(
かれ
)
共にわざと後れたる我を
肯
(
うけが
)
わん。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
K君はまだ私の云う事を
肯
(
うけが
)
わない様子であった。私も強情であった。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
けれどもこういう風に一々彼を
肯
(
うけが
)
わせるほどの判断を、彼の頭に
鉄椎
(
てっつい
)
で
叩
(
たた
)
き込むように入れてくれる松本はそもそも何者だろうか、その点になると敬太郎は依然として
茫漠
(
ぼうばく
)
たる雲に対する思があった。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
肯
常用漢字
中学
部首:⾁
8画
“肯”を含む語句
首肯
肯分
肯定
肯入
肯綮
北爾肯州
受肯
弁肯
御肯入
御首肯
肯定者
肯諾
肯首
首肯点頭