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かえ
ふりがな文庫
“
翻
(
かえ
)” の例文
旧字:
飜
女は身を
翻
(
かえ
)
すと、掛け香を三十もブラ下げたような
妖
(
あや
)
しく、艶かしい香気を発散させて、八五郎の膝へ存分に身を投げかけるのでした。
銭形平次捕物控:034 謎の鍵穴
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
長い曲線的の頸は頸と絡み合っている、長い尾は、旗の如く風に
翻
(
かえ
)
っている。ただそこに異った、
険
(
けわ
)
しげな眼と、柔和の眼とが光っていた。
森の暗き夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
と、河原の兵を、
叱咤
(
しった
)
しながら、
一矢
(
いっし
)
をつがえると、ぶつんと切って放ち、すぐまた、矢を噛ませては、びゅんと
弦
(
つる
)
を
翻
(
かえ
)
した。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
掌
(
てのひら
)
を
翻
(
かえ
)
したようで
可笑
(
おか
)
しいが、僕は今はお父さんに日本中の面白いところを是非隈なく歩いて戴かなければならない。その
次第
(
わけ
)
は先ず斯うだ。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
直ぐに
御歩行
(
おはこび
)
かと思うと、まだそれから両手へ手袋を
嵌
(
は
)
めたが、念入りに片手ずつ手首へぐっと
扱
(
しご
)
いた時、
襦袢
(
じゅばん
)
の裏の紅いのがチラリと
翻
(
かえ
)
る。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
その底をくぐって進んで行く
鋏
(
はさみ
)
の律動につれてムクムクと動いていた。
鋏
(
はさみ
)
をあげて
翻
(
かえ
)
すと切られた葉のかたまりはバラバラに砕けて横に飛び散った。
芝刈り
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
よくよく気が合わぬのだと思って、心の
中
(
うち
)
で泣くよりほかなかった。新吉の仕向けは、まるで
掌
(
て
)
の
裏
(
うら
)
を
翻
(
かえ
)
したようになって、顔を見るのも
胸糞
(
むねくそ
)
が悪そうであった。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
珍しい発見をしたように、彼は馬から身を
翻
(
かえ
)
しておりた。二人の資人はすぐ、
馳
(
か
)
け寄って手綱を控えた。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
ムーと云うとぶっ倒れると、もう槍は手もとへ引かれ、引かれたと思う隙もなく、
颯
(
さっ
)
と
翻
(
かえ
)
った石突きが二番目の水狐族の
咽喉
(
のど
)
を刺す。ムーと云ってこれも倒れる。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
腮
(
あご
)
から、耳の下を
頸
(
くび
)
に掛けて、障ったら、指に軽い抗抵をなして
窪
(
くぼ
)
みそうな、
鵇色
(
ときいろ
)
の肌の見えているのと、ペエジを
翻
(
かえ
)
す手の一つ一つの指の節に、
抉
(
えぐ
)
ったような窪みの附いているのとの上を
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「
本当
(
ほんと
)
に好くってよ、然う遠慮しないでも。今持って来てよ」、と蝶の舞うように
翻然
(
ひらり
)
と身を
翻
(
かえ
)
して、部屋を出て、姿は直ぐ見えなくなったが、其処らで若い華やかな声で、「其代り小さくッてよ」
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
相逢無語翻多恨
相
(
あ
)
い
逢
(
あ
)
いて
語
(
ことば
)
無
(
な
)
く
翻
(
かえ
)
って
多恨
(
なごりお
)
し
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
我れを
突仆
(
つきたお
)
した稽古槍の先は、せつな、火の出るように覚えた眼の上をさっと
翻
(
かえ
)
り、道場の隅へすぐ投げ捨てられた音が、からからと聞えた。
剣の四君子:04 高橋泥舟
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
といった調子、荒い浴衣の袖を
翻
(
かえ
)
して、ニッコリすると、その辺じゅう桃色の
媚
(
こび
)
が
撒
(
ま
)
き散らされて、何もかも匂いそうです。
銭形平次捕物控:030 くるい咲き
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
……あ、あ、と思ううちに、妹のが誘われて、こう並んでひらひらと行く。後のの
裾
(
すそ
)
が
翻
(
かえ
)
ったと見る時、ガタリと云って羅の抜けたあとへ衣紋竹が落ちました。
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そして身を
翻
(
かえ
)
すと、門外へ走り出て、ふたたびその馬上姿を、県城の町のほうへ、
燕
(
つばめ
)
のごとく小さくしていった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
右手に
閃
(
ひらめ
)
く龕灯、そのまま、後ろの焔硝樽へ投げ込もうとするのを平次は得意の投げ銭、
掌
(
て
)
を宙に
翻
(
かえ
)
すと、青銭が一枚飛んで、曲者の拳をハタと打ちます。
銭形平次捕物控:011 南蛮秘法箋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「や、」と倒れながら、激しい
矢声
(
やごえ
)
を、掛けるが響くと、宙で
撓
(
た
)
めて、とんぼを切って、ひらりと
翻
(
かえ
)
った。
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
身を
翻
(
かえ
)
すとお紋は、大きい
揚羽
(
あげは
)
の
蝶
(
ちょう
)
のように、ヒラリと
襖
(
ふすま
)
の蔭へ隠れました。多分お勝手の指図でしょう。
銭形平次捕物控:027 幻の民五郎
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
と、つぶやいて、しばらく、隅田河原のひろさや、水をかすめて飛び
翻
(
かえ
)
る燕の白い腹を見送っていた。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
薄紅色
(
うすべにいろ
)
の
透取
(
すきとお
)
る
硝子杯
(
コップ
)
の小さいのを取って前に引いたが、いま一人哲学者と肩を
竝
(
なら
)
べて、手織の綿入に
小倉
(
こくら
)
の
袴
(
はかま
)
、
紬
(
つむぎ
)
の羽織を脱いだのを、
紐
(
ひも
)
長く椅子の
背後
(
うしろ
)
に、裏を
翻
(
かえ
)
して
引懸
(
ひっか
)
けて
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
当然、かの女は本能的に、びくッと、身を
翻
(
かえ
)
しかけたが、またふと、危険も忘れて、立ちどまった。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
つと身を
翻
(
かえ
)
して、霞門の方へ逃げようとする女優の襟首へ、男の手はむずと加わりました。
踊る美人像
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
と黄八丈が
骨牌
(
ふだ
)
を
捲
(
めく
)
ると、黒縮緬の坊さんが、
紅
(
あか
)
い裏を
翻然
(
ひらり
)
と
翻
(
かえ
)
して
売色鴨南蛮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
板簾
(
いたすだれ
)
の裾は、大きく風に揚げられて、
廂
(
ひさし
)
をたたき、庭の樹々は皆、白い葉裏を
翻
(
かえ
)
して
戦
(
そよ
)
ぎ立つ——
夏虫行燈
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
サッと身を
翻
(
かえ
)
すと、眼にも止まらぬ早業で、早くも二三人の捕方は
浅傷
(
あさで
)
を負わされた様子。
銭形平次捕物控:083 鉄砲汁
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
クルリと身を
翻
(
かえ
)
すと、お種は、隣の部屋、人ごみの中に飛び込んでしまった様子です。
銭形平次捕物控:349 笛吹兵二郎
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
葭
(
よし
)
の葉裏を白く
翻
(
かえ
)
して、沼地を渡る風の中には、わずかに
旗竿
(
はたざお
)
の先が見えるぐらいで、軍馬らしいものは両岸共に見えなかったが——北岸には、斎藤
利三
(
としみつ
)
、
阿閉貞明
(
あべさだあき
)
、
明智茂朝
(
あけちしげとも
)
などの兵力は
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、
曲者
(
くせもの
)
は早くも身を
翻
(
かえ
)
して、路地の向う側へ、真に飛鳥のごとき素早さです。
銭形平次捕物控:059 酒屋火事
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
朝々、
武大
(
ぶだ
)
を稼ぎに追い出してしまうと、金蓮はもう翼を
翻
(
かえ
)
して隣の奥へ来ていた。この間じゅうから縫いにかかった
白綾
(
しらあや
)
や
青羅紅絹
(
せいらこうけん
)
がもう
裁
(
た
)
ちもすんで彼女の膝からその辺に散らかっている。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お半は身を
翻
(
かえ
)
すと、追っ駆ける八五郎の手をかわして、ツイと逃げました。
銭形平次捕物控:242 腰抜け彌八
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
と、いうたかと思うと、もう身を
翻
(
かえ
)
して、敵の中へ駈けて行った。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
なにがしかの
鳥目
(
ちょうもく
)
を投げ入れると、暫く黙祷をして居りましたが、何に
脅
(
おび
)
えたか、いきなり身を
翻
(
かえ
)
してバタ/\と逃げて行くのを、山門の前で、大手を拡げた八五郎に止められてしまったのです。
銭形平次捕物控:239 群盗
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
菊王は身を
翻
(
かえ
)
すのに迅かった。しかし太刀と一ツな奮迅も
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もう一つ、美人像の頬に自分の頬を当てて、つと身を
翻
(
かえ
)
します。
踊る美人像
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
翻
常用漢字
中学
部首:⽻
18画
“翻”を含む語句
翻弄
翻然
翻筋斗
翻々
翩翻
虞翻
掀翻
翻身
翻覆
翻訳
海翻車
翻案
任翻
翻意
翻倒
翻訳料
翻訳名義集
翻訳書
翻訳的
翻訳口調
...