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羞
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はずか
ふりがな文庫
“
羞
(
はずか
)” の例文
そんな
恰好
(
かっこう
)
をしているところを見られて一人で
羞
(
はずか
)
しがっている私を、しかし何とも思わないように、只なつかしそうに見上げながら
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
というのは、自分の愛情を現すことを
羞
(
はずか
)
しく思いもしたし、また、そのことを母に見られるのをきまり悪く思ったからでもあった。
火
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
羞
(
はずか
)
しさで唇までが
引
(
ひ
)
き
攣
(
つ
)
って言うことを聴かないように思えた、「私、あなたを愛してますわ。どうしてあんなに私を
苛
(
いじ
)
めるの?」
大ヴォローヂャと小ヴォローヂャ
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
一体、「世界とは」とか「人生とは」とか、そんなおおざっぱなものの言い方は
止
(
よ
)
した方がいいね。第一、
羞
(
はずか
)
しいとは思わないのかなあ。
狼疾記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
男に裸体を見せることを
羞
(
はずか
)
しがらず、腕や腹や
股
(
また
)
に墨筆で絵を書かせてキャアキャアよろこび、だからむしろ心をそそる色情は稀薄であった。
二十七歳
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
▼ もっと見る
閏土はそう言いながら子供を前に引出してお辞儀をさせようとしたが、子供は
羞
(
はずか
)
しがって背中にこびりついて離れない。
故郷
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
信一郎は、自分が有頂天になって、
喋
(
しゃ
)
べった文学論が、こうした人に
依
(
よ
)
って、批判される結果になったかと思うと、可なりイヤな
羞
(
はずか
)
しい気がした。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
無口で
羞
(
はずか
)
しがりのおときは、まるっきり威圧されて、梵妻と顔を合せることを避けよう避けようと努めていた。
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
もし一度でもあったとすれば、それはまだ辰子の
幼稚園
(
ようちえん
)
へ通っていた時代のことだけだった。彼女はこう言う妹のキスに驚きよりもむしろ
羞
(
はずか
)
しさを感じた。
春
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
淋しい、弱い、自信のない、大きな声を出して他人に叫ぶのは
羞
(
はずか
)
しいような生活をしてる人ばかりではないか。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
われしばしこの二人を見てありしに二人もまた今さらのように
意
(
こころ
)
づきしか歌を
止
(
とど
)
め、わが顔を見上げて笑いぬ、姉なるは
羞
(
はずか
)
しげに妹なるはあきれしさまにて。
おとずれ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
「源三さんだって云えば、お
浪
(
なみ
)
さん。早く出てお
出
(
い
)
でなネ。ホホわたし達が居るものだから
羞
(
はずか
)
しがって、はにかんでいるの。ホホホ、なおおかしいよこの人は。」
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
婦人のしおらしき
風情
(
ふぜい
)
とては露ほどもなく、男子と漢籍の
講莚
(
こうえん
)
に列してなお少しも
羞
(
はずか
)
しと思いし事なし。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
そして直ちにいまわしい重苦しい、だるい気分になって、どうしたわけか時々おそわれるように
羞
(
はずか
)
しさが、少女の乱れたお
下髪
(
さげ
)
の髪の先から、足の先までをぞっとさせた。
咲いてゆく花
(新字新仮名)
/
素木しづ
(著)
いまは夫と仰ぐ帆村荘六とチラリと目を見合わせて、新婦糸子は
羞
(
はずか
)
しそうにパッと頬を染めた。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
セエラは
羞
(
はずか
)
しそうにもじもじしていましたが、やがて裾をつまんで、優雅な礼をしました。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
その時、
羞
(
はずか
)
しがって
俎
(
まないた
)
で野菜をはやして切っていた姉の姿はおかしくも美しかった。
呼ばれし乙女
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それは醜い女で、その女を呼んでくれと名を言うときは、いくら酔っていても
羞
(
はずか
)
しい思いがすると、S—は言っていた。そして着ている寝間着の
汚
(
きたな
)
いこと、それは話にならないよと言った。
ある心の風景
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
諏訪 (笑って)そんなに少年みたいに
羞
(
はずか
)
しがることってありますか、ええ?
華々しき一族
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
これだけでも早くお返ししたいと思い
乍
(
なが
)
ら
未
(
いま
)
だにお返し出来ずにいる始末。五十円位の金が出来ないのは何んとも
羞
(
はずか
)
しいがさりとて、その辺を借金に廻るのは小生には、ちょっと出来ない。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
たいていの人間は、動物食にもせよ植物食にもせよ、毎日他人によってかれらのために調理されるのと全くおなじような食事を自分の手で調理しているところを人に見られたら
羞
(
はずか
)
しく感じるだろう。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
岩魚の精は、
羞
(
はずか
)
しそうな姿態をつくったのである。
岩魚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
浪江は
羞
(
はずか
)
しそうに微笑しながら答えた。
蕗問答
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
妹の
羞
(
はずか
)
しがるのを目でふりかえった。
童子
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
米は牛肉をどうしたかと母に訊ねたかったが、そのことを奥の客に聞かれては
羞
(
はずか
)
しいと思った。そして、間もなく母は再び客に奪われた。
火
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
なぜかそうすることに
羞
(
はずか
)
しさを感じた。そして彼女はたえず彼の眼が遠くから自分の脊中に向けられているのをすこしむず
痒
(
がゆ
)
く感じていた。
ルウベンスの偽画
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
美和子はすぐ
羞
(
はずか
)
しそうに、唇の傍に手をあてたり、下眼づかいをしたり、いたいたしいほど、処女めいた表情をする。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
私は眼が見えなくて英語も数学も分らなくなり、その真相が見破られるのが
羞
(
はずか
)
しくて、学校を休むようになった。
石の思い
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
ふたりは、それまでは
飯倉
(
いいぐら
)
の
烟草
(
たばこ
)
屋の二階に、一緒になって間もなくの、あんまり親しくするのも
羞
(
はずか
)
しいような他人行儀の失せ切れない心持でくらしていた。
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
美人で、わがままで、
羞
(
はずか
)
しがりだ。あの女が顔も隠さずに、施物を貰いに村々を歩くことになるのだろうか? いいや、そんなことは考えるだけでも怖ろしい。……
追放されて
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「これがまだあたしの耳へはいらない前ならば格別だけれども——お芳の手前も
羞
(
はずか
)
しいやね。」
玄鶴山房
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
突然、イベットに永訣しなければならなくなった世にも憐れな落胆者小田島は、また同時に世にも
羞
(
はずか
)
しい果報者となってホテルへ帰った。イベットが訪ねて来る十時半にはもう一時間とは無い。
ドーヴィル物語
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
羞
(
はずか
)
しいことだが、今でも、こんなあさましい身と成り果てた今でも、
己
(
おれ
)
は、己の詩集が
長安
(
ちょうあん
)
風流人士の机の上に置かれている様を、夢に見ることがあるのだ。
岩窟
(
がんくつ
)
の中に横たわって見る夢にだよ。
山月記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
それを相手に見破られるのが
羞
(
はずか
)
しいので、空の
蒼
(
あお
)
さ、紅葉のはかなさ、美しさ、空気の清浄、社会の
混沌
(
こんとん
)
、正直者は馬鹿を見る、等という事を、すべて
上
(
うわ
)
の
空
(
そら
)
で語り合い、お弁当はわけ合って食べ
犯人
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
何小仙は皆まで言わずに目を閉じたので、單四嫂子はその上きくのも
羞
(
はずか
)
しくなった。その時何小仙の向う側に坐していた三十余りの男が一枚の処方箋を書き終り、紙の上の字を一々指して説明した。
明日
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
京太郎は
羞
(
はずか
)
しそうに遮った。
天狗岩の殺人魔
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
すると、トルコ風呂で背中をマッサージしてくれるたびに、いつも
羞
(
はずか
)
しそうに頬を
赭
(
あか
)
らめているお杉の顔が浮んで来た。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
其処
(
そこ
)
に、
羞
(
はずか
)
しそうな私とお前を、二人だけ残して、みんなはまたボオルの練習をしに行ってしまう。
麦藁帽子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
この不潔な女すら
羞
(
はずか
)
しめうる階級が存在するということは私の大いなる意外であった。私はアキを思いだした。その思いつきは私を有頂天にした。アキなら否む筈はない。
いずこへ
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
処女らしい
羞
(
はずか
)
しさと、
浄
(
きよ
)
らかさ、それに続いた
同棲
(
どうせい
)
生活に
於
(
おい
)
て、自分に投げて来た全身的な信頼、日が
経
(
た
)
つに連れて、埋もれていた宝玉のように、だん/\現れて来る彼女のいろ/\な美質
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「はい。お
羞
(
はずか
)
しゅうございますが……」
古千屋
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼は何ぜだか
羞
(
はずか
)
しい気がした。黙って笑っていると、幸子はくるりと向うをむいて母親の
襟
(
えり
)
の間へ顔を
擦
(
す
)
り
寄
(
よ
)
せた。
御身
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
歌川と別れて僕と一緒になった、それを僕はひけめに覚えていなかったのに、今になって、それが
羞
(
はずか
)
しくなった。あれにかかると、我々自身が犬になるんだ。犬の恥辱を感じるのだ。
不連続殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
初枝は、母親似の、
細面
(
ほそおもて
)
の美しい顔立をし、思ったほど
窶
(
やつ
)
れてもいなかった。そして自分の病気の話をそんな目の前でされているのに、嫌な顔ひとつしないで、ただ
羞
(
はずか
)
しそうな様子をしていた。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
羞
(
はずか
)
しがって隠していた状袋を私は開くと、巻いた袋の重い底がずるずる下へ垂れてきて、中からしかつめらしい紙幣が出て来た。七十円ばかり入っている。
夜の靴:――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
もう自分の老いかかった姿を見られるのは
羞
(
はずか
)
しいようだが、どうにも
為様
(
しよう
)
がないので、少女を自分の側から離さぬようにして物語のお相手などしているが、いつも派手好みで、匂うような桜がさねの
ほととぎす
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「あら
羞
(
はずか
)
しや。羞しや」
閑山
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
赤子のことを
訊
(
き
)
くのが
羞
(
はずか
)
しかったので黙って時々気付かれぬように姉の帯の下を見た。しかし、彼の眼では分らなかった。ただ何となく姉は生々としていた。
御身
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
参木はお杉が火を点けようとしないのは、顔を見られる
羞
(
はずか
)
しさのためであろうと思ったので、着物を着かえてしまうと、その場へぐったり倒れたまま黙っていた。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
梶の組み上げていた片足の冷え冷えする指先の方で、妻の芳江は
羞
(
はずか
)
しそうに顔を
赧
(
あか
)
らめながら
厨房日記
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
羞
常用漢字
中学
部首:⽺
11画
“羞”を含む語句
羞恥
含羞
羞耻
嬌羞
羞明
含羞草
可羞
羞含
羞恥心
面羞
心羞
気羞
珍羞
羞痒
多羞
羞耻心
花羞
羞渋
羞恥家
羞顔
...