たゝ)” の例文
なに矢張やっぱ洋物屋とうぶつやの旦那様でも、元が士族さんはてで、何かで行詰った事が有って、義理堅い方だから義がたゝないとかなんとか云う所からプイと遣ったか
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何でも早く勉強して、来年にも幼年学校に入るやうにしなければ、一体男児をとこの本分がたゝぬではないか。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
取出しあたへければ犬は尾をふりよろこ喰居くひゐるを首筋くびすぢつかんでえいやつてなげつけ起しもたゝず用意の小刀こがたなを取出し急所きふしよをグサと刺通さしとほせば犬は敢なくたふれたり寶澤は謀計はかりごと成りと犬の血を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
出はなれたり梅花道人いかにしてかおくれて到らずさてこそ弱りて跡へ殘りしならん足は長けれど役にはたゝず長足道こはし馬乘らぬとは此事だと無理を云ふうちオイ/\諸君の荷物を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
大違おほちげエよ、此夏脚気踏み出して稼業かげふは出来ねエ、かゝあ情夫をとこ逃走かけおちする、腰のたゝねエおやが、乳のい子を抱いて泣いてると云ふ世話場よ、そこで養育院へ送られて、当時すこぶる安泰だと云ふことだ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
固より単に人殺しと云うだけの罪ですけれど支那人とあって見れば国と国との問題にも成兼なりかねません事に由ては日本政府から支那政府へ—(荻)併し未だ支那人と云う証拠が充分にたゝぬでは無いか(大)是で未だ証拠が立ぬと云うはそれや無理です
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
はたらかば後の始末しまつ面倒めんだうならんいつ翌日あしたくらきにたゝせんさうじや/\とうち點頭うなづきひとゑみつゝ取出すかさ日外いつぞや同町に住居すまひする藤崎ふぢさきだう十郎が忘れて行しを幸ひなりとかくおきふけるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
賊「ジタバタしても役にゃアたゝねえ、金の有ることを知って這入ったのだ、金エ出せ/\」
とかうして車に乘れば醉とつかれにウト/\とねぶりかけしがガタリと車は止りて旦那こゝが小野の瀧でござりますと云ふ心得たりとり立しが泥濘ぬかりみちに下駄はたゝずバタリと轉べば後より下りし梅花道人またバタリ泥に手を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
かく何氣なにげなき體にて彼女中の客人は今朝こんてう餘程よほどはやたゝれたり貴樣の方へはゆかずやといふ善六かしらふり左樣さやうはずはなし其譯そのわけ昨日きのふ途中にて駕籠へのるとき駕籠蒲團かごふとんばかりではうすしとて小袖を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
小「腹ア立つッてたゝないッて、人の腮を払って置きながら謝りもしないで、彼処あすこのお飾松の処へ隠れて、そうしてお前さん私を見て居やアがる、あんな奴は有りません、いや此処こゝへ来て謝まれ」
たゝんとするに左の足痛みて一歩も引きがたしコハ口惜くちをしと我手にもみさすりつして漸やく五六町は我慢したれどつひこらへきれずして車乘詰のりづめの貴族旅となりぬ雨は上りたれど昨日きのふ一昨日をとゝひも降り續きたる泥濘ぬかるみに車の輪を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)