石鹸しやぼん)” の例文
「さあ、愈々いよ/\出世の手蔓てづるが出来かかつたぞ。明日あすは一つあの殿様のお顔を、舶来はくらい石鹸しやぼんのやうにつるつるに剃り上げて呉れるんだな。」
小さい人は、台所にあつた古けた下駄の大きいのを履いて、相手がなささうに、おくみが石鹸しやぼんの泡を立ててゐる手許てもとへ来て彳んでお出でになる。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
パレスタイン第一の橄欖林かんらんりんあり。皆古木。何千株なるを知らず。橄欖の実は九月に熟す。生食せいしよくし、塩蔵し、オリーブ油を製し、また石鹸しやぼんの原料となる。
私の見さふらひしは洗濯の競技にて、香港へく若き人達に貴婦人の一部うち交りて、出火の際の水を運ぶ桶に七分の水を入れたると、洗濯石鹸しやぼん一つづつ前へ置き
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
石鹸しやぼんの氣取りたるも買ふめり、おぬひは桂次が未來の妻にと贈りものゝ中へ薄藤色の襦袢の襟に白ぬきの牡丹花のかたあるをやりけるに、これを眺めし時の桂次が顏
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
宗助そうすけつくゑまへ坐蒲團ざぶとんせて、其上そのうへ樂々らく/\胡坐あぐらいたとき手拭てぬぐひ石鹸しやぼん受取うけとつた御米およね
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其間には香水だとか石鹸しやぼんだとか白粉だとか舶来の上等品は能く持つて来たよ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
何時の間にか新しいタオルと石鹸しやぼん齒磨はみがき楊子やうじとを取そろへて突き出しながら
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
秋の草白き石鹸しやぼんの泡つぶのけはひ幽かに花つけてけり
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
アルボオス石鹸しやぼんの泡なり
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
肩に背負つた風呂敷包には、二宮金次郎の道徳のやうな、格安で、加之おまけに「おめのいい」石鹸しやぼん白粉おしろいがごたごたくるまれてゐた。
石鹸しやぼん氣取きどりたるもふめり、おぬひは桂次けいじ未來みらいつまにとおくりもの〻中なか薄藤色うすふぢいろ繻袢じゆばんゑりしろぬきの牡丹花ぼたんくわかたあるをやりけるに、これをながめしとき桂次けいじかほ
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さうしてあたまなかで、自分じぶん下宿げしゆくにゐた法科はふくわ大學生だいがくせいが、一寸ちよつと散歩さんぽついでに、資生堂しせいだうつて、みつりの石鹸しやぼん齒磨はみがきふのにさへ、五ゑんぢかくのかねはら華奢くわしやおもうかべた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
石鹸しやぼんのにほひ、かびの花、青いとんぼのの光。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
児玉氏はそれを聞くと、おしのやうに黙つて荷物を包みにかゝつた。「お為めのいい」石鹸しやぼんすがめのやうな眼附で、利いた風な事を喋舌しやべる大学生の顔を見てゐた。
白粉をしろいかんざし桜香さくらかの油、縁類広ければとりどりに香水、石鹸しやぼんの気取りたるも買ふめり、おぬひは桂次が未来の妻にと贈りものの中へ薄藤色の襦袢じゆばんゑりに白ぬきの牡丹花ぼたんくわかたあるをやりけるに
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おづおづと吹きいづる………たま石鹸しやぼんよ。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「有難う。お礼は孰方どちらにした方がいの。接吻キツス?」女優は美しい眼で道具方の顔を見た。化粧石鹸しやぼんでよく洗つた上に、香水でも振りかけなければ、とて接吻キツスが出来さうな顔ではなかつた。
てつのにほひと、くされゆく石鹸しやぼんのしぶき。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
萎れた千鳥草と、石鹸しやぼんの泡のやうな
緑の種子 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
石鹸しやぼんのにほひする身体からだをかがめて
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
吹きいづる石鹸しやぼんたまあわのいろ
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
小蟹こがにぶつぶつ石鹸しやぼんかし
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
血のごとき石鹸しやぼんたまを。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)