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知悉
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ちしつ
ふりがな文庫
“
知悉
(
ちしつ
)” の例文
十数年の生活を、都人の中で送り、摂関家の何たるものか、朝廷のどういうものかを、地方人としては、
知悉
(
ちしつ
)
している人間である。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
決して負け惜しみで言っているわけではありません。あなたが御手紙でおっしゃっている事は、すべて私も、以前から
知悉
(
ちしつ
)
していました。
風の便り
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
現在既知の科学的知識を少しの
遺漏
(
いろう
)
もなく
知悉
(
ちしつ
)
するという事が実際に言葉通りに可能であるかどうか。おそらくこれは
六
(
むつ
)
かしい事であろう。
科学上における権威の価値と弊害
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
私たちの犯してゐる大きな過ちは、お互ひにまだ思ひ切つて性格の内奥を
知悉
(
ちしつ
)
し合はないでゐることにあるのではなからうか。
母たち
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
というのは蕗屋は仮令彼が犯人でなかったとしても、判事の取調べその他によって、犯罪事実をある程度まで
知悉
(
ちしつ
)
しているのが当然だから。
心理試験
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
ところでまたジルベールがどうしてドーブレクの日常生活を
知悉
(
ちしつ
)
していたか? いかなる方法を用いて捜索したか? あの晩
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
それほど、夫人はこの家の中でなら、何もかも
知悉
(
ちしつ
)
していて、ほとんどわれわれと同様に振舞えるらしく見えたからである。
窓
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
私はよく
知悉
(
ちしつ
)
しない……が、氏は篆刻を鉄城に学んでみ、あるいは富岡鉄斎翁の画を臨写してみずから発表するなど一方ならぬ趣味人であり
素人製陶本窯を築くべからず:――製陶上についてかつて前山久吉さんを激怒せしめた私のあやまち――
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
すなわち京都辺で親しくこのサクラを眺めてその状態を
知悉
(
ちしつ
)
している士は、右の文章を玩読すれば直ぐにアノ桜の事だと気が附くのであろう。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
完全なる浮浪少年は、パリーのすべての巡査を
知悉
(
ちしつ
)
していて、そのひとりに出会えばすぐに名
指
(
ざ
)
すことができる。各巡査をくわしく研究している。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
検挙した責任者であり、且つ被告と神戸との間の往復文書並びに神戸の提出した書状の行方について
知悉
(
ちしつ
)
している当時の神楽坂警察署長庄司利喜太郎を
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
熊本に居る頃の漱石氏は何度上京したか私はそれを
知悉
(
ちしつ
)
しない。ただ今も記憶に残っている一つの光景がある。
漱石氏と私
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
行長と義智は
這般
(
しゃはん
)
の事情を
知悉
(
ちしつ
)
しながら、之を率直に上申して秀吉の機嫌をそこねる勇気に欠けてゐたのである。真相を打開けて機嫌をそこねる勇気はない。
二流の人
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
それにしても或る人が或る人を云うのに、「自分はあの人に何年つき合って居る。」などとその人を
知悉
(
ちしつ
)
して居るように云うのを聞くが、私には首肯出来ない。
鶴は病みき
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
その家が、いまベニイの私生活と、彼の夢のうらおもてを
知悉
(
ちしつ
)
しているのです。で、同じことが言えないでしょうか。人は、自分の利器に一番注意すべきです。
踊る地平線:10 長靴の春
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
そして鮎の好む石々を陸上にあるもののように
知悉
(
ちしつ
)
していて、いつも他に先んじていい釣場を占める。
釣場の研究
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
かくて私達が太陽の光線そのものを
見窮
(
みきわ
)
めようとする時、分解された諸色をいかに研究しても、それから光線そのものの特質の全体を
知悉
(
ちしつ
)
することが出来ぬと同様に
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
、
知悉
(
ちしつ
)
しいながら奪われて……しかも敵手の冬次郎の手に、この門前において奪われて、恥じ入らぬばかりか横柄の態度! ……さては汝この意次の失脚失意の境遇を
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
もとより近代人がかくなったのは複雑な原因がある。その過程には痛ましきさまざまの弁解がある。私はそれを
知悉
(
ちしつ
)
している。しかしいかなる罪にも弁解の無いのはない。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
自然
(
しぜん
)
に
形
(
かたちづく
)
られて
居
(
ゐ
)
る
階級
(
かいきふ
)
の
相違
(
さうゐ
)
を
有
(
いう
)
して
居
(
ゐ
)
る
者
(
もの
)
又
(
また
)
は
長
(
なが
)
い
間
(
あひだ
)
彼
(
かれ
)
の
生活
(
せいくわつ
)
の
内情
(
ないじやう
)
を
知悉
(
ちしつ
)
して
居
(
ゐ
)
る
者
(
もの
)
からは
彼
(
かれ
)
は
同情
(
どうじやう
)
の
眼
(
まなこ
)
を
以
(
もつ
)
て
視
(
み
)
られて
居
(
ゐ
)
るけれども、こせ/\とした
其
(
そ
)
の
態度
(
たいど
)
と
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
眼のあたりに見て
知悉
(
ちしつ
)
しているのだったが、この夜泣きの刀のいわれには、単に雲竜相引の因果のほかに、底にじつに、こうして秘文
合符
(
がっぷ
)
の故実がひそんでいたのである。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
警察側の探査に得られた、犯罪の詳細については、世間はもう
知悉
(
ちしつ
)
してしまった形であるが、しかしこの事件の発生当時は、その犯罪の大部分は、秘密に附されたのであった。
空家の冒険
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
とはいえ、事件を
知悉
(
ちしつ
)
した者の眼からすれば、この海賊的遠征隊の暴状は、
花崗
(
かこう
)
岩の霊廟を石炭ショベルで破壊せんと企てた馬鹿さ加減以上であることは、明らかであった……
撥陵遠征隊
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
これは秀吉の方に政宗の国内の事情が
知悉
(
ちしつ
)
されているということを語って居るものである。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
其結果として尊王攘夷論を天下に
瀰漫
(
びまん
)
せしめたり、多数の浪人をして孤剣三尺東西に漂遊せしめたり。幕府衰亡の
顛末
(
てんまつ
)
は、
桜痴
(
あうち
)
居士の精細なる叙事にて其実況を
知悉
(
ちしつ
)
するに足れり。
明治文学管見:(日本文学史骨)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
すくなくとも、その不安な顔いろは、かれが何者でもないものであることを
知悉
(
ちしつ
)
しながら、なおこの空中にある自らの優しいからだを護るためにしだいにうしろ
退
(
ず
)
さりして行った。
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
この二册に就いては多く諸君の
知悉
(
ちしつ
)
せらるる所だらうと思ふので筆を
略
(
はぶ
)
く。
樹木とその葉:07 野蒜の花
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
これが、すべて、日本に、どんな意味を持つか、勿論山崎は
知悉
(
ちしつ
)
していた。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
よりよく
知悉
(
ちしつ
)
した者によって、いつかなされるであろう。
純粋経済学要論:01 上巻
(新字新仮名)
/
マリー・エスプリ・レオン・ワルラス
(著)
殆ど殘らず
知悉
(
ちしつ
)
することが出來たかもしれぬ。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
彼もかつては、一味の“文談会”にも顔を見せ、早くから宮中における、北条討伐の秘謀を
知悉
(
ちしつ
)
していた一人だが、その章房が、先ごろ
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すると事件の蔭の人物、間諜団の首領の存在が既にして推定せられ、少佐はその人物の性格までも
知悉
(
ちしつ
)
しているのであろうか。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
これを充分に理解するためには、その子供をしてそういう言辞を言わしむるようになった必然な沿革や環境や与件を
知悉
(
ちしつ
)
しなければならない。
相対性原理側面観
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
幸
(
さいわ
)
いにも多肉質の皮が存しているために、これが
賞味
(
しょうみ
)
すべき好果実として登場しているのであるが、しかしこの
委曲
(
いきょく
)
を
知悉
(
ちしつ
)
していた人は
世間
(
せけん
)
に少ないと思う。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
幕府制度の欠点を
知悉
(
ちしつ
)
し、それに代るにより良き策に理論的にも実際的にも成算があって事をなした人は、勝った官軍の人々ではなく、負けた海舟ただ一人である。
安吾史譚:05 勝夢酔
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
それよりともかくも昔の妾——自分の善悪を
知悉
(
ちしつ
)
している、お吉のことが苦になった。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
諸君の境遇も
知悉
(
ちしつ
)
し、周囲の事情にも明らかなことですから、幾年かの間氏をわずらわして(もとより一組合員の資格をもって)実務に当たってもらうのがいちばんいいかと私は思っています。
小作人への告別
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
又、大方の女というものがどういうものであるかも
知悉
(
ちしつ
)
した積りでいた。
姨捨
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
昔は勝利のあらゆる途を
知悉
(
ちしつ
)
し、雷電の車上よりおごそかな指をもってそれを指示した彼も、いまやその群がり立ったる軍隊の
供奉
(
ぐぶ
)
を
断崖
(
だんがい
)
に導くほど、悲しむべき惑乱のうちにあったのであろうか。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
女性の
浅間
(
あさま
)
しさを
知悉
(
ちしつ
)
しているつもりでありました。女性は男に愛撫されたくて生きている。称讃されたくて生きている。我利我利。
淫蕩
(
いんとう
)
。無智。虚栄。死ぬまで怪しい空想に
身悶
(
みもだ
)
えしている。
貪慾
(
どんよく
)
。
女の決闘
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
つまり六郎氏は結婚の当初から、
何等
(
なんら
)
かの事情により、夫人の秘密を
知悉
(
ちしつ
)
していたのです。そして、それを夫人には一言も云わなかったのです。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
充分に
知悉
(
ちしつ
)
していながら、しかも多分にそういう土語民情の中に伝えられている孔明の姿をも取り容れて、さらにそれを文学的に神仙化しているのである。
三国志:12 篇外余録
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それならばペンの目方を指定しその落下の状況を予知するには、単に緯度や高さや温度や気圧を知るのみならず全宇宙の現状を
知悉
(
ちしつ
)
する事が必要であろうか。
方則について
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
自分というものをある限度まで
知悉
(
ちしつ
)
しない人間が、小説を書ける筈のものではない。一応自分というもの、又、人間というものに通じていなくて、小説の書けるわけはないのだ。
教祖の文学:――小林秀雄論――
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
意次は自分の私生活を、
知悉
(
ちしつ
)
していて世間へ知らせる、そのお浦を殺せと
強
(
し
)
いた。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
民衆の人たる深い
洞察力
(
どうさつりょく
)
をもって、われわれが今日|民族観念と呼ぶところのものを心の中にはぐくんでいた。悲憤
慷慨
(
こうがい
)
もよくその原因を
知悉
(
ちしつ
)
した上のことでありたいというので、特に歴史を学んだ。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
誰も口にはしないが、実をいえば、内部的に大きな弱点があることを、誰も
知悉
(
ちしつ
)
しているからだった。
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
人間というものは、たったひとりでいるとき、そばに人目のないときには、どんな異様な行為をするかわからないということを、かれは自分の体験から割り出して
知悉
(
ちしつ
)
していた。
影男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
故に一方において地殻の歪みを測知し、また一方においては主要なる第二次原因を
知悉
(
ちしつ
)
するを得れば地震の予報は可能なるらしく思わる。この期待は如何なる程度まで実現され得べきか。
自然現象の予報
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そうして美作自身においても、そういうことは
知悉
(
ちしつ
)
していた。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
“知悉”の意味
《名詞・サ変動詞》
知悉(ちしつ)
知り尽くしていること、悉く知ること。
(出典:Wiktionary)
知
常用漢字
小2
部首:⽮
8画
悉
漢検準1級
部首:⼼
11画
“知”で始まる語句
知
知己
知人
知合
知行
知識
知辺
知恵
知盛
知音