じれ)” の例文
もうじれったいわ、看板を買い、株を買い、自前になるとかならないとか、そんなこと間緩まだるくて仕方がない、今晩からでも廃業して
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
だって——ああじれったい。この方は何じゃありませんか——御姉おあねえさんの志だって、お雛様に御馳走なすった、お定りの(栄螺と蛤。)——
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
誠にしづまりかへつて兵士へいしばかりでは無い馬までもしづかにしなければいかないとまうところが、馬は畜生ちくしやうの事で誠に心ない物でございますから、じれつたがり
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
じれつたいけど、しやうがない。だから、見たまへ、公衆の前で人間幾人かの生命いのちが賭けられたつていふこの不祥な出来事を、心から憤ることも、嘆くこともできないんだ。
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
亀の歩みもじれったいには相違ないが、それでも一つ処に停止していないのは事実である。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
旦那様は又た、奥様を籠の鳥のように御眺めなさる気で、奥様の独りじれる御心が解りませんのでした。何時いつ、羽根を切られた鳥の心が籠に入れて楽しむという飼主に解りましょう。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
このやうなはかり知れぬ人を前にして、本を讀まうとするのは、無駄であつた。また、私は、じれつたくなつて、默つてゐられなくなつた。彼は、つんとして肘鐵砲ひぢでつぽうを食はす氣かも知れない。
しばらくの後、古田は腕組をとると、じれっぽくバットに火をつけながら
金狼 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
あたいじれったくなってよ。」
百合の花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ようよう、あなた、じれったいわねえ、今晩は天下の寝物語を二人だけで借りっきりなのよ、誰にはばかることはないから、おのろけを
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
じれったそうに言い切った。葛木はこうとした。表裏ひょうり、反覆、とにかくながら、対手あいてが笑ったから、話は済んだ、と思ったのである。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
六郎 まつたくおれもじれつたい。さあ、早く云へ、早く云へ。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
婀娜あだに唇の端を上げると、ひそめた眉をかすめて落ちた、びんの毛を、じれったそうに、うしろへ投げて掻上かきあげつつ
女客 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
してよる夜中、出歩いちゃ困るじゃねえか、親方がじれったがるのは無理ぁねえな。ちぇっ、どうしてそう、みんな人にばっかり世話を焼かせたがるんだろうなあ
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
聴いている方ではじれったくなる。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
前生ぜんせの事のようで、目の前の事のようで、心の内が言いたくッて、言われなくッて、じれッたくって、口惜くやしくッて、いらいらして、じりじりして、そのくせぼッとして
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
自分ながら腑甲斐ふがいのないことに思われて、あとでじれったがるが、その前へ出ると、どうしても段違いで相撲にならないことが自分でわかるだけに、口惜くやしくてならないでいるのです。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
相応そうおう流行はやって、薬取くすりとりも多いから、手間取てまどるのがじれったさに、始終くので見覚えて、私がその抽斗ひきだしを抜いて五つも六つも薬局の机に並べてる、しまいには、先方さきの手を待たないで
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とつおいつの末が、朱羅宇しゅらうの煙管へ、やけに煙草を詰め込むのが落ちで、むやみにじれったがっているところへ、二階で物音がしましたから、吸いかけた煙管をはなして天井を見上げている。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ももッたア出すなッてえ、肥満ふとった乳母おんばどんがじれッたがりゃしめえし、厭味ッたらしい言分だが、そいつも承知で乗ってるからにゃ、他様ほかさまの足を踏みゃ、引摺下ひきずりおろされる御法だ、と往生してよ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
田山白雲はじれったがりながら、渡頭に近い高さ三メートルばかりの小丘の上で、遠眼鏡を眼窩がんかの上から離さず、マドロスの逃げ込んだ追波おっぱの本流の方をしきりに注視していましたが、そのうちに
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
が、三日、五日、六日、七日になっても、まだその二人は谷と谷を隔てている。!……も、——も、丶も、邪魔なようでじれったい。が、しかしその一つ一つが、峨々ががたるいわおしんとした樹立こだちに見えた。
小春の狐 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お角はこう言っているうちにもじれったそうに
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
くすぐつたいやうな、かゆいやうな、あついやうな、さむいやうな、うれしいやうな、かなしいやうな、心細こゝろぼそいやうな、さびしいやうな、ものなつかしくて、果敢はかなくて、たよりのない、たれかにひたいやうな、じれつたい
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「ホントにじれったい」
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
持って、下階した女房おかみさんの中へ寝に行きました、……一度でも芸者と遊んで、そのくらいな事が分らない。——さあ、ちゃんとして見て頂戴、サの字が見えない? 姉さんにない?……ええ、じれったい。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
じれったそうにたしなめると、大きく合点がってん々々しながら
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「おい、手毬はどうして消えたんだな、じれったい。」
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
じれったい女だな。」
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)