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むとんじゃく
ふりがな文庫
“
無頓着
(
むとんじゃく
)” の例文
一家の取締をするのは用人の
柴田十太夫
(
しばたじゅうだゆう
)
たった一人で、彼は譜代の忠義者ではあるが、これも独身の老人で元来が
無頓着
(
むとんじゃく
)
の方である。
番町皿屋敷
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
要するに文芸にはまるで
無頓着
(
むとんじゃく
)
でかつ驚ろくべき無識であるが、尊敬と
軽蔑
(
けいべつ
)
以上に立って平気で聞くんだから、代助も返事がし易い。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
無頓着
(
むとんじゃく
)
な者には勝手にその網の目をくぐらせるが、疑い深い者、用心深い者、
聡明
(
そうめい
)
な者にたいしては、なかなか取り逃がすまいとする。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
そうして床の上ってくるのを防ぎとめたいつもりだったけれど、床はそんなことに
無頓着
(
むとんじゃく
)
のように、ジリジリと上ってくるのであった。
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そうした
一切合財
(
いっさいがっさい
)
があわさって、彼女のうちに、一種こう人を小馬鹿にしたような
無頓着
(
むとんじゃく
)
さや投げやりな態度を、養ったのである。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
▼ もっと見る
想うに
貨殖
(
かしょく
)
に長じた富穀と、人の物と我物との別に重きを置かぬ、
無頓着
(
むとんじゃく
)
な枳園とは、その性格に
相容
(
あいい
)
れざる所があったであろう。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
おまけに名まで変っているのであったが、その人は快活で
無頓着
(
むとんじゃく
)
な性質で自分の姓名の変なことなど意に介しないように見えた。
柿の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
女
水滸伝
(
すいこでん
)
のように思われたり、又風情ごのみのように言われたりしたようであるが実際はもっと素朴で
無頓着
(
むとんじゃく
)
であったのだろうと想像する。
智恵子の半生
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
無頓着
(
むとんじゃく
)
なる白糸はただその健康を尋ぬるのみに安んじて、あえてその成業の期を問わず、欣弥もまたあながちこれを告げんとは
為
(
な
)
さざりき。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
君は左手で犬を
撫
(
な
)
で、また遠ざけながら、羊皮紙を持った右の手を
無頓着
(
むとんじゃく
)
に膝のあいだの、火のすぐ近くのところへ垂れた。
黄金虫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
そればかりでなしに、私の母みたいな、子供のうるさがるような愛し方をしないお前の母は、私をもその子供並みにかなり
無頓着
(
むとんじゃく
)
に取り扱った。
麦藁帽子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
われわれのこの民本主義の時代においては、人は自己の感情には
無頓着
(
むとんじゃく
)
に世間一般から最も良いと考えられている物を得ようとかしましく騒ぐ。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
普通の人ならせっかくの日曜をめちゃめちゃにしてしまったと不平を並べるところだが、時田先生、全く
無頓着
(
むとんじゃく
)
である。
郊外
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
一つフロックコートで
患者
(
かんじゃ
)
も
受
(
う
)
け、
食事
(
しょくじ
)
もし、
客
(
きゃく
)
にも
行
(
ゆ
)
く。しかしそれは
彼
(
かれ
)
が
吝嗇
(
りんしょく
)
なるのではなく、
扮装
(
なり
)
などには
全
(
まった
)
く
無頓着
(
むとんじゃく
)
なのに
由
(
よ
)
るのである。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
ある者は死があまり
無頓着
(
むとんじゃく
)
そうに見えるので、つい気を許して少し大胆に高慢にふるまおうとする。と鬼一口だ。もうその人は地の上にはいない。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
寒風をも犯して
無頓着
(
むとんじゃく
)
と云うその全般の生活法が有益であるか、
凡
(
およ
)
そこの種の関係は医学の研究すべき問題と思います。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
不思議にも、外界の事物に対してこれ程彼が
無頓着
(
むとんじゃく
)
に成ったと同時に、外界の事物もまた彼に対して無頓着に成った。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
でも、どうやらこうやら父から出資させる事になって老爺さんは
欣々
(
きんきん
)
と勇んだ。情にもろくって、金に
無頓着
(
むとんじゃく
)
な父は、細かい計算をよく
噛
(
か
)
まなかった。
旧聞日本橋:08 木魚の顔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
野口という大学教授は、青黒い
松花
(
スンホア
)
を頬張ったなり、
蔑
(
さげす
)
むような笑い方をした。が、藤井は
無頓着
(
むとんじゃく
)
に、時々和田へ目をやっては、
得々
(
とくとく
)
と話を続けて行った。
一夕話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
化粧でそれを目立たせないように工夫してくれたらよいのに、当人はそう云う点に一向
無頓着
(
むとんじゃく
)
なのであった。
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
博士は、もともと
無頓着
(
むとんじゃく
)
なお方でございましたけれども、このおびただしい汗には困惑しちゃいまして、ついに一軒のビヤホールに逃げ込むことに致しました。
愛と美について
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
中にはそんなことは
構
(
かま
)
わぬと称する
人
(
ひと
)
も
数多
(
あまた
)
あるが、なにかかにか言われると、まったく
無頓着
(
むとんじゃく
)
に聞き流す人はほとんどない。誰しも必ず心に不愉快を感ずる。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
「それはそうですとも、
貴君
(
あなた
)
は知るわけはない。岸野さんがいま少し注意してくれるといいんですけれど、あの人はああいうふうで、何事にも
無頓着
(
むとんじゃく
)
ですからな」
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
感染
(
かぶ
)
れる事の早い代りに、飽きる事も早く、得る事に熱心な代りに、既に得た物を失うことには
無頓着
(
むとんじゃく
)
。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
その点、
無頓着
(
むとんじゃく
)
に見えるほど寛大で、一つの型にはめようとするが如きことはせられなかった。
西田先生のことども
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
それを
無頓着
(
むとんじゃく
)
の男の
質朴
(
ぶきよう
)
にも突き放して、いえ、ありがとうはござりますれど上人様に
直々
(
じきじき
)
でのうては、申しても役に立ちませぬこと、どうぞただお取次ぎを願いまする
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
今までのは正面から文字の意味どおりに、むしろ拘泥し過ぎて取扱っていますが、この句は必ずしも文字の意味に拘泥せずに、やや
無頓着
(
むとんじゃく
)
に取扱っている傾きがあります。
俳句の作りよう
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
黒いものをパクついている男達はもうすべてのことがらに
無頓着
(
むとんじゃく
)
になっているらしく、「昨日は五里歩いた」「今夜はどこで野宿するやら」と他人事のように話合っていた。
廃墟から
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
事務官が自分に対して前より
無頓着
(
むとんじゃく
)
に、横柄になったような気がした——けれど、不思議なことには——彼自身も突然、誰がなんと思おうと同じことだ、という気持になった。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
犯罪とか犯人などということにはまったく
無頓着
(
むとんじゃく
)
、念頭にもなかったが、珠緒さんが殺されてみると、私は始めて犯罪ということをヒシヒシと考えさせられ、例の一馬の手紙のこと
不連続殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
が、かの女は、婚期などには、
無頓着
(
むとんじゃく
)
で、結構、毎日を陽気に暮していた。ことに、東の対ノ屋の一部屋に、泰子が住むようになってからは、のべつ、西の対ノ屋からこっちへ遊びに来ていた。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼女は窓掛をおろすのを忘れるほど
無頓着
(
むとんじゃく
)
だった。そして気がついても、無精のあまりわざわざ窓掛をおろしに行こうともしなかった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
僕は僕の希望した通り、平生に近い落ちつきと冷静と
無頓着
(
むとんじゃく
)
とを、比較的容易に、
淋
(
さみ
)
しいわが二階の上に
齎
(
もた
)
らし帰る事ができた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
葉子も何かしら気のおける連中だと思った。そして表面はいっこう
無頓着
(
むとんじゃく
)
に見えながら、自分に対して充分の観察と注意とを怠っていないのを感じていた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
といって世間の
毀誉褒貶
(
きよほうへん
)
に
無頓着
(
むとんじゃく
)
であったという。僕は悪口に対してはこの心がけをもって世に処したい。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
失礼な事をしても構わないと云うような人ではないのですが、
無頓着
(
むとんじゃく
)
なので、そんな事をもするのですね
百物語
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
なるべく私が気を付けて出すようにしたが、しまいにはいつも私に払わせて知らん顔をしていた、でも啓坊は男だけに細かいことには
無頓着
(
むとんじゃく
)
な風を装っていたが
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼は体の重みの半分以上も突き出るくらい
無頓着
(
むとんじゃく
)
に身を投げだして休んでいて、ただ
片肘
(
かたひじ
)
をそのなめらかな崖ぎわにかけて落ちないようにしているだけなのであるが
メールストロムの旋渦
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
と答えざれども
無頓着
(
むとんじゃく
)
、
鳶色
(
とびいろ
)
の毛糸にて見事に
編成
(
あみな
)
したる襯衣を手に取り、
閉糸
(
とじいと
)
をぷつりと切りぬ。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
茶室において草ぶきの屋根、細い柱の弱々しさ、竹のささえの
軽
(
かろ
)
やかさ、さてはありふれた材料を用いて一見いかにも
無頓着
(
むとんじゃく
)
らしいところにも世の無常が感ぜられる。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
聞いていた源は急に顔色を変えて、すこし
狼狽
(
うろたえ
)
て、手に持った猪口の酒を
零
(
こぼ
)
しました。書記は一向
無頓着
(
むとんじゃく
)
——何も知らない様子なので、源もすこしは安心したのでした。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
不潔に頓着せず塾員は不規則と
云
(
い
)
わんか不整頓と云わんか乱暴
狼藉
(
ろうぜき
)
、丸で物事に
無頓着
(
むとんじゃく
)
。その無頓着の
極
(
きょく
)
は世間で
云
(
い
)
うように潔不潔、汚ないと云うことを気に
止
(
と
)
めない。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
僕は思わず
英吉利
(
イギリス
)
語を使った。しかし老人は
無頓着
(
むとんじゃく
)
に島の影を指さしながら、巧みに日本語をしゃべりつづけた。その指さした
袖
(
そで
)
の先にも泡のようにレエスがはみ出している。
不思議な島
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
前学年に及第できなくて原級に
留
(
とどま
)
った所謂
古狸
(
ふるだぬき
)
の連中の話に拠れば、藤野先生は服装に
無頓着
(
むとんじゃく
)
で、ネクタイをするのを忘れて学校へ出て来られる事がしばしばあり、また冬は
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そのとき自分の家に私ひとりきりであったのが
却
(
かえ
)
って私にはその発作に対して
無頓着
(
むとんじゃく
)
でいさせたのだ。私は女中も呼ばず、しばらく一人で我慢していてから、やがてすぐ元通りになった。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
ところで、君は気がついたかい——ラスコーリニコフはほかの事にはいっさい
無頓着
(
むとんじゃく
)
で、何を言っても黙っているが、ただ一つ興奮して夢中になることがある。それは例の殺人事件だ……
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
そしてローザも、自分の鼻の格好には
無頓着
(
むとんじゃく
)
で、素敵な家庭的義務を典例に従って履行することばかりを、自ら誇りとしていた。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
女なら
御母
(
おっか
)
さんか知らん。余は
無頓着
(
むとんじゃく
)
の性質で女の服装などはいっこう不案内だが、御母さんは大抵
黒繻子
(
くろじゅす
)
の帯をしめている。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
結句船の中の人たちから度外視されるのを気安い事とまでは思わないでも、葉子はかかる結果にはいっこう
無頓着
(
むとんじゃく
)
だった。もう船はきょうシヤトルに着くのだ。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
幸子は貞之助に労わられつつ
後
(
おく
)
れてゆっくり上って行ったが、二階へ上り切ってしまうと、廊下に立って海の方を展望していた野村が、そんなことには
無頓着
(
むとんじゃく
)
に
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
無
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
頓
常用漢字
中学
部首:⾴
13画
着
常用漢字
小3
部首:⽬
12画
“無頓”で始まる語句
無頓著