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徐々
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じょじょ
ふりがな文庫
“
徐々
(
じょじょ
)” の例文
この頃のこんな田舎暮しのお
蔭
(
かげ
)
で、そう言った私の暗い半身は、もう一方の私の明るい半身に
徐々
(
じょじょ
)
に打負かされて行きつつあったのだ。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
つつんでいた才気は
徐々
(
じょじょ
)
に
鋭鋒
(
えいほう
)
をあらわし、その多芸な技能は、やがて王大将のおそばには、なくてならない
寵臣
(
ちょうしん
)
の一名となっていた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
自然界の変動が目に見えざる如くにしてしかも
徐々
(
じょじょ
)
として行わるるが如く、人の生命もまた徐々として絶たるるというのである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
このような
境遇
(
きょうぐう
)
と環境の中にあって私の親馬鹿が
徐々
(
じょじょ
)
に、そして確実な経験と径路を
辿
(
たど
)
って完成されていったことは、もはや説明の必要もあるまい。
親馬鹿入堂記
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
いずれはこれからの生活体験が、
徐々
(
じょじょ
)
にかれらを納得させるだろう、というのが先生のいつもの信念だったのである。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
▼ もっと見る
主人はまず腰の辺から観察を始めて
徐々
(
じょじょ
)
と背中を
伝
(
つた
)
って、肩から
頸筋
(
くびすじ
)
に掛ったが、それを通り過ぎてようよう脳天に達した時、覚えずあっと驚いた。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そして、その彼女の頬は、何か巨大な天体ででもある様に、
徐々
(
じょじょ
)
に徐々に、私の眼界を覆いつくして行くのだった。
火星の運河
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そのうちに、倉庫の戸がぎいぎいと開く音が聞え、それとともにトラックは
徐々
(
じょじょ
)
に動きだした。いよいよ秘密の場所への旅行が始まったわけであった。
東京要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
あなた、この金をこの月一杯で一万五千円にすることはできない。あなたがそんなに
徐々
(
じょじょ
)
な人だから、妾は一刻だってじっとしていることはできないわ。
女百貨店
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
それでも時々行って見ると、
徐々
(
じょじょ
)
にしかし確実に雪を作る技術が、低温実験室の中に残って行くのが感ぜられる。
実験室の記憶
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
喬之助の虚心流は、ジワジワと
徐々
(
じょじょ
)
に動き、右近の観化流は、
静中観物化
(
せいちゅうかんぶっか
)
、しずかなること林のごとき中から、やにわに
激発
(
げきはつ
)
して鉄を
断
(
た
)
ち、岩を
砕
(
くだ
)
くのである。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
例のように
熱飯
(
あつめし
)
の上に載せる。茶碗が小さければ半分に切ってもいい。それに充分な熱さの茶を
徐々
(
じょじょ
)
にえびの上からかける。すると、
醤油
(
しょうゆ
)
は溶けてえびは白くなる。
車蝦の茶漬け
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
この「
厄介
(
やっかい
)
」とともに送られたる五七人の乗客を
載了
(
のせおわ
)
りて、
観音丸
(
かんのんまる
)
は
徐々
(
じょじょ
)
として進行せり。
取舵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
石太郎はだまって、
依然
(
いぜん
)
、土手の声に聞き入っていたが、やがて、土手についていたもう一方の手が、ぐっと草をつかんだかと思うと、土管の中から、右手を
徐々
(
じょじょ
)
にぬきはじめた。
屁
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
入日が
彼杵
(
そのき
)
半島の山の
端
(
は
)
に近よるにつれ、半天は
徐々
(
じょじょ
)
に
紅
(
べに
)
色に彩どられる。その
紅
(
くれない
)
が反対の側の天草灘に棚引く横雲に反射する。千々岩灘に散らばる漁船の白帆がその瞬間
金色
(
こんじき
)
に輝き渡る。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
こうして時刻が
経
(
た
)
って行った。夜は
徐々
(
じょじょ
)
として更けて行く……。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
天蓋の
会釈
(
えしゃく
)
をして、ゆったりと腰を下ろし、
根瘤
(
ねこぶ
)
の煙草盆に一服つけて、のどかに紫煙をくゆらしながら、
徐々
(
じょじょ
)
と
訊
(
たず
)
ねだした話はこうである。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
不気味な沈黙が続く間に、岡田の全身が二度ほど、びっくりする程烈しく
痙攣
(
けいれん
)
した。が、やがて彼の笑い顔が、
徐々
(
じょじょ
)
に、みじめな
渋面
(
じゅうめん
)
に変って行った。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
すると不思議! その穴の一つ一つに、何か黒いものが見えたと思ったら、それが
徐々
(
じょじょ
)
に上に
迫
(
せ
)
り上ってきた。
流線間諜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
幸いにして健康が
徐々
(
じょじょ
)
に
恢復
(
かいふく
)
し、一冬をこして春になったころには、完全に医者の手をはなれ、執筆の自信も十分に出来、ちょいちょい雑文などを書くようになったが
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
与吉を見おろして立ちはだかった泰軒のぼろ姿に、さわやかな朝の光が
徐々
(
じょじょ
)
と這い上がっている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
並べたまぐろの上に、
徐々
(
じょじょ
)
にかたすみから熱湯を、
粉
(
こな
)
茶のざるを通して
注
(
そそ
)
ぐ。まぐろの上の方から平均してまんべんなくかけていくと、まぐろの上皮がいくらか白んでくる。
鮪の茶漬け
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
故に第一回戦においては、彼らはなるべく穏かなる語を以てヨブを責め、彼らに責めらるるヨブはかえって真理の
閃光
(
せんこう
)
を発しつつ、
徐々
(
じょじょ
)
として光明の域に向って進むのである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
彼は、人々へ、目礼を送って、
徐々
(
じょじょ
)
と、作法していた。水裃の前を外して、三方をいただくと、すぐ、小刀を執って
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それは、椅子の凭れを離れると、
徐々
(
じょじょ
)
に艶子の娘々した肩先へと
辷
(
すべ
)
って行き、遂にその上にフワリと置かれた。
五階の窓:01 合作の一(発端)
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
これがヨブ記の実験記たる証拠である。実験そのものの提示なるが故に、すなわち人生の事実そのままの記載なるが故に、それに
徐々
(
じょじょ
)
たる思想の進歩が隠れて存しているのである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
列車は
測
(
はか
)
りきれない幸福を積んで、
徐々
(
じょじょ
)
に東へ動きだした。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それまでは、あるいは義貞もまだ“
詰
(
つめ
)
の
大事
(
だいじ
)
”に迷うところもあったであろう。が、詰手は幾つもあるものではない。
徐々
(
じょじょ
)
の
緩
(
かん
)
か、電撃の急かである。
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
蘭堂の両の手が、はじめはゆるゆると、やがて、
徐々
(
じょじょ
)
に速度を増して、ついには恐ろしい早さで、その物体の上を、
這
(
は
)
いまわった。
恍惚
(
こうこつ
)
として、時のたつのも忘れて、這いまわった。
悪霊物語
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そして彼が義元の
帷幕
(
いばく
)
に参じてから、今川家の国勢は急激に
膨脹
(
ぼうちょう
)
した。覇業の
階梯
(
かいてい
)
を
徐々
(
じょじょ
)
に踏んで来たのである。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
だが、私は今その全体を
洩
(
も
)
らすことは出来ぬ。恐怖は
徐々
(
じょじょ
)
に迫って行く程効果があるからだ。併し、君がたって聞きたいと云うならば、私は私の復讐事業の一端を洩らすことを惜しむものではない。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その自給と長久策が、今や完成しかけたので、孔明もその拠地を、
徐々
(
じょじょ
)
祁山から移し始めたものに違いないのです
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
徐々
(
じょじょ
)
に徐々に、彼の震える手先は、乾いた唇へと近づいて行く。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と、嘉兵衛が
携
(
たずさ
)
えて来た一刀を受け取って、斬り人は、前のようにそれを観衆の眼からずっと直胤一門の控えている方に迄、手元を
徐々
(
じょじょ
)
にまわして見せた。
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
甍
(
いらか
)
は露に濡れていて、
徐々
(
じょじょ
)
に白む暁闇の明りが、そこを、脱兎と駆ける一人の男をあざやかに見せている。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
見ればいつのまにか、かれと日本左衛門の腕首の間には、タランと一本の
取繩
(
とりなわ
)
がつながれていて、釘勘は右の片腕を糸巻にしながら
徐々
(
じょじょ
)
とその
弛
(
たる
)
みを張りつめて行く気構え。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
本軍の時政以下の者は、山木家の山裾を流れている天満橋を押渡って、そこの中腹に見える土塀門へ近づくまでは、正面の石段道を避けて、左右の崖を、
徐々
(
じょじょ
)
と這いのぼっていた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして、朽ち木の枝を手懸りに、一方の岸へ
徐々
(
じょじょ
)
と舟脚を寄せておりましたが、
繋綱
(
もやい
)
を取りながら覆面の男が、真ッ暗な中でこう呟いたのが水の
静寂
(
しじま
)
に響いて大きく聞こえました。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一
吹
(
すい
)
の
角笛
(
つのぶえ
)
とともに、龐統は一軍をあつめて、
徐々
(
じょじょ
)
、涪水関の下へ近づいて行った。
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
卍
(
まんじ
)
丸は
徐々
(
じょじょ
)
と川口へ向って
辷
(
すべ
)
りだしてくる。そして、やや
取舵
(
とりかじ
)
に一の
洲
(
す
)
の
杭
(
くい
)
とすれすれに鏡の海へ
泛
(
う
)
かみかけた。啓之助の船は、脇備えの形をとって、その後から漕ぎ従う用意をする。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そしてほどなく、先鋒の部隊から、
徐々
(
じょじょ
)
に、東へさして進軍しはじめた。
茶漬三略
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
疑いながら、諸将は駒脚をなだめて、
徐々
(
じょじょ
)
と橋口へ近づいて行った。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして、一寸二寸ずつ静かに
徐々
(
じょじょ
)
と開けた者がある。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
徐々
(
じょじょ
)
に、義貞のあとを慕って、
退
(
さ
)
がれと申せ」
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
徐
常用漢字
中学
部首:⼻
10画
々
3画
“徐”で始まる語句
徐
徐晃
徐盛
徐州
徐庶
徐福
徐徐
徐氏
徐行
徐元直