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市女笠
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いちめがさ
ふりがな文庫
“
市女笠
(
いちめがさ
)” の例文
これは妙案であると、側近が手を借して、宮の髪は忽ち解かれて下げられ、衣を何枚も重ねて、
市女笠
(
いちめがさ
)
をかぶられ、顔をかくした。
現代語訳 平家物語:04 第四巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
頭に物を乗せた
大原女
(
おはらめ
)
が通る。河原の瀬を、
市女笠
(
いちめがさ
)
の女が、
女
(
め
)
の
使童
(
わらべ
)
に、何やら持たせて、濡れた草履で、
舎人町
(
とねりまち
)
の方へ、上がってゆく。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
女は、白地にうす紫の模様のある
衣
(
きぬ
)
を着て、
市女笠
(
いちめがさ
)
に
被衣
(
かずき
)
をかけているが、声と言い、物ごしと言い、紛れもない
沙金
(
しゃきん
)
である。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
みやこの女はまだ
市女笠
(
いちめがさ
)
を
被
(
かぶ
)
り
壺装束
(
つぼしょうぞく
)
のままだったが、突然、貝ノ馬介がそばに寄るとその
羅
(
うすもの
)
を、さすがに手荒いふうではなく物穏かに
引剥
(
ひきは
)
いだ。
舌を噛み切った女:またはすて姫
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
雲取山の右には芋ノ木トッケと白岩山とが
市女笠
(
いちめがさ
)
の形をして聳えている。これと雲取山とを結び付けた線の上で、危く綱渡りをしている山が三つある。
望岳都東京
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
▼ もっと見る
女は五十以上であるらしく、片手に小さい風呂敷包みと
梓
(
あずさ
)
の弓を持ち、片手に
市女笠
(
いちめがさ
)
を持っているのを見て、それが
市子
(
いちこ
)
であることを半七らはすぐに覚った。
半七捕物帳:58 菊人形の昔
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
大津繪
(
おほつゑ
)
の藤娘が被て居る
市女笠
(
いちめがさ
)
の樣な物でも大分に女の姿を引立たして居ると自分は思ふのである。
巴里にて
(旧字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
素足、
小袿
(
こうちぎ
)
に
褄
(
つま
)
端折りて、片手に
市女笠
(
いちめがさ
)
を携え、片手に蓮華燈籠を提ぐ。第一点の
燈
(
ともしび
)
の影はこれなり。
黒潮騎士
(
こくちょうきし
)
、美女の白竜馬をひしひしと囲んで両側二列を造る。およそ十人。皆
崑崙奴
(
くろんぼ
)
の形相。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一方、女房装束に身をやつし、
市女笠
(
いちめがさ
)
で顔をかくして三井寺へ落ち行く高倉宮は、高倉小路を北にとり、更に近衛大路を東にすすんだ。
現代語訳 平家物語:04 第四巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
これも
図星
(
ずぼし
)
に当ったのは、申し上げるまでもありますまい。女は
市女笠
(
いちめがさ
)
を脱いだまま、わたしに手をとられながら、藪の奥へはいって来ました。
藪の中
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
もう真夏に近い炎天を、
市女笠
(
いちめがさ
)
に陽を除けながら、細竹を杖に、麻の旅衣を
裾短
(
すそみじか
)
にくくりあげて——ふと、荷馬の向う側を通り抜けた女性がある。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
壺装束
(
つぼしょうぞく
)
に
市女笠
(
いちめがさ
)
をかむった彼女は、細い旅の杖も、右馬の頭が用意していた。心なしか生絹は
冴
(
さ
)
えた美しい顔にやや朝寒むの
臙膩
(
えんじ
)
をひいた頬をてらして、いきいきとして見えた。
荻吹く歌
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
雪の中から黒い頭をぽつんと
市女笠
(
いちめがさ
)
のように抜き出している稲包山から、尾根は脚の下の三国峠に連なっている。十月下旬ここから眺めた紅葉の大観は、また素晴らしいものであった。
三国山と苗場山
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
立傘
(
たてがさ
)
、
市女笠
(
いちめがさ
)
持ちの人足など、
頻
(
しき
)
りに気にしては空を
視
(
なが
)
めた。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
馬の背には、
市女笠
(
いちめがさ
)
の麗人、城太郎と
髯
(
ひげ
)
の庄田喜左衛門とが、その両側に歩み、前には日の永い顔をして馬子が行く。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、婆さんの行った後には、もう早立ちの旅人と見えて、
伴
(
とも
)
の
下人
(
げにん
)
に荷を負わせた虫の
垂衣
(
たれぎぬ
)
の女が一人、
市女笠
(
いちめがさ
)
の下から建札を読んで居るのでございます。
竜
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
生田
(
いくた
)
の馬場の
競
(
くら
)
べ
馬
(
うま
)
も終ったと見えて、群集の
藺笠
(
いがさ
)
や
市女笠
(
いちめがさ
)
などが、流れにまかす花かのように、暮れかかる
夕霞
(
ゆうがすみ
)
の道を、城下の方へなだれて帰った。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あるいはまたもの見高い
市女笠
(
いちめがさ
)
やらが、
数
(
かず
)
にしておよそ二三十人、中には竹馬に跨った
童部
(
わらべ
)
も交って、皆
一塊
(
ひとかたまり
)
になりながら、
罵
(
ののし
)
り騒いでいるのでございます。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
道ばたの
朽木
(
くちき
)
柳に腰をかけ、一行が近づいて来ると、俄に、脱いでいた
市女笠
(
いちめがさ
)
をかぶッて、その
顔容
(
かんばせ
)
を隠していた。
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
羅生門
(
らしやうもん
)
が、
朱雀大路
(
すじやくおおぢ
)
にある
以上
(
いじやう
)
は、この男の外にも、
雨
(
あめ
)
やみをする
市女笠
(
いちめがさ
)
や揉烏帽子が、もう二三
人
(
にん
)
はありさうなものである。それが、この
男
(
をとこ
)
の
外
(
ほか
)
には
誰
(
たれ
)
もゐない。
羅生門
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
何という不幸か、それはこの草刈たちに道をたずねて歩み出していたばかりのあの
市女笠
(
いちめがさ
)
の越後娘だった。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
沙金は、石段の上に腰をおろすかおろさないのに、
市女笠
(
いちめがさ
)
をぬいで、こう言った。小柄な、手足の動かし方に
猫
(
ねこ
)
のような
敏捷
(
びんしょう
)
さがある、
中肉
(
ちゅうにく
)
の、二十五六の女である。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
浅黄の
脚絆
(
きゃはん
)
に、新しいわらじを
穿
(
は
)
いて、
市女笠
(
いちめがさ
)
の紅い
緒
(
お
)
を
頤
(
あぎと
)
に結んでいる。それがお通の顔によく似あう。
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
女
(
をんな
)
は
市女笠
(
いちめがさ
)
を
脱
(
ぬ
)
いだ
儘
(
まま
)
、わたしに
手
(
て
)
をとられながら、
藪
(
やぶ
)
の
奧
(
おく
)
へはひつて
來
(
き
)
ました。
藪の中
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
烏帽子
(
えぼし
)
の老人、
市女笠
(
いちめがさ
)
の女、
侍
(
さむらい
)
、百姓、町人——
雑多
(
ざった
)
な人がたかって、なにか
評議
(
ひょうぎ
)
の
最中
(
さいちゅう
)
である。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ただ、所々
丹塗
(
にぬり
)
の
剥
(
は
)
げた、大きな
円柱
(
まるばしら
)
に、
蟋蟀
(
きりぎりす
)
が一匹とまっている。羅生門が、
朱雀大路
(
すざくおおじ
)
にある以上は、この男のほかにも、雨やみをする
市女笠
(
いちめがさ
)
や
揉烏帽子
(
もみえぼし
)
が、もう二三人はありそうなものである。
羅生門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
漆
(
うるし
)
で塗りかためた
市女笠
(
いちめがさ
)
を
被
(
かぶ
)
っている。物売りとも見えないが背に一包みの物を負い、裾は短かにくくりあげ、
草鞋
(
わらじ
)
をうがち杖を持ちなど、なかなか
凜々
(
りり
)
しい
恰好
(
かっこう
)
である。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
女も
老人
(
としより
)
も、子供も、
青年
(
わかもの
)
も通る。その階級の多くは元より中流以下の庶民たちであるが、まれには、
被衣
(
かずき
)
をした麗人もあり、
市女笠
(
いちめがさ
)
の娘を連れた武人らしい人もあった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鍛冶
(
かじ
)
、
塗師
(
ぬりし
)
、
鎧師
(
よろいし
)
などの
工匠
(
たくみ
)
たち、僧侶から雑多な町人や百姓までが——その中には
被衣
(
かずき
)
だの
市女笠
(
いちめがさ
)
だのの女のにおいをも
蒸
(
む
)
れ立てて——おなじ方角へ、流れて行くのだった。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
薄暮
(
はくぼ
)
の並木の陰に、
市女笠
(
いちめがさ
)
をかぶった妻の白い顔が見えたからである。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
城太郎は、
額
(
ひたい
)
ごしに、ちらと
市女笠
(
いちめがさ
)
のうちの女の顔を見たが
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
手に
市女笠
(
いちめがさ
)
を持って。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
市
常用漢字
小2
部首:⼱
5画
女
常用漢字
小1
部首:⼥
3画
笠
漢検準1級
部首:⽵
11画
“市女”で始まる語句
市女